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「グゥ゙ァァ!」
スザンカが自身の輝きの導きを強め、そのままこちらに凄まじい勢いで滑空し突っ込んで来た。
死の火球を放つ傍ら、骨壁を複数放ち、何重にも防壁を築く。
だがスザンカは死の火球に被弾しつつも、怯む事なくフリアの如く形相を浮べ、鋭利な爪で骨壁を粉砕に粉砕し、凄まじい勢いで急接近してくる。
骨壁の形成が間に合わず、スザンカが通り過ぎた箇所に壁を形成してしまった。すぐさま骨壁を放つのを止め、自身の死の抱擁を極限まで強め、備える。すぐ後、体に凄まじい衝撃が走り、骨の鎧にヒビが入り、壁への激突の衝撃で骨の鎧が砕け散った。
スザンカがこちらの首元を掴み壁へ押し付けてくる。
壁が割れ、奥へ奥へと押し込まれていってしまう。
首を押さえるスザンカの手首を掴み、引き離すべく抗う。同時に手から死の腐敗を放つ。
舞う粉塵。上部から砕け落ちてくる落石の中、青黒い唾液を口の中で糸引かせ、薄汚れた歯を剥き出しにしながらスザンカの怒りに満ちた表情が目の前の視界を覆っている。
互いの体に宿る死と光輝の炎が融合し始め、凄まじい破裂音と共に周囲に衝撃波を放ちながら混沌を形成し始めた。
スザンカの手は腐敗しつつも尚、こちらの首を砕こうと握り締めるのをやめない。
「グウァァーーーー!!」
恐怖を帯びた咆哮と共に、スザンカの糸引く青黒い痰が顔面に降り掛かってくる。スザンカの痰が呪いの腐食を引き起こし、被っていた顔面の殉教騎士の皮膚を溶かしていく。
スザンカの手首を引き離そうと腕に力を込めるが、スザンカの腕はびくともしない。なんて力だ。
抑えられた反対の手から何とか死の火球を複数放ち、スザンカの腹に連続で撃ち込む。最初の数発はスザンカに命中したが、スザンカのへそから蛆が湧き出てくると、壁となり死の火球の代わりに受けた。更に周囲に溢れる蛆の大群を吸い上げ吸収していくスザンカが自らの体に蛆を集め、蛆を鎧のように纏い始めた。
死の火球で蛆を焼き殺していくが、次々集う分厚い蛆の塊に阻害され、次第にスザンカの体に届かなくなってきた。
頸骨が軋み音を上げ始めた。
スザンカを抑え込もうとしたが、逆にこちらの腕をすり抜け、腹へと腕を突っ込んできた。
「アァ゙ァ゙ァ゙! クソッ……」
そのままスザンカがソウルドレインを放ってきた。
だが痛みを感じない。不発か威力不足か。
スザンカが驚愕した表情を浮かべ、こちらを見てくる。
「アァ゙ーー!」油断し、隙のできたスザンカの前歯を拳で粉砕し、そのまま長い舌を掴み、思いっきり引き下げスザンカの下歯に舌をめり込ませながら舌を引千切る。
「グゥ゙ァァーー!」
スザンカの千切れた舌から呪酸が吹き出し、骨に飛散してくる。体の骨が緑の煙を上げ凄まじい痛みが走る。周囲の岩はスザンカの呪酸を浴びると白い煙を上げながら融解していっていた。
千切った舌を捨て、スザンカの両手の力が弱まった隙を突きスザンカの口に右腕を勢い良く突っ込む。
そのままスザンカの喉肉、頸骨を貫き、内臓まで到達した後、心臓を掴み握り潰しながらありったけの力で死の火球を放つ。
「グゥ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ーー!」
凄まじい破裂音と共に視界が真っ黒になり失われ、頭の中に高音が鳴り響く。
…………。
…………。
「ハァー!」暗闇に覆われた視界の中で目を見開き、酷い頭痛に耐えながら地面に手を突き、反対の手で痛む頭部を抑える。
「一応無事みたい。ねえ、大丈夫?」
