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道中のスザンカの作品は全て灰に変わっていた。
霊廟へ着く。
「ねえ、このまま出るつもりなの?」
「ああ」
「まあ、いっか」
ジャスミンはすぐに納得し、出口の方へ向かう。
「ね、ねえ。待ってよ!」
瓶を両手で大事そうに抱えるゾーナが側へ寄ってくる。
「それはちょっとまずいんじゃないかな」
ゾーナはジャスミンと違い、酷く心配そうな表情を浮かべてくる。
「確かに考慮すべき点はある。だが進まねばならないんだ」
「いえ…その…進むなら不可視化で身を隠すとか、した方がいいんじゃない?」
「まったく。本質の話だ、ドワーフ」ニオスがゾーナの後方から意見を飛ばす「お前は黙って、瓶の心配だけしていればいい。我々を煩わせるな」
「…………」
ニオスの方を向いたゾーナは何も言わず、抱えた瓶の蓋を眺めるように俯き、壁の方へ数歩下がっていく。
ニオスの方へ手を翳し、抑えさせる。
ゾーナの側へ行く。
「ゾーナ」
「ごめんなさい……」
俯いたまま顔を上げないゾーナ。
「俺には目的がある。いつまでも偽り、隠れているわけにはいかない。お前の懸念も十分理解できる。だがこれは好機であり、恵まれたチャンスだ。心配せずとも闇雲に向かう訳じゃない」
「…………」ゾーナが顔を上げる「あ〜ん、なんにょ話? 私、上官とかが何を言いたいのかとか偶に理解できないないから」
「…………さっさと行こう。ニオス、俺が先に行く。何かあればここへ引き返す。ボーンゴーレム達と備えておいてくれ」
「畏まりました」
メトゥス、ジャスミン、ゾーナ、アンデッドハッグ達を連れ、外へ向かう。
── Ⅷ章『信仰』──
誰もが望んで堕ちるとは限らない。『平穏の地』より。著:デランド:堕天使。
日差しが眩しい。
希望の再会の出口へ向かう。
街が少し騒がしい。
アンデッドハッグ達に指示を送り、塀の影へ移動させる。
1人のドワーフ衛兵が出口付近で規制線を張っていた。
「おい、止まれ」驚愕した表情から困惑した表情へ変わり、顔を少し前に出し凝視してくる。頬を吊り上げ目を細めるドワーフ衛兵「アンデッドだと。冗談だろ。なんで俺のシフトの時に」剣を抜き、盾を構え、身構えるドワーフ衛兵。周囲を見張っていた他の衛兵達も駆け付け、武器を抜き、共に身構えてきた。
駆け付けた内の1人。女ドワーフの衛兵が驚いていた。
「ゾーナ!?」
「なに!?」
女ドワーフの衛兵に続き、周囲の衛兵達が視線を集める。
「その、見ての通り私は無事よ」
ゾーナは瓶を抱えたまま手を軽く振り、たどたどしく話し始めた。
女ドワーフの衛兵が険しい表情を浮かべたまま口を開く。
「ゾーナ。私の娘の名は?」
「えっ」
瓶を両手で抱えるゾーナは困惑した様子で首を傾げる。
「さっさと答えなさい! さもないと切り刻むわよ」
衛兵達は眉間から汗を滴らせ、こちらを静かに、だが酷く嫌悪した表情で睨み付けてくる。
「お、落ち着いてジュナ。生まれる前はドーナにしようって言っていたけど、結局は貴女が折れて、アーカにしたのよね」
「…………」
ジュナは険しい表情を浮かべたまま沈黙し、何も言わない。
続いて男のノーム衛兵が口を開く。
「ゾーナ。俺の好きなトランプゲームは?」
「ガット。貴方も落ち着いてよ。貴方はトランプが嫌いなはずでしょ。いつもお酒の話ばかりしてるじゃない」
「…………」
ガットは片方の眉を意味深に動かすが、険しい表情のまま何も言わないのは変わらなかった。
他の衛兵と異なる兜を身に付けた男のドワーフ衛兵が口を開く。
「ゾーナ。俺はどこの店の麦酒が好きか答えてみろ」
「兵長、貴方は麦酒が大嫌い。好きなのはロブスター亭の蜂蜜酒でしょ」
兵長が武器を収める「ゾーナだ」兵長が人差し指、中指を顔の横で外側に二度振る。
他の衛兵が兵長の合図で武器を収め、兵長の指示で数人が持ち場に戻っていった。
「はぁ~無事で良かった。ゾーナ」
武器を収めたジュナがゾーナを優しく抱き締める。
「私も無事に会えて嬉しい」
ガットが両手を腰に置き安堵した態度で口を開く。
「そいつずっと騒いでいたんだ。お前がいなくてな。これで静かになる」
「ゾーナ、報告書を作ってもらう前に、事情を事情を聞いておこうか」
兵長が腕を組み俺の方を見てくる。
ジュナがゾーナの顔を見つめ、何度か頷きながらからそっと離れた。
「兵長。私が巡回している時に……」
「ゾーナ、俺が話そう」
ゾーナが小さく頷き、一歩下がる。
「もう知っているとは思うが、デーモンがこの街を実質、支配下に置いていた。デーモンは街の地下に住み着いていたハッグを手懐け、住人を含む多くの種族を街から拐わせ快楽の玩具にしていた。ゾーナもその被害者の1人だった。だが俺が偶然、地下のハッグの住み処で居合わせ、ここまで共に連れてきたという訳だ」人差し指で手招き、瓶を持ったアンデッドハッグ達をこちらへ来させる。衛兵達がアンデッドハッグを見て驚き身構える「こいつらは殺した後にアンデッドとして俺の従属にした。今は俺の命令なしで危害は加えるような事はしない」衛兵達は困惑した表情を浮かべているが武器を鞘から抜こうとする様子は見られない「ゾーナとこのハッグ達が持っている瓶には、今までに拐われたがまだ殺されてはいない多くの種族達が大勢閉じ込められている」衛兵達が互いの顔を見合わせる「この者達を助けてやって欲しい。デーモンへの捧げ物としてではなく、本当の救済としてな」
兵長の表情が酷く険しくなっていく。
ゾーナが落ち着かない様子でこちらを何度も見てくる。
兵長は表情を緩ませ、次第に悲観した表情へと変わった。
「あぁ……中々堪えるな。力になりたいが、俺だけではどうしようもない」
「衛兵のソルスを知ってるか?」
「勿論」
「ソルスとその取り巻きも協力してくれるだろう。アンダーグラウンドの連中も味方だ。何より俺は、お前達の王や、傍観しかしないウルカヌスとは違う。ヴォイドの明確な意思の元、お前達の救済者として送られてきたんだ。ヴォイドの後ろ盾を信じろ。立ち上がるなら今しかないぞ。自由を勝ち取れ」
「…………」
「それともここで、王や腰抜けの神の慈悲を待ち、デーモンの機嫌を伺い続けるか」
少しの間、沈黙が続く。




