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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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棚を眺めるジャスミンの元へ行く。

「ねえ! 見てこれ。たぶんこの街の住人達よ」

「本当だな。良く出来ているものだ。恐らく呪術の類いだな」

一体のノーム衛兵人形を手に取る。軽く回し眺める。見覚えがあるな。確かソルスの弟だったか。

「ちょっと!?」

ジャスミンが突然叫ぶ。

人形を棚に戻しジャスミンの方へ向かう。

「どうした?」

ジャスミンが念動で一体の人形を浮遊させ、目の前に持ってくる。

ジャスミンの人形のようだ。

「これって私よね」

不満げな表情を浮かべ、怒り気味に呟くジャスミン。

「良い土産ができたな」

「見て全部ピンク色よ。私は首の毛が少し白いっていうのに」

宙でゆっくりと回るジャスミン人形。

「確かに、忠実さに欠けているな」棚に並べられている他の人形を眺める。

「若干埃被ってるのもムカつく。これって……壊しても平気なのよね?」

「さあな。試してみたらどうだ?」

こちらを見るジャスミンの瞳孔が細くなり、ジャスミンがそっとジャスミン人形を棚に戻す。

「嫌な予感がするから止めとく」

「ふむ。今の所はそれがいい」

「そうなの? 本当に?」

「安全が確認できたら、ここは焼き払うからな。まあ、今はまだこのままにしておいた方が良いだろう」

ジャスミンが不満そうな表情で視線を剃らす。

「そう……」ジャスミンが再度ジャスミン人形を浮遊させ、持ち歩く「何か落ち着かないから、壊すまで自分で持っとく」

「ンフフ」

「スザンカは本当に死んだのよね? ここの人形が呪術の類いなら、何でまだ残っているの?」

「俺も不思議に思っている。さっきの呪液もそうだが、もしかしたら別の誰かが作った。或いは……」

「まだ死んでいない」

ジャスミンが不安げな表情を浮かべる。

「可能性は有る」

「わ、私はケリーの人形がないか探してみる」

「ああ。気を抜くなよ」


膨大な数の人形からケリーの人形を探し始めるジャスミンの元を離れ、丸テーブルに置かれた多くの羊皮紙を読み漁っているニオスの元へ行く。

「ニオス、何か良い物はあったか?」

「はい。他愛のない物と混在し、幾つか興味深い物が。私では理解が及ばない事もあるかもしれませんので、師も一度目を通されて見て下さい」ニオスは近くの別の丸テーブルへ行き、再び羊皮紙を読み漁り始めた。

丸テーブルに置かれた羊皮紙を手に取り読む。


──腐敗臭が漂う羊皮紙。字は乱暴に走り書きされていた。


新しい作品を早く作らないといけない。これじゃあまた姉妹達に負けてしまう。最近はどうも調子がおかしい。あの力を得るようになってから、妙な気がしちまうが、今更止める訳にはいかない。

姉妹達は毎回興味深い作品ばかり持ってくるというのに。このままじゃあ、あたしは笑い者さね。

もっとインパクトのある作品を作らなければいけないね。

──


──腐敗臭の漂う羊皮紙2。字は乱暴に走り書きされている。


また展示会で姉妹達に負けてしまった。

もっとインパクトのあるものを、インパクトのあるものを、インパクトのあるものを……。

羊皮紙の最後まで同じ文字が続いていた。

──


持っている羊皮紙を羊皮紙の山に置き、別の丸テーブルへ向かう。


──腐敗臭の漂う羊皮紙3。

アンデッドから死霊魔力を奪ったというのに、死霊術はなかなか成功しない。

ヴォイドとやらが拒んでいるのかね?きっと何かカラクリがあるのかもしれないね〜。

──


──腐敗臭の漂う羊皮紙4。

時間は掛かったが死霊術のコントロールは上手くいった…はず。

ヴォイドを出し抜いてやったのさ。

あの2体のアンデッドの力を拝借したが、私の力に変わりない。

死霊術はもうあたしのもんだ。

だがこれからも研究は必要かもしれない。

──


持っている羊皮紙を羊皮紙の山に捨て、別の丸テーブルへと向かう。


──腐敗臭の漂う羊皮紙5。

まったく、あのマリアって女が邪魔で仕方がない。

あの女の近くは眩し過ぎて目がやられちまう。皮膚も焦げちまったよ。

まったくなんなんだいあの小娘は。

──


──腐敗臭の漂う羊皮紙6。

あのマリアって女を作品の材料にすればきっと面白い作品が作れるかもしれない。

ソテイラ以来、久しぶりに姉妹達が褒めてくれるに違いない。

──


持っている羊皮紙を羊皮紙の山に捨て、別の丸テーブルへと向かう。


──腐敗臭の漂う羊皮紙7。封が閉じられている。未読の手紙のようだ。


蛆の姉妹達へ。

最近はどれも旨くはないね。

あのマリアって小娘が勘付いてからというもの、餌を飼育するのがやりにくくて仕方がない。

それに加えてこのくだらない戦争さね。

痩せ細った奴が増えちまって、まったく退屈ったらありゃしないよ。

この前送ってくれた教会煮は格別だったよ。どうやったらあんなに旨くなるんだい?

──


──腐敗臭の漂う羊皮紙8。未読の手紙のようだ。


リトリゴへ。

警告に感謝するよ。

デーモンがこの街にいるのは知ってたさね。でもさして街には興味がないようなんだ。

危うくなったらそのデーモンとの協定でも検討するよ。

なんと言っても悪魔は法に縛られてるのが救いさね。また機会があればいつでも寄ってっておくれ。

愛を込めて妹より。

──


羊皮紙を読み終え捨て、部屋の奥の暖炉へ向かう。

暖炉の側には精巧に作られた両手程の大きさをした銀の蛆人形が不自然に飾られていた。

暖炉の火で熱を帯びた蛆人形に触れると、仕掛けが音を立て動き出した。

暖炉が下へスライドしていき、奥に隠し部屋への通路が現れた。

「キュル」

「メトゥス、待っていろと言ったはずだ」

「キュル……」

「まあ、いいだろう。好きに漁れ」

「キュル!」メトゥスが人形部屋を探索し始めた。

ニオスは丸テーブルに置かれていた書物を読み耽け、ジャスミンは一体の人形を浮かせながら他の人形を眺めている。


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