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「マーラ。そっち側を数えてくれ。バジリスクから」
「オッケー。え~と……2、4、6、10ね」
「こっちも10だ」数え終わった個体に指示を出し、種類別にグループ分けしていく「次はスケルトンだ。やけに多いな」
「森に蜘蛛が沢山いたのよ。まあ蜘蛛自体はそれ程大きくなくて、種族ぐらいの大きさだったんだけど。その蜘蛛達の繭にね沢山。ゴブリンが多かったんだけど」
スケルトンを数える。
「25だな」
「こっちは16」
未開の地とは運が良かった。
「ああ、ヒポグリフか。これこそ現状欲っしていたものだ」
「そうなの? 乗り心地は…何ていうか悪そうだけど。翼は腐ってるし、目玉も飛び出てる。これって生前みたいに飛べるわけ?」
「飛べないだろう。アンデッドでなくとも、グリフィンと違い、飛行能力は低い。だが馬よりは巨体だろ」
一体のアンデッド化したヒポグリフの顎を撫でる。
「こっちは9」
「11。騎馬として使える。次は狼だ」
犬も混じっているようだな。
「分けるの?」
「いいや。22」
「19」
「混同で良い。猟犬部隊として使おう」
「これって嗅覚あるの? 自分の腐った肉のにおいしか嗅げないわよね」
半笑いのマーラ。
「この狼は普通の狼じゃないな。それより心配なのは、お前に襲い掛かるもしれないということだな」
「ガル゙ゥ゙ゥゥ゙ゥ゙゙」
マーラに牙を剥き、低い唸り声を上げるアンデッドウルフ&アンデッドドッグ。
「生者が見えるってこと?」
「ああ。それにお前は獣人だしな」アンデッドダイアウルフの背を撫で落ち着かせる。ダイアウルフが唸り声を止めると、他のアンデッドウルフ達もマーラに唸るのをやめた。
指示を出し、他の個体と同じように一ヶ所に纏める。
「最後はこれだけど。ちょっとヤバいわよね♪」
「どの魔物も巨体だな。どうやってこんな巨体な牛を始末したんだ?」
「簡単よ。安全な場所から蜘蛛の糸で身動きを塞いで、最後は窒息させたの。どれだけ巨体でも、樹齢うん千年の太い巨木は折れないでしょ?」
「やるな」
「凄い足音だった。まるで巨人。あの突進をまともに食らってたら一溜りもなかった」
「4だ」
「こっちは5。もちろん貴方が指揮するのよね?」
「ああ」中隊規模だが未熟で実績のない活力だけの部隊。今のところ戦力としてはゼロだな。だが現状無駄にはできん。一先ずは、予備兵力として時が来るまで待機させておこう「マーラ。こいつらの管理を頼むぞ」
「えっ、あ〜ん…餌をあげるとか?」
「いいや、雑務で活用し、できれば減らさず増やせ」
「そっ、簡単そうね」
マーラを見る。
「ンフフ、どうしたの?」
「いいや……」
「なにっ? まだ寝癖残ってた?」
「大丈夫だ」
「じゃあ何なの?」
「何でもない」
マーラが目の前に立ち塞がる。
「気になるじゃん。教えてよ」
「……お前を見ていると……時より不思議な感情に囚われるんだ」
「へえ〜、具体的には?」
「俺は見ての通りアンデッドだ。だが当然、生身の時代もあったわけだ。だから未だに生者としての感覚も残っている。だから時よりお前に共感してしまうのかもしれない」
「生者だった頃の自分と?」
「ああ。まったく同じとは言わんが、お前からは大きな活力を感じる。俺も以前はお前と似たような立場だったのかもしれない」
「つまり私が羨ましいって事」
「ンフフ、ある意味そうかもな。その向上心と目の前の問題に全力で取り組む様は見ていて心地がいいものがある。まるで自分の事のようにな」
「う~ん! 言われる私も心地よい」
「ンフフ」
マーラの横を通り過ぎようとするが、マーラが腕を掴んでくる。
「ン〜!待って」
「指輪を無駄に試すな」
「本当は何なの?」
「何の話だ」
「何か、引っかかる言い方だったから」
「気のせいだろう。用は済んだ。もう行こう」
「これから付き合いが長い。ずっと聞くからね。本当は何なの? 本当は何なの?」
