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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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「死体漁りも程ほどにしろよ」

「貰える物は貰っとかなきゃ♪」

「キュル(吸血鬼の気配)」

「そうだな。進もう」


館の正面入り口へ向かう。

ドアは破壊され、まだ乾いていない黒い血が付着し垂れていた。

真新しいな。それほど戦いから時間は経っていないようだ。

気配を感じ振り返る。

「ウォォォ……」

「はっ!?」

マーラの足元から起き上がる下半身のない者にイエナが自然の報復を放つ。

蔓が巻き付くよりも前にマーラが死体の脳天に短剣を突き刺し消滅させる。

「ウォォォ……」

同時にイエナの足元にいた下半身のない者も起き上がる。イエナはすぐさま腐敗の凝視を放ち、起き上がろうとした死体を消滅させた。

急いでこちらの側に来るマーラとイエナ。

「まさか生きてたなんて」

「生きてはいない。シャドウウォーカーが乗り移っただけだ。お前はここでは人気者なんだ。気を付けろと言っただろ」

周囲を警戒するマーラ。

「ねえ、目を光らせて兵隊を増やしてくんない?」

「闇の干渉が強すぎて、こいつらはもう役に立たん。塵になるのがオチだ。行くぞ」

ボーンゴーレム一体を先導させ、中へ入る。

薄暗く広いホール。死体、様々な武器、盾が多く散乱していた。

「2人とも足元に気を付けろ」

カラン、カラン、カラン。コツン!

