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奥の部屋へ入る。
奥の部屋には様々な装備が保管され、中央には白い障壁で覆われたケースが設置されていた。
中央のケースの中には青黒いローブ、グローブ、ブーツの一式が飾られている。飾られている一式は手入れが非常に行き届いているようだ。
女王との謁見に用いる礼服か。
障壁は一見変性魔法に見えたが、メラクシで覆われていた。アンデッドの侵入は想定していなかったようだな。
そのまま手を入れ、ローブ、グローブ、ブーツを取り出す。
多くの戦いで消耗劣化し、呪酸で黄ばみ始めていた与えし者のローブ、グローブ、ブーツを脱ぎ捨て、ケースの中に飾られていた装備を身に着ける。
自身の右手を見つめ、何度か拳を作り開く。装備は体に馴染み悪くない。
身に着けた装備を注視すると、多数の蛆の模様が表面に丁寧に練り込まれていた。
これはかなりの上物だな。
奥の壁横一列に並べられた金縁のショーケースへ向かう。
両目が抉り取られ、恐怖の表情を浮かべる女の上半身に首飾りが飾られている。
一番左のケースの障壁に触れ、そのまま先程同様障壁を通過し、飾られている首飾りを手に取る。手に取った首飾りを軽く動かし、ゆっくりと眺める。
首飾りは全体的に青黒く、精巧な蛆が綺麗に紡がれ、パーツ部分の精巧なワームと一体に繋がれていた。
首飾りを身に着け、隣のケースに向かう。
障壁を通過し、ケース内中央に立てられた片手の人差し指から指輪を取る。
手に取った指輪を凝視する。
ワームの頭と尾を繋げた形をした青黒い指輪。
自身の指に嵌める。
隣の大きな長方形ケースに向かい、障壁を通過し飾られている杖を手に取る。
杖の力を軽く放つと、杖が半透明になり、杖内部を蛆が這い回っている様子が見えてきた。
外見は変哲のない青黒い鉄の杖のようだ。杖を触手杖とクロスさせ背中に収める。
歩きながら右側の棚を見ていく。
ゴブレット、燭台、トレー等、年季の入った数多くの食器が重ねられ飾られていた。食器はどれも特徴的なデザインをしている。
特に魔力の類いは感じない。だが呪術の痕跡は残っていた。
左側の棚へ行き、棚に飾られている物を眺めていく。
変わったエンチャントが付与されているアクセサリーが雑に積まれ、置かれていた。どれも損傷や劣化が激しく古びているようだ。
積み上がっているアクセサリー装備の山の中に、覚えのある魔法の感覚が目に止まる。
山の中に手を入れ1つの指輪を取り出す。山が崩れ、指輪が地面に落ちていく。
取り出した指輪は一見劣化しているように見えたが、他の指輪と違い、外見が古びているだけで練り込まれた魔法はとても強く残っていた。精巧に作られた黒い指輪は黒い靄に包まれ、鼓動のように常に脈打っているのを感じる。
どこか……懐かしくもあるな。
黒い指輪をローブの内側へしまう。
他に目ぼしい物は……ないか。
部屋を出て、近くの丸テーブルにいるニオスの元へ向かう。
「ニオス」
書物を開いたままこちらを見るニオス。
「どうされました?」
黒い指輪を取り出し、ニオスに差し出す。
「お前が探していたのはこれか?」
ニオスが丁重に指輪を受け取り眺める。
「あ〜あ、これです。さすが師よ。正にこの指輪です」
「それは強力なエンチャントが練り込まれているようだ。それも精巧に。一体どうやって手に入れたんだ?」
「面白いことをお聞きなさる」ニオスがローブの内側へ指輪をしまう「貴方に頂いた物です」
「はっきりさせておこう。お前の示唆する通り、俺には記憶も力も最早ない。その気に障る話し方を今すぐやめろ」
「…………分かりました。師はなぜ我々を見捨てたのですか?」
「俺が答えられるとでも思っているのか?」
「分かっております。ただ私が伺ったという事実を早期に残しておきたくて」
ニオスが丸テーブルを離れていく。ニオスは念動で本を浮かべ、別のテーブルに置かれてあった書物を手に取り読み始めた。
ジャスミンの元へ向かう。
「何か見つかったか?」
「ええ!」翼で羽ばたき、棚の中段を見るジャスミンが念動で地面に置いていたサム人形を浮遊させてくる「ケリーのは無かった。一応ね。ああ、あなたのも、それとマーラのもね」
「感謝する」辺りを見渡す「しかしこれを全部見たのか?」
「勿論よ。集中力には自信がある方なの」ジャスミンが猫髭を上げる「それと〜……これ!」ジャスミンが前足を上げ棚の方を示す。
ジャスミンの指す方向にある人形を見ると、棚の奥側、三列目の人形の中にスザンカ人形が置かれていた。前列の人形を押し退け、スザンカ人形に触れる。すると目の前の人形棚が奥へと音を立てて下がり、右へスライドしていく。
「皆仕掛けが好きだな」
「貴方だって同じ事するんじゃない?」
白い障壁が張られている部屋へ入る。ジャスミンが追従しようとしてくる。
「ジャスミン、これは変性障壁ではなくメラクシだ」
「そう。えっ、メラクシって?」
「呪術だ。触れた者の視覚を奪う」
「アオ……」
ジャスミンが少し遠ざかる。
「先に入り、解けるか見て来る」
「勇敢ね。早くして!」
「ンフフ、顔を洗って待ってろ」
内部は水術の魔法石が雑に置かれ、種族の死体が多く保存されているようだ。
白髪で結われ、呪術の練り込まれた大籠が各々置かれ、大籠の正面にはメモが張られていた。
──大籠についた染みのある羊皮紙。
下部。
──
他の羊皮紙には各々、上部、頭部、皮、脳と書かれ、部屋の隅には大量のブーツが無造作に積み上げられていた。
突然部屋の奥の壁が音を立てながら右にスライドし、光源の付いた杖を突きながら、ウッドエルフの老女がゆっくりとこちらへ向かって歩いてくる。
スザンカのコレクションルームにいた盲目の老女のようだ。老女はじっとこちらを見据えたまま何も言わず向かってくる。
老女がこちらの前まで来ると、一定の距離をあけ立ち止まった。
「ここまで来た者を見るのは久しぶりだ。それもまだピンピンしているなんて」
「見かけより疲労を抱えているんだ。話しなら手短にな。それよりお前は、逆に元気になったようだな」
「彼女の力が弱まったからね~。感謝、感謝さ」
「それで、お前は誰だ?」
「ついて来ておくれ」
老女はゆっくりと背を向け、杖を突きながら奥の壁へ向かって歩いていく。
老女に追従し、老女が入って来た壁の奥へ向かう。