「はぁ〜、一度言ったが、お前と初めて会った気がしなくてな。力を取り戻して改めてそう感じる。それに…お前に、何か感情を揺さぶられ続けている気がするんだ。どうも気のせいとは思えん」
「ワオ、2つ目は多分当たり。昔からよく言われてきたの」
「自覚があったのか?」
「大勢から何年も言われ続ければ、嫌でも自覚するわよ。でも自分から自覚したことはない。逆に何なのか聞きたいぐらい」
「まあ、分かったら一番に教えよう」
「スッキリした?」
「少しな」
マーラと共にフロアを後にし、エスティナの側にいた霊魂の元へ向かう。
「お前は確かルビーだろ?」
霊魂がすぐさまこちらに振り向く。
「ど、どうして私を知ってるの? まさか…」
霊魂特有の木霊する声が小さく響く。
「この奥でデーモンに殺されていただろう。お前の遺体を見た」
「し、知らないかな…さっきはルミーと聞き間違えたの」
「安心しろ。デーモンに魂を売り渡しはしない。お前を殺したデーモンはこのマーラが始末したからな」
「イエイ。デーモンスレイヤーと呼んで♡」
「それは……ありがとう。正直、いつ見つかるかと恐れていたの」
「お前は吸血鬼ハンターだったんだろ? 吸血鬼がこの街のどこに潜伏しているか知っているか?」
「ええ、まあ…。でも、おすすめはしないかな…」
「どこだ?」
「えっと……命令書があったの。それに詳しい情報が載っていたわ」
ルビーが側のテーブルに置かれたバッグを指差す。
念動でバッグを引き寄せ、探る。
「ルビー、あっちを手伝ってあげて」
「はい。それじゃあ、気をつけて」
「あなたもね」
ルビーがエスティナの元を離れ、別の霊魂の元へ向かう。
──魔法の羊皮紙。
ニザーム帝国、ロクスソルスに潜伏している吸血鬼について。
調査部隊により、吸血鬼がロクスソルスに潜伏している事が判明した。
これは2ヵ月前の情報となる。
しかし当該戦争による影響が大きく、現段階でも規模の大きな討伐部隊の編制及び派遣は認められなかった。
よって君には偵察部隊としてロクスソルスに単独で行ってもらう。
以下はロクスソルスにおける有力な吸血鬼の情報となる。
手がかりになりそうな物が多く記載されていた。
──
「次は吸血鬼狩りとはね~」
魔道具を巧みに修復していくエスティナ。
「キリがなくてな」
「私はこの先がもっと心配なだけ」
「ふむ」
「争いが無事に終わる事なんてない。昔と同じよね。血は流れ続ける。貴方が手に入れたとしても、果たしてどうなるか。貴方自身も」
「こう見えて、無駄な血は好まん性分だ」
「それは逆に恐いわね」
「別に理想主義という訳じゃない。向かってくる者には容赦はしないさ」
「ふ~ん。矛盾していると自問した事は?」
「ないと言えば嘘になるな。結論は既に出した。迷わないとな。己の信じる道をひたすら進むだけだ」
「信念と決断。そして慈悲のある指導者は好きよ。でもそういう志って皆長続きしない。どんなに優秀な指導者でも、最後は必ず欲に溺れた」
「否定はできんな。生前は俺も、恐らく魔術師の類いだ。好奇心と欲だけの塊。だが分別だけはまだ忘れていないつもりだ」
「んふ」
「エスティナ。今の俺には、お前の力と知識が必要だ。他の者では補えん」
「今のところは、でしょ?」
「それは…NOか?」
「冗談よ。貴方が私に誓約を強要していないから信用してる。リッヂと会ったのは初めてじゃないの。洞窟に向かってきている者とは、仲良くできそうにないけど。それを胸の内に置いておいてくれるのなら、今のところ他に不満はないわ」
「ニオスの事か?」
「不思議よね。どうしてか彼の事は知っている。知っている筈なのに、鮮明には思い出せない」
「似たような状況だな」
「貴方の方が親しいんでしょ? 目的の為なら手段を選ばない男って事は分かる」
「ハグできないのは分かった。しかし奴は信念には忠実だ」
「ええ確かに。それも恐ろしい程に。感じる?」
「ああ」
「本当、抜け目のない男」




