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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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棺の蓋が開くと多量の死霊魔力が棺から溢れ出し、中に入っていたアンデッドが姿を現す。

アンデッドが念動で浮遊し、こちらの前へ降り立つ。黒く劣化したローブに朽ち掛けた杖を突き、何も発せずその場に静止している。

「銀の…リッヂ?」

ジャスミンが足の間から物珍しそうに見ている。

アークリッヂが緑に光る両目をジャスミンに向ける。

「うっ」

ジャスミンは様子を伺い、出していた顔を戻し、再び足元の背後に身を隠した。

視線を戻しアークリッヂを見る。

「何者だ?」

アークリッヂは目を細め、少しの間こちらを静かに見つめた後、間を置き、ゆっくりと屈み片膝を立て跪いた。

「再び御目に掛かれると信じておりました」顔を上げこちらを見上げるアークリッヂ「師よ」

右手を軽く上に二度弾き合図を送る。アンデッドが杖を支えに立ち上がる。

「答えを聞いていない」

「…………」

アンデッドが視線を下に向け、ジャスミンを静かに凝視している。

「この猫の事なら気にするな」

視線を戻しこちらを見るアークリッヂ。何かを深く考えるように間を置いている。

「名はニオス。嘗ては貴方の弟子でした。再度蘇り、再び貴方の忠実なる弟子と。リーケン師よ」マルドニオスは目を瞑り静かに息を吐く「こうして再び再会できるとは嬉しい限りです」

「ふむ……。なぜ俺がリーケンだと?」

「私は貴方と付き合いが長い。長年共に多くの苦難を渡り歩いて来ました。幾年眠りにつこうとも、決してその深き魂を忘れはしません」

「そうか。メトゥス」

「キュル」

「メトゥスがいた場所に遺物があった。これを覚えているか?」

メトゥスが羊皮紙とハッグの血の付いた小骨をニオスに差し出す。

ニオスは小さく頷き受け取ると、すぐさま書き始めた「ええ、覚えていますとも。何者かの指でしたな〜。始めは師からの贈り物かと思っておりましたが、どうも腑に落ちない点があったもので、用心を張っておきました。失望為される前に1つ挽回を申しますと、私では理解に時を要する物だった事は確かです」

念動で羊皮紙をこちらに手渡すニオス。

確かに筆跡は同じ。遺物に関してもこれといって……だが気の抜けん奴なのは分かった。

メトゥスに羊皮紙を手渡す。

「あれは俺の肉体だった」

「何と。それは御労しい」片手を掲げるニオス「いえ、失礼。少し理解に苦労した物で」

「心当たりはあるか?」

「はい。僅かですが。師が失踪される前、何か大きな事を為さると聞いた覚えが。それに関連している可能性もあるかと」

「ほお、それは?」

「いいえ、詳しくは聞いておりませんので。師の主要な教えの1つが何だったにかを御存知ですか?」

「試しているのか?」

「とんでもない。それより御存知ない?」

「先ずは己で答えを導き出せ。か?」

「あぁ、そうでした。蘇ったばかりで、完全に冴えが戻っておりませんでした。どうか御許しを」

右に顔を背け宙を見つめる「ニオス。事態はあまり芳しくない。俺は失態を犯したようだからな」

「複雑な事情が御有りのようで。師よ、できれば再度貴方の御役に立ちたい」

「構わんが。正直、お前の期待は危ういぞ」

「問題ありません。それに、肉体を取り戻されれば、事態は必ず好転する事でしょう。力や記憶など」

「そうだな」

「エッヘン! オッホン!」ジャスミンが足元から出てくる「ハァーイ!」ジャスミンがニオスを見上げ前足を振っている。そして自分の首元に前足を当てる「私はジャスミン王女。よろしくね。ニオス」

「…………」

ニオスがジャスミンを見つめ静かに頷く。そしてニオスは背を向け、自身の棺へ向かっていく。

「堅物ね」口許に前足を当て、こちらに小声で話すジャスミン。

「冗談は控えた方が賢明かもな」

「んふ」ジャスミンがじっと見つめてくる「何だか様子が変だけど、平気?」

「魂をスザンカに吸収され掛けたせいかもな」

「うそ。ソウルドレイン? それって想像できないんだけど」

「生きたまま心臓を揉まれたり、脳を弄られるのに近いかもな」

「うぇ……受けたくない魔法ね」羽ばたき、こちらの頬骨に猫髭を当てる距離まで来て囁くジャスミン「それで、出てきたあれは信用できるの?」

囁き返す。

「分からん。確信できるまでは話を合わせてくれ」

「分かった。仮に目的があるとしたら、貴方の考えは?」

「俺をリーケンの器にする。とかな」

「なるほどね~。どっちにしろ、あれは当分協力的って事ね」

「そうだな。だが気を抜くなよ。俺の記憶も、リーケンの魔法の産物かもしれんからな」

「でもあれが本気で事実に反して勘違いしてたら、面白いんだけどね」

「それは笑えるな」

「でも貴方が本当にリーケンだったら、考える所がある」

「それは根拠が有って言っているのか?」

「その逆。以前モナークの文献で読んだんだけど、ウィリアムっていう賢者が書き残していたの。あまり仮定を増やして深く考えすぎると、何れ本質を見失うってね」

「ほお。だが今考えても仕方がないさ。お前をよく本を読むのか?」

「う~ん、昔は読んでいたかな。でも今は全然」前足を上げ自身の肉球を見つめ、二度握り、開くジャスミン。


ニオスは棺に入っていた不要物を足元に捨て、何かを探している様子だった。

「あ~、何か探し物なの?」

ニオスはジャスミンに受け答えせず探し続けている。ジャスミンがこちらを見る。

「お前の側にいたのはハッグロードだった。この先のどこかに奪った戦利品をまとめている可能性が高い。大切な物だったのならば、尚更だろう」

ニオスが探す手を止めた。

「そうでしたか」

そう言うとニオスは端に寄り、道を開けた。

ボーンゴーレムも道を開け、先へと進み、奥の扉から中央大扉へ向かう。

ジャスミンはスザンカの呪液に触れないよう追従してくる。

「ケリーがこの先に、無事でいてくれればいいんだけど」

「可能性はゼロではない」

扉を囲い待機しているアンデッドハッグ達がこちらを見る。中央のアンデッドハッグに道を開けさせ、扉の前で足を止める。

入り口と同じ形状の扉だが、老婆の顔は描かれていなかった。指示を出し古びた扉をボーンゴーレム2体に左右各々押し開けさせていく。

扉が開くと、先はスザンカの私室らしき場所だった。

先へ進む。


扉の先の部屋は古びた丸テーブルが多数等間隔で置かれ、丸テーブルの上には金貨の山や羊皮紙などが数多く散乱していた。

部屋を囲うように密接して置かれた巨大な多くの棚。棚の段差全てに膨大な数の小さな人形が綺麗に並べられていた。

部屋の中央奥には1つのロッキングチェアが置かれ、暖炉の火は付いたまま燃えていた。

メトゥス以外の従属アンデッドを部屋の外で待機させる。

「なにこれ……凄くカビ臭い。っていうのかな」

「そうだな。だが害はないだろう」

ジャスミンとニオスが部屋に入り、各々部屋の中を見ていく。



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