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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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「メトゥス」

メトゥスが触手を振り下ろし、飛び出ていた複数の槍を粉砕し道を開ける。

地面からは青黒い呪液が滲み出ており、先の通路一帯に広がっていた。

粘液のにおいを嗅ぐジャスミン。

「無臭」

「ふむ」

膝を立て座り、呪液を軽く手で掬いにおいを嗅ぐ。

この独特なにおいは呪液で間違いないな。

「ジャスミン、触れないようにな」

「でしょうね」

ジャスミンが有翼を放つ。


先は壁で塞がり、行き止まりになっていた。

「妙