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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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「全然分かんない!」

マーラが嘆く。

「自体は複雑だという事だ」

「あっ、濁したわね。ただでさえ自分の事だけで頭が混乱してるっていうのに」

「悩むのは俺に任せろ」

皮肉めいた表情を浮かべ小さく頷くマーラ。

「行くぞ」

地下へ向かう。

「今の悪魔は味方なんですか?」

「敵でも味方でもない」

「悪魔は信用できない。単純よ。イエナ」

口を挟み、イエナに話すジャスミン

「そう…だよね」

階段を降りると物陰からロレンツォが姿を見せた。

「あぁ〜、ヴォイドに感謝だ。助けに来てくれたのか?」

「まあ、そんなところだ」

「まさかこんなに早く恨みを買うとは…予想していなかった」

両手を腰に当て、俯むき首を左右に振るロレンツォ。

「事態はそう単純じゃない」

顔を上げ、困惑した表情でこちらを見つめるロレンツォ。

「あ〜…そうなのか。それは最低だな。まるで悪夢だ」

「街の外に拠点を設けてた。そこならここよりは安全だろう」

「実はもうエスティナに言われたんだ。ここに長居すると危険だから一緒に来ないかって」

「ならなぜまだここにいる」

「荷物が多くてな。あんたにはガラクタに見えるかもしれないが、私にとっては宝物なんだ」

「アンナはどこだ?」

「奥の部屋だ」

「運ぶのに丁度良いものがある。必要な荷物は全て拠点に持っていくといい。アンナと共に来い」

「これだけの荷物をどうやって?」

「マーラ」

「ふん、はい」

マーラがデーモンから手に入れた物を取り出し、ロレンツォに投げ渡す。

「早速取り掛かるよ」

「干渉しない物だけだ。間違っても他の物は入れるなよ」

「分かった」

「イエナ。詰めるのを手伝え」

「はい」

「私も手伝うわ」

イエナとジャスミンがロレンツォの後に続く。


「私も手伝った方が良い?」

「いや、お前は俺と来い」

「ok」

奥の部屋へ向かう。

「さっきイエナがジャスミンと話していたのに気が付いたか?」

「あぁん……そういえばそうね。ん? ああ、ホントね! 全然気が付かなかった」

「知らなかったのか」

「自然過ぎて分かんなかった。私ってやっぱダメね。もう少し貴方みたいに注意を払わないといけない」

「そうだな」

念動でドアを開く。

テーブルに積まれた羊皮紙の山の中で、羽ペンで字を書き留めているアンナ。

「小さいスケルトン?」

「彼女はロレンツォの娘だ。調子はどうだアンナ」

「良いわ♪ パパを助けてくれてありがとう。リーケンさん。また借りができちゃった」

「気にするな。アンナ、その名はエスティナから聞いたのか?」

「その……今のは聞かなかった事に」

「父の手伝いか?」

「そうです」


「あの子、リッヂなのね。まさかあなたが?」

「そうだ」

「………」

「冗談だ。真に受けるな」

「はあん。まだ子供よね?」

「ああ。だが死霊術に関しては、お前より詳しいかもな」

「マジ? 見かけによらないのね」

「お前が言うか」

「私は別に、見かけ通りだけど」

「ふむ」

「何か気になる事でも?」

「いいや、ただの言葉の綾だ。深い意味はない」

「ふ〜ん」

「アンナ」

「何でしょう?」

「ここの物を運び出す。準備しろ」

「分かりました」

マーラを見る。

「見かけ通り、平凡な獣人の私が手伝うのよね?」

「頼んだぞ」

マーラが羊皮紙の山へ向かう。


部屋を出ると、既に大方の物を片付け終えていた。

「メトゥス、二階の本を」

「キュル」

「ああ、二階の本は全部エスティナが運んでくれた。それにしてもこれは便利だな。数が欲しいところだ」

「これほど精巧な物は珍しいんだ」

「そうか…それは残念だな」


「あ~♪ アンナが入れてくれた紅茶美いしっ!」椅子に座り紅茶を嗜むマーラ「これを味わえないなんてね~。飲んだら溢れちゃうもんね。1つ聞きたかったの。どうしたらさっきみたく、相手の正体を見抜けるの?」

「基本的な事は、然程難しくない。普段、相手の挙動や話し方を注視するのと同じだ」

「う~ん。期待した答えではなかった」

「具体的には、魔法の痕跡や魂を見るんだ」

「それそれ、それを聞きたかったの。是非教えて」

「教えられるのはコツだけだ。俺の手を見ろ」マーラがじっと手を凝視する。座っているイエナも真似ている「魔法を放つ感覚同様、力を目に集中させ、そのまま感覚を研ぎ澄ますんだ」マーラとイエナの手が光り始め、各々アイスシャードと腐敗の凝視を床に放つ。

「イエナ危ない!」

「ごめん! 勝手に出ちゃって」

「お前もな」

「まあまあ。もう一度いっ?」

「ああ」

イエナの方を向くマーラ。

「今度は離れて、ね〜」

互いに距離を取るマーラとイエナ。


再び手を凝視してくる2人。

「み、見えました!」

「私も! わお」

ハイタッチする2人。

「やったね!」

「うん!」

「な〜んだ。簡単じゃない!」

「2人とも流石だな。才能がある」

「ありがとうございます!」

「イエナ」興奮するイエナを宥めこちらを向くマーラ「誰にでもできるんでしょ?」

「手を抜いたからな。他はそうはいかんぞ。それを忘れるなよ」

「はい」

「感覚としてはバッチリね」


出口のドアへ向かう。

念動で荷物を浮かせたジャスミンとメトゥスが戻ってくる。

皆と共に外へ出る。


目的地へ向かう傍ら、食べかけのパネットーネを齧るマーラが隣に来る。

「ねえ、詳しくは分からないけど、2体のデーモンから狙われているんでしょ? 一度拠点に戻って備えた方がいいんじゃない?」

「幸い、厄介な方のデーモンは大丈夫そうだ。もう1体の方も今から行く場所までは現れないだろう」

「ホントに?」

「ディスコルディアは事前に警告などする性分じゃないからな。もし何らかの行動に出たとしても、そいつの独断なら然程心配はいらないだろう」

「貴方がそう言うなら。信じる」

「絶対はないがな。さあ急ごう。日が暮れてしまう」

日が沈み始め、遮断されていた魔法がバルブの作動で通過し、フェイの魔法が街に光を灯し始めた。

「私とジャスミンには死活問題だもんね」

「あんた寝てたんでしょ」

「バレちゃった。でも仮眠程度」


目的地へ向かう傍ら、住民が立ち止まりこちらを見てくる。好意的な者や時折、敵対的な者なども目に入る。

「ねえ、みんなこっち見てる」

「そうか?」

「どう見てもそうでしょ。敢えて顔には触れなかったけど、一体どうして? 私がいない間にまた何かしたの?」

「多少な」

「ふ〜ん。この歓迎ぶりは異常よね」

「希望の兆しを示した。その影響だろう」

「まあ、デーモンよりはマシよね。皆の希望になった気分は?」

「悪くない」


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