見上げるとジャスミンと鴉サイズに戻っていたメトゥスが少し離れた場所からこちらを見下ろしていた。
周囲には死骸となった蛆の山が酸沼に浮かび上がっていた。
底なし沼のように沈みゆく蛆の死骸を踏み、歩きジャスミンとメトゥスの元へ向かう。
有翼を放ち、軽く羽ばたき沼から上がる。
「一応、なっ」
「恐ろしかった……文献とはまるで違った。貴方がいなかったら、どうなっていた事か」
「ラフサナマージス」
「えっ、なんて?」
「いいや、何でもない。バッグに関しては、運が良かった」
「また謙遜しちゃって」
「だと良いが。作品として、並べられていてもおかしくはなかった」
「本当に?」
「ああ。奴は死霊術に疎く、俺達を甘くみていた。それが幸いだった。もしスザンカが用心深く見据え、又は死霊術に精通していれば、結果は異なっていただろう」
「まったく勝算がなかったって事?」
「いいや。あったさ。メトゥスの挨拶で推し測れたのが効いた。ボーンゴーレムの資源を残していたのも、奴のミスで勝機があったと言えるな。まあ挨拶時の行動が誘い込む演技だったのならば、この見立ては難しかっただろうがな」
「そういう事いつも考えてるの?」
「そうだ」
「ふ〜ん、凄いわね」
「進むぞ」
「うん。んっ、 ちょ、ちょっと!? 体から蛆が落ちてきてるって!」
落ちた蛆を見る。
「もう死んでいる」
「そうね。元気には見えない」
翼を一振りし、骨の隙間に残る蛆の死骸を吹き飛ばす。数匹がジャスミンの毛の間に入ってくいく「アーー!」ジャスミンが自分の尾を追いかけるように駆け慌てふためく。
辺りを見回す。
スザンカとの戦いで落とした杖を蛆の山から念動で引き寄せ拾う。
ゴーレムは2体のみ残留か。
「メトゥス、大丈夫か?」
「キュル……」
「疲れているようだな」
「キュル」
「はぁ…はぁ…気持ち悪い」
蛆を払い退け終わり、安堵しているジャスミン「その顔を隠す代わりを見つけないとね」
「そうだな。仮面なんていいかもな」
地面にはまだスザンカの体液が残っており、青黒い呪酸の液溜まりができていた。
死んだ…はずだが。
「キュル」
「大丈夫よ、メトゥス」
「よく無事だったな」
「メトゥスが庇ってくれたの。ね?」
「キュル」
「それは良かった」
杖を動かし軽く眺める。杖が呪酸の影響で多少損傷していた。衝突の影響はなく折れてはいないようだ。だがメンテナンスは必要だな。
ヴォイドの呼び声を放ち、残っているハッグの死体からアンデッドハッグを生み出す。
そして中央に置かれた棺へ近付き棺を凝視する。棺の蓋にはᬀの紋章が大きく装飾されていた。
ボーンゴーレム2体を棺の側に向かわせる。ボーンゴーレムが前方の棺の左右に立ち、こちらを向く。
ジャスミンが側に来る。
「彼女は本当に死んだの?」
「恐らく。心臓を潰したからな」
「ふぅー。良かった、良かった」棺のにおいを嗅ぐジャスミン「アンデッドのにおいがするわ」
「ほお」
「貴方とは違う。お友達かも。そういえば貴方と同じあのにおいはなんだったの?」
手を見せる。
「この指だった。メトゥスもいた」
「そ~お。冒険は尽きないのね〜」ジャスミンが棺を見る。
「中身は何だと思う?」
「検討もつかない。見なかった事にするというのも、悪くないかもな」
「そんなのダメよ。気になるじゃない」
「一応、警戒していろよ」
「分かった」
アンデッドハッグ達を指定地へ移動させる。
ボーンゴーレムに合図を送り、棺を開けさせる。
ジャスミンが俺の足元の背後に隠れ、ボーンゴーレムがそれぞれ棺の蓋端を持ち上げ、後方に投げ下ろす。




