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「うーん。なんだか無性にサムに会いたいくなってきた」
「ふむ。先に戻ってもいいぞ」
「貴方はどうするの?」
「少ししたら、拠点に戻る」
「だったら一緒に行くわ」
砕けた口調で笑みを溢すジャスミン。
ニオスの元へ向かう。
「ニオス。お前はどうする?」
「師の代役として、少しばかり、ここで雑務をこなそうかと。終わり次第向かいます」
「分かった。合流地点は近い。恐らく、昔のお前に馴染みの深い場所だ。覚えているか? それとも向こうに着いたら、メトゥスを案内役として送ろうか? いずれにしろ従属はここに残してはおけないんだ」
「感謝致します」胸に片手を当て、軽く頭を下げるニオス「心配為さらずともこのニオス。師の手を決して煩わせは致しません。ここが片付き次第、早急に従属と共に向かいます」
ニオスに相槌を打ち、有翼を放ち空へ飛び立つ。
ジャスミンも共に羽ばたき隣へ来る。
「サプライズが待ってるわよ」
「そういえば、そんな話もあったな。驚かされるのは嫌いじゃない」
ジャスミンが軽く笑みを浮かべる。
共に飛行し目的地へ向かう。
「こっちだっけ?」
「分散している兵を、一度拠点に集めるんだ」
「ワオ。あちこちにアンデッドがいるのね」
「もう気付いていると思うが、俺はこの街を統治するつもりだ」
「ふ~ん♪」
静かに何度か頷くジャスミン。
「いずれ街はアンデッドで溢れるだろう。生者は可能な限り説き伏せるつもりだが、言わずとも分かるだろう?」
「私にとってはドワーフも人間も同じに見えるもの。静かに過ごせるのなら、気にしないかな」
「まあ、平穏は約束しよう」
「貴方には希望を感じるから、不安はないわ」
「ふん、デーモンの圧政から解き放つんだ。誰がやっても印象は変わらんだろう」
「どうかな~♪」
ジャスミンはどこか嬉しそうな表情を浮かべ、気持ち良さそうに風を感じているようだった。
スラムの廃地区に降り立ち、街への侵入経路の地下へ向かう。
「拠点に行く際、射手に迎撃されなかったのか?」
「翼を生やした猫よ? 真面目に相手にした日には笑い者にされるでしょうね」
「なるほどな。デーモンへの忠誠心を思えば杞憂だったな。だが忠告しておく、俺の時はちゃんと門を通れよ」
「了解♪」
地下からアンデッドの叫び声が聞こえてくる。
地下へ行くと、デュラハンが遠くに置かれた桶の的目掛け、ナイフを投げていた。ナイフが桶の印に命中すると隣で並んで見ていたデスフラワーとモートが飛び跳ね、沸き立っていた。
飛び跳ねずに冷静に拍手を送っていたもう一体のデスフラワーがこちらに気付き、すぐさま拍手を止める。拍手を止めたデスフラワーの視線の先を見るように、モートやデュラハンがこちらを向きすぐさま騒ぐのをやめ静かになった。
もう一体のデスフラワーだけは相変わらず騒ぎ続けていた。隣のデスフラワーがこちらを真顔で見つめながら、もう一体のデスフラワーの体を短い手で叩く。騒いでいたデスフラワーがこちらに気が付くと静かになった。
「ナイフ投げか。面白そうだな」
目をキョロキョロと動かし、互いを見合うアンデッド達「デュラハン、ナイフを」
「御意」
デュラハンが丁寧にナイフを差し出す。デュラハンからナイフを受け取り、デュラハンの立っていた場所へ向かう。
的はかなり遠い。
手でナイフの刃を持ち、頭部の側面後方へ、そして桶に狙いを定め…ナイフを桶目掛け一投する。
カン、カン、カラン。
だがナイフは外れ、音を立て地面を転がっていく。
「キュッキュッキュッ」
声の方を向くと、先ほど最後まで騒いでいたデスフラワーが地面に仰向けに転がり、短い足をばたつかせながら両手で腹を押さえ笑い転げていた。
隣に立っているデスフラワーが正面を向いたまま笑い転げるデスフラワーを片手で強く叩く。
笑うのを止め、素早く立ち上がるデスフラワー。
微動だにせず、こちらの様子を伺っているアンデッド達。
「気にするな。デュラハン、手本を見せくれ」
デュラハンがテーブルに置かれたナイフを取り、先程より遠い場所から桶に狙いを定め、そして一投する。
ナイフは見事に桶に突き刺さった。
沸き立つアンデッド達。
デュラハンに拍手を送る。デュラハンがこちらを向いて軽く頭を下げる。
「すごっ」ジャスミンも二本足で立ち肉球を合わせ拍手している。
「さて、出発するぞ。準備しろ」アンデッド達が準備を始める「モート」
「ガル」
こちらへ駆け寄ってくるモート。
「ここにあった荷物はどうした?」
頭の上に両手を置き、耳のように動かすモート。
「マーラか?」
「ガル」
「不気味……」
ジャスミンが声を漏らす。
ここのまま戻っても良さそうだな。
アンデッド達と共に入ってきた道を戻り、廃地区へと出て空へ飛び立つ。メトゥスがアンデッドを各々触手で抱える。
「私も手伝うわよ」
「キュル」
「んっ」
不思議そうにこちらを向くジャスミン。
「任せろとさ」
「そ~、頼もしい」
「キュル」
不可視化を自身、ジャスミン、アンデッド達に付与し拠点へ向かう。
「サムは大丈夫かな?」
「心配なのは分かる。だが治癒できる。そう気に病むことはないさ」
「それもそうね。吸血鬼の居場所には心当たりあるの?」
「少しな。この街に潜伏している可能性が高い。当然、探し出すのは容易じゃないがな」
拠点へ着く。
だが入り口は幻惑で覆い隠されていた。
「あら? ここじゃなかったかしら…」
「間違っていない。ここだ。円陣防御」
アンデッド達に側面と後方を中心に警戒体制を敷く。
「よっ!」
マーラが幻惑の霧から姿を現す。
「マーラ」
「ジャスミン、待ってたんだよ。ほらみんなも早く」
マーラが手招きし、霧の中へ消えていく。
「これはニオスの反応が楽しみね」ジャスミンが尾を立てる。
霧へ向かい、合図を送り陣形を解き、アンデッドを追従させる。
「ニオスはアークリッヂだ。リーケンの弟子だったというし。簡単に見抜けるだろう」
「ちっ、つまんないの」
霧を抜けると左側で剣と盾、そして派手な兜を被ったスケルトンがこちらへ頭を下げてくる。
スケルトンの後方で休んでいた蜘蛛が起き上がり、こちらを見てくる。
手を軽く上げ、蜘蛛に挨拶を送る。蜘蛛が体を震わせ挨拶に答えた。
右側にはボーンゴーレムが待機し、入口を静かに見張っていた。
「モート、デスフラワーと蜘蛛の元へ行っていいぞ」
「ガル」
モートが四足で蜘蛛の元へ向かう。デスフラワーが短い足で走り、モートに追従していく。
前方ではアリゲーターが地面に杭を立て、柵を建て並べていた。
マーラに追従し奥へ向かう。
「装備を新調したのね」
マーラが後ろ向きに歩きながら話しかけてくる。
「まあな。お前にも土産がある」
「それは楽しみね」マーラは嬉しそうにして前を向く。
1つ目の扉は解放されたまま。
地下牢へ降りる階段を有するフロアには、ゴーストのエスティナと多数の半透明な黄色い霊魂達が集っていた。