「いたっ。イエナ(小声)」

「ご、ごめん(小声)」


ホール正面、両サイドの柱には大きな篝火台が備え付けられていた。

篝火台へ其々小型の死の火球を放ち灯す。

篝火の緑の炎でホール全体が明るくなる。


続けて、散乱している死体にヴォイドの呼び声を放つ。殆どの死体は少し動きを見せた後、すぐに塵となった。起き上がった死体も塵に変わっていく。

やはりダメか。


ホールの奥へ進む。

黒い大理石で造られ、黄金で彩られた室内が所々黒い血で染まり、激しい戦いの影響で床や壁が損傷している。

「無駄に広い。なんでどこもこんなに広くするわけ」

「ヒューバートにあったばかりだから、大凡わかるだろう?」

「あ~あ、なるほどね」


通路の両サイドに3つずつ設けられている両開きの縦長の扉が見えてくる。

右側中央の扉から強い気配を感じる。ボーンゴーレム2体に通路前後を見張らせ、念動でドアを開ける。アンデッドメイジを先行させる。

部屋の中から通路へ濁流のように流れ出る死霊魔力。

「凄いですね」

部屋からは濃度の高い死霊魔力が絶え間なく溢れ出てきていた。


「キュルル!(パワー!)」

「落ち着けメトゥス!」

死霊魔力を吸い興奮止まぬ様子のメトゥス。

メトゥスの全身の瞳孔が開いている。

「ギュルルルル!」

メトゥスを見つめ、そっと距離を取るマーラ。

「「グアァァァァ!!」」

ボーンゴーレム達が雄叫びを上げ、足を踏み鳴らし始めた。

「みんなイエナ病なんだけど……イエナ??」

「ハァ、ハァ」

「イエナ……もしかして。ねえ、貴方は大丈夫よね? こんな所で1人にしないでよ」

「ああ、俺はまだ大丈夫だ。イエナ、気を保て」

「はい……だ、大丈夫です」

「大丈夫みたいだ」

「…………」

「お前達はここで待っていろ」

「セバスティアンは平気なのね」

「うぅぅぅ……」

部屋の中へ入る。

ドアを念動で閉めるが、手に毛玉が触れる感触が。

「マーラ、なぜ来た?」

「今にも理性をしないそうな連中と仲良く外で待ってろっていうの?」

「外より危険だ」

「かもね」マーラの指輪が震えている「もつかな?」

「分からん」

部屋に充満する死霊魔力を吸収していく。吸収し続ける「ああ!」薄くならないな。周囲を見回す。マーラの呼吸の泡にヒビが入ってきていた。

閉めたドアをボーンゴーレムが叩き始めた。

「木偶の坊が(怒)」

「目が…ヤバイいよ。私を殺さないでよね」

「ゲホッ、さっさと、呼吸の泡を重唱しろ(威圧)」

「分かったから、そんなに睨まないで」

俺に呼吸の泡を放つマーラ。

「この馬鹿が。俺にやってどうする!(殺意)」

「ミスミス」

マーラが自身に放つ。

視界が濃い緑に包まれる中、周辺を注意深く見回す。

「ああ、あれだ!」

「はいはいはいはい」

サイドテーブルに置かれていた四角い物体を持ってくるマーラ。

「持って来るな! 早く閉じろ!(威圧)」

「オーケー」

閉じると同時に、部屋に充満していた死霊魔力が全て物体に吸い込まれ部屋の濃度が一気に下がる。

部屋の外にいるボーンゴーレムがドアを叩くのをやめ静かになった。

「ハァ〜」全身の力が抜け、あぐらをかき座る。心底疲労感を感じる。久しい感覚だ。

「寝袋でも持ってこようか?」

マーラも側にあぐらをかいて座り込む。

「ちゃんとベッドで寝るさ」

「ンフフ。はぁ~、無事で良かった」

「互いにな」

「う~ん♪ これだから冒険ってやめられない」

「まったくだな。このスリルは癖になる」

「堪らないわよね」


ドアが勢い良く開く。

「大丈夫ですか!?」

杖を地面に突き立て立ち上がる。

「ああ」

マーラも立ち上がる。

「それはこっちのセリフ」

「…………」

「まあ、全員無事で良かった。イエナ、来い」

「は、はい」

イエナの頭に片手をかざし、手に力を集中させ昇格の儀式を放つ。

イエナの体が緑の光りに包まれ、光が収まるとイエナは生前に近い姿まで戻った。

「わお。イエナって、髪長かったのね。でも緑の肌って、ゴブリンみたい」

イエナが緑色となった自らの手や腕を眺める。

「私の体……」

「イエナ、そんな落ち込まなくてもまだ…」

「ここまで戻った♪」

嬉しそうに手を動かし眺め続けるイエナ。

「イエナ。残念だが、これ以上は大きな変化は望めないだろう」

杖の鏡面部分を利用し、自身の姿を見つめるイエナ。

「十分です。ありがとうございます」

軽く頷く。


「で、これはどうすればいいの?」

マーラが地面を指差す。

自らの姿に見とれているイエナを横に、緑に輝くラインが複数刻まれた四角い物体を念動で拾い上げる。

「俺が持っておく」

「それ一体何なの?」

「恐らく死霊魔力を閉じ込めておく物だろう」

「使い用あるの?」

「まあまあだな。それよりもなぜこんな所にあるのか、気になるところだ」

部屋の隅にある四角い格子戸が音を立てて外れ、一匹の小さい灰色ネズミが鼻を頻繁に動かしながら出てくる。少し前へ出ると二足で立ち、こちらを見上げてくる。

「いや~、良かった。助かった! それのせいで出られなくなってしまっていたんだ。感謝するよ」

鼠の声は甲高く少し聞き取り辛い。

「お前は?」

「あ〜…マーティン。踏み潰すだなんて言い出さないでくれよ」

「気を付けろよ。じゃあな」

勢いよく側まで掛けてくるマーティン「待ってくれ! 実は助けて欲しいんだ!」二足で立ち、小さい体ながら目一杯に背伸びしてくる。

「いま助けたばかりだろう」

マーラが前屈みなり両手を膝に置く「チーズでも持ってきて欲しいの?」

「面白くないぞ。こう見えても権威ある立派な魔術師だったんだ」

「そっ」

立ち上がるマーラ。

「おい、信じてくれ!」

「だから俺達にどうして欲しいって言うんだ? 先に言っておくが、俺達では元に戻せんぞ」

「ああ、でも戻し方なら知ってる。イカれた魔術師にこんな姿にされたんだ。そいつを殺してくれれさえすれば、術は解けるはずだ」

「本当に?」

「多分……」

「ンフフ、私達もその魔術師に鼠に変えられそう♪」

「笑いごとじゃない!こっちは真剣なんだ!」

アンデッドメイジを部屋に呼ぶ。

「こいつか?」

「いや違う……そ、そいつだー!!」

セバスティアンを指差し、何度も跳ねるマーティン「あ~! 嘘だろ~……」体を一度くねらせ、両手で両目の下の皮を引っ張るマーティン「だったらなぜ俺はまだネズミのままなんだ」嘆きながら地面に伏せ、ケツを振るマーティン「う~~! あんまりな結末だ。うぅ~……」嘆き続けるマーティン。

「ここから出たいのならついて来い」

「……そりゃ助かる。肩に乗せてくれ」

「断る。行くぞ」

部屋を出る。

背後から聞こえてくる会話。

「頼む!」

「悪いけど鼠は苦手なの」

「うぅ~、酷い。中身は鼠じゃないのに」

「いいよマーティン」

「んん? あ、ありがと」

「私はイエナ」

「ありがとう、イエナ。私はこう見えて偉大な魔術師だったんだ。君のサポートは任せてくれ」

「やれやれ。変なペットができたわねイエナ」


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