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メトゥスをジャスミンの捜索に向かわせる。
マーラの側に行く。
「心配してくれるの? あーうれしー」
「緩和剤程度なら作れる」
「じゃあお願い♪」
部屋の隅にある錬金台へ向かう。イエナも追従してくる。
「大丈夫なんですか? マーラは一度拠点に戻った方が」
「様子を見るにそれほど深刻そうでもない。ただ戦いが待っている以上、万全にしておかなければな」
「見ていてもいいですか?」
「ああ。まずこの石鍋に半分ほど蜂蜜を入れる」小さな死の火球で薪に火を付ける「次に火をつけ、すり鉢とすりこぎを取ってくれ」
「はい」
「そしてすり鉢に小麦を」小瓶を取り蓋を開け褐色の粉を嗅ぐ「ふむ(懐古)」
「どうぞ」
金の乳鉢スプーンをイエナから受け取る。
「三杯程度入れる。イエナ。石鍋に水を少し加え、混ぜてくれ」
「分かりました」
「んー」アザミはどれだ。小瓶の蓋を開けにおいを嗅ぐ。違う。こっちは……においは近いが。寸断された根を触り確かめる「ふむ(回想)」硬い。根を半分に裂く。筋が特徴的だな「アザミの根を石鍋に加える」
イエナがゆっくりと円を描きながら混ぜ、こちらを見る「もっとですか?」
「ああ。アザミの根を加えたらすぐに火を止め余熱に」小型の黒い灰取りで灰を薪にかけ火を消す。酒に浸していた短剣を取り、タンポポの花弁と根を切り刻む「細かく切ったタンポポの花弁と根をすり鉢に加え、細かく潰す。潰した小麦とタンポポを石鍋に加える。次はこの棚だが…どれか分からんな」
「これは何ですか?」
中型の瓶を手に取り蓋を開ける「樹液だ。嗅いでみるか?」
イエナの顔の側に瓶を近付ける。
イエナが瓶に顔を近づけにおいを嗅ぐ。
「甘い匂いがしますね」
「いい匂いだろ?」笑顔で頷くイエナ。においを嗅ぐ「ふむ(回想)」オークの樹液に間違いないとは思う「オークの樹液と、レッドワインを加える」
「どれくらいですか?」
「適量だ。一周半だな。最後にルビーソルトを一掴みで完成だ」
「凄い量ですね。錬金術で生活するのは結構楽そうですね」
「甘いな」
「どうしてです?」
「蒸留器で溶液を濃縮させるんだ」蒸留器と石鍋を繋ぎ、溶液が流れ込んでいく。
「凄い器具ですね」
「ああ、少し特殊だな。フェイの技術が使われているようだ」小瓶を取り、イエナに見せる「完成だ」
「これだけですか?」
「ああ」
「随分と少ないんですね」
「だから言っただろ」
軽くショックを受けている様子のイエナ。
「イエナ。早く肉体を取り戻したいか?」
「それは…そうですね。できるならそうしたいです」
「さあ、これをマーラに飲ませてこい」
小瓶を受け取り、マーラの元へ向かうイエナ。
「マーラ。ほら、これ飲んで」
メトゥスが帰ってくる。
「ジャスミンはいたか?」
「キュル(否定)」
「それはまずいな」
「キュル(吸血鬼の痕跡)」
「ふむ」
「キュル(別の入口から領域へのアクセス)」
入口を触手で指すメトゥス。
ニオスが送ってきたであろうボーンゴーレム2体が部屋へ入ってくる。
「まず!! イエナ! なんて物飲ますのよ! うっ、気持ち悪……」
「効いたみたいね♪」
「ん~〜」
俯き、うなだれるマーラ。
「マーラ、大丈夫なの!?」
「大丈夫だから。揺さぶらないで。出ちゃうじゃない。それよりジャスミンを探しに行かないと」
「さっきメトゥスに見に行かせた。ジャスミンはいなかったが、どうやら別に道があったらしい」
「じゃあ、早く行きましょう。ジャスミンを1人にしておけない」
「こっちだ」
用品棚へ向かう。
「凄いですね。名前の分からない器具ばかり」
「私にはガラクタにしか見えないけど」
「この辺に道があるはずだ」
「…………さっぱり。イエナはどう?」
首を横に振るイエナ。
マーラが静かに見てくる。
「そこに白い石があるだろう?」
「……何も見えないけど。イエナ見える?」
静かに首を横に振るイエナ。
「こいつが領域へのゲートを開くはずだ」
イエナから受け取った新しい杖の力を放ち、魔力吸収を石へ放つ。
フェイの石が闇魔法に共鳴し、岩の砕ける音と共に、目の前に黒く光り渦巻く靄が現れた。
「わお」マーラが道を開ける「レディーファースト」
「今度は横着せず付いて来いよ」
領域ゲートに入る。
すぐさま視界が闇に覆われていく。
周囲が一瞬にして無音となり、視界が暗転した後、すぐさまフルート、太鼓、リュートなどを用いた演奏が聞こえてくる。
