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──キャプションパネル。
金に目がない貪欲なノーム。
大好きな硬貨で永遠に腹を満たしてあげた傑作。
作品番号517。
※また入らなくなった場合は腹を拡張してあげなさい。済。父親、母親、姉、妹。
今度は娘の皮を使ってあげるように。
᯼
──
「助けないと」
「ああ、だがここの全員に構っていたら、いつまでも辿り着けない」
「でも放っておくなんて…できない」
「奴を殺せば、呪術も全て消える」
「そう……。でももし、奴に負けたら……」
「俺達も作品の仲間入りだ」
「…………」
苦い表情を浮かべ、目を閉じ、髭を微動するジャスミン。
先へ進む。
ジャスミンは何も言わず、こちらの後を静かに追従する。
警戒しながら先へ進み、都度作品を見る。
全裸の人間の女が全身縫合され壁に打ち付けられている。
口を何重にも縫われ、自由に喋る事はできないようだ。だが必死に目でこちらに訴えかけてきている。
手足の向きが逆に縫合されており、手足は別人の体の一部のようだ。
側にある木の枠で囲われたキャプションパネルを読む。
──キャプションパネル。
高慢で自信に満ち溢れた美食家。
多くの者達が味わう本物の美食を味わわせてあげた傑作。
作品番号488。
※パーツを定期的に変え、別の者達の味わいも教えてあげるように。
᯼
──
更に先へ進み、別の作品も見る。
腹を切り開かれた全裸のウッドエルフの男が壁に打ち付けられている。
切り開かれた腹からは臓器が全て取り出され、代わりにウッドエルフの女の頭部が置かれていた。女の生首は男の血管に繋がれ、青黒い血を巡らせていた。
側にある木の枠で囲われたキャプションパネルを読む。
──キャプションパネル。
最愛の者と永遠に一緒にいたいという願いを叶えてあげた傑作。
作品番号337。
※糧の補給は彼女の口から与えるように。済、祖母、娘1、娘2、息子、本人の残滓。
残りの糧は好きに任せるよ。᯼
──
緩やかに畝る通路の下部方向から、光源の付いた杖を突きながら、黒いローブで体を覆い隠す1人のエルフの老女が向かって来ていた。
ローブのフードを深く被り、顔は口元以外ハッキリと見えない。だがその口元も大きく長い鼻によって隠れていた。
エルフの老女は時折立ち止まると、光源を掲げ、壁に掛けられた作品の手入れを行っているようだった。
老女へ向かって歩き、老女がこちらに気付き動きを止める。壁の幻影で見た、ウッドエルフの女の杖の形状に似ていた。
「誰だい!」
エルフの老女が杖の灯りに頼るようにこちらに向けフードの隙間から覗き込んでくる。
「お前こそ何者だ?」
「すんすん、な~んだい。喋る死人と猫かい」
エルフの老人はそう言うと、慌てる素振りも見せず、近くの作品の手入れに再び取り掛かり始めた。
「スザンカに仕えているのか?」
突然大きな足音を立て、俊敏に老女がこちらの側まで来た。
身構えるジャスミン。
「し~」
老女は大きく長い鼻の先に、皺だらけで爪が変色した人差し指を当てる「彼女に聞こえちまうよ」囁き声で警告してくる。
「既に向こうは気付いている」
「なら悪い事は言わない。逃げられる内に逃げるんだね。私ならさっさとこんな場所から出て行くね。彼女は作品に彷徨かれるのを許さないだろうからね」
「その女を是非とも俺の作品に加えたくてな。会いに来たんだ」
「あらまぁ~!」態とらしく驚く老女「冗談を言う程勇敢なのね~。でも愚かな自信家のそういう台詞は聞き飽きたわ」
「お前はなぜ出ていかない?」
「私は好きでここにいるわけじゃない。それに彼女が死ぬのなら、それも本望よ。貴方の勝利を心から願っているわ」
老女はそう言い終えると横を通り過ぎ、作品の手入れを続けていく。
「いいの? 見逃して。スザンカの手先かもしれないのに」
「そうは思えん。両目がくり貫かれていた。あの杖が無ければ何も見えないんだろう。元作品で、労働と引き換えに少しの自由を与えられている可能性がある」
「だとしたら……可哀想に。あの杖も呪術の類いなの?」
「さあな」
スザンカのコレクションルームを抜け、蔓の最下層部へ着く。
「止まれ」
片手を上げる。
「どうしたの?」
「出迎え係だ。この先で待ち伏せている」
先にある、中規模の円形フロア上部、下部共に複数の蠢く大きな手が中央を向き、身を潜めていた。
「歓迎の挨拶なら、普通にして欲しいものね」
複数の魔法を自身に放ち、戦闘準備を始めるジャスミン。
「恐らくデスハンドだ。見えている事ぐらい向こうも想定済みだろう。きっと数で押してくるぞ」
「デスハンド。それってまずいの?」
「芳しくない。高位呪術の一種、祟りの介入でプルトーの領域から呼び出される魔物だ。これは無事に帰れんかもな」
「ふー!」
気合い入れるように息を吐くジャスミン。
「スケルトン」
スケルトン一体を敵が待ち伏せているフロアの中央へ向かわせる。スケルトンは上部が欠けた盾を構え、欠けた部分から古び変色した剣を突き出し、ゆっくりと前進していく。
メトゥスに合図を送り、こちらの周囲をカバーさせる。杖を背中に収め、手に力を込める。
スケルトンがフロアの中央に差し掛かった時、地面の罠が発動し、黒い蛆に塗れた、複数本の黒い触手が地面から飛び出してきた。
飛び出した触手は無造作に蠢き、スケルトンを壁へ弾き飛ばした。
触手に弾き飛ばされたスケルトンは壁に衝突。すぐに立ち上がり、再び盾を構える。
蠢く触手に付いた多数の黒い蛆が周囲へ飛散していく。
飛散した蛆は地面を無造作に這い回り、盾を構え身構えているスケルトンの足から登っていき、スケルトンの体に纏わり付き始めた。
体を振るい抵抗するスケルトン。何匹かの蛆は地面へと落ちていくが、落とされても尚、スケルトンの足から這い上がり纏わり付こうとしていく。
「いっ!?」
粘液の弾ける音を立て、地面を這い回る蛆がジャスミンの方にも向かってきた。ジャスミンはすぐさま有翼を放ち羽ばたくと、地面から体を離した。
溜めた力を解放し、死霊濃度を高めた大規模の死の火球を蠢く触手の根元へ放つ。
大きな爆発音に続き、複数の低い爆発音がフロア内を反響し辺りに響き渡っていく。
「シーーーー!!」
無数の黒い蛆が断末魔を上げながら焼け死んでいった。
「メトゥス」
「キュル」
メトゥスが周囲に触手を伸ばし、地面から這い出る触手を掴ませる。
魔法陣から触手を引っ張り出していくメトゥス。
地下通路の奥から山になった黒い蛆の群れが現れ、こちら目掛けへ向かってくる。
「キィーーーー!!」
視界が揺れる程の高音の咆哮を上げ、待ち伏せていたデスハンド達が壁から次々と湧き出てきた。
壁から湧き出てきたデスハンド達は、記憶とは多少異なり、青黒い体が所々緑に変色していた。
デスハンドが壁や地面を五本の指で駆け抜け、こちらへ向かってくる。途切れた手首の部分から多くの黒い蛆を排出していた。