目の前に金の葉が落ちてくる。辺りは深くも、穏やかな森に変化していた。
前方の先に、黄金の動物達が金の長テーブルを囲い、食事をしながら談笑していた。
テーブルの側に伸びる枝には梟、鴉、鳩などが止まっている。
視界の外から黄金の雌鹿がこちらを覗き込むように目の前に現れる見てくる。
「遅かったじゃない。随分と待ったわ」
「誰だ?」
「さあ、もうみんな集まっているわ。貴方の席はあそこよ。さあこっちよ、こっち」
「……ああ(困惑)」
「早く、早く!」
雌鹿と共にテーブルへ向かう。
周囲を見渡すが、いつもより視線が低い。それになんだこの感触は…。
自身の足を見ると、状況は明らかだった。
羊になっていた。
見上げ、空に昇る太陽と月。遥か先の前方には、雪が降っていた。決して積もる事のない雪が降っている。雪の行方など気にしても仕方がないが、なぜか気になってしまっていた。
目を逸らし右側を見る。
視界の先には火山が見え、ふつふつと煮えたぎる赤い溶岩を垂れ流していた。
左側は日が照らす金の砂で覆われた砂漠。見ているだけで何故か暑さが魂に刻まれるかのように暑い。だが砂漠には黄金の雨が降っていた。しかし地面の砂が濡れている様子はない。
後方は沼地。
水面に浮かぶ大きな葉や奇妙に伸びる白い花。青い霧が覆っている。しかし妙に視界が利く。
テーブルの側で演奏する黄金のスプリガン達の曲調が軽快になり、動物達が2人一組で楽しそうに踊り始めた。
「さあさあ、皆で楽しく踊ろうじゃないか!」
2足型種族の姿をした全身が黄金の老人の男が黄金の盃を片手に立ち叫んでいる。
黄金の老人は盃を飲み干すと黄金の椅子に座る。
同じ見た目をした黄金の羊が目の前に来る。
「ねえ、良かったら一緒に踊りましょ♪」
「ああ。いや、遠慮しておく」
「残念〜。後で踊りましょ♪」
別の動物の方へ向かっていく羊。
両脇で踊る動物達。動物達の間を抜け老人の元へ向かう。
近付くと椅子に座っている老人がこちらを笑顔で見てくる。
「お~う〜♪。お前さんも酒が欲しいのか~?」
「いいや。それよりあんたに聞きたい事があってな」
「我々は時の過ちなのだぁ(深く落ち着いた声) 間違いなーい!(陽気な声)」
「酔って、いるのか?」
「ああ〜♪……ああ!! 酔っている。酔っでい゙る゙ども゙!!俺とお前さんは似ている(落ち着いた声) 似ている! 似ていーーるrrrrrrr!(陽気な声) はぁ~…………マンゴスチンが食べたい(落ち着いた声) 無性に……なっ(囁き声) ここにいると酩酊した気分になっていく。悪くないな。悪くない(囁き声)」
「お前は誰だ?」
「お前がお前であるように。我は我であるのだ。だが知りたいというのであれば教えてやろう(落ち着いた声) お耳の恋人!(陽気な声)」
「…………ここはどこだなんだ?(空虚)」
「ここはセバスティアン・ドーマの心の狭間。奴は己の魂と引き換えに、この領域を〜〜♪ 得〜たぁ~ (響く歌声) ハッ!た・ぶ・ん・な!(陽気な声) なんだか歌いたくなってきたな(囁き声) ハッ! もう歌ってるか! アッハッハッハッハッー! あぁ~あっ!ふぅ〜(溜め息) こりゃまいった」
「ここから出たいだ」
「お餅!! あ〜、皆そう言う。そう言うんだ。あ〜あ〜。だが次第に忘れていく。お前さんはちと違うがな。異・質・だ。ノスタルディー。DAGA☆友よ。話し合う前に、先ずは酒を飲み交わそうじゃないか〜」
目の前に金の盃が浮遊してくる。
黄金の酒、そしてこの匂い、ネクタルか。
「折角だが、遠慮しておく」
「そう言うな」
「…………」
一口啜る。
「どうだ?」
「旨いさ」
「んんっ、ああ、私はこう見えても忙しいのだ。時計の針が1つ進むごとに65535の者と新たに別の次元でも対話をせねばならん。だから長居はよしくれ(早口) DAGA☆〜 いたいと言うのなら別に構わんぞ。本当だ!嘘じゃないぞ(囁き声)」
「俺は出ていきたいだけだ」
「お前さんは、何かこう…異質だな」
「さっき聞いたぞ。いい加減にしろ(威圧)」
「多くの者は懇願し、困惑し、泣き叫び、我を失う。だがお前さんは多い…多い! ん〜〜〜〜、正気を保ち、冷静に話をしてくれる。はぁ〜、なんと久しー。あーんっ♡ 久し〜! 実に久しいぞよ。爽快だな☆ おっと、楽しませてくれた礼にこれをやろうじゃないか~」
「はぁ〜」
頭痛がしてきた……。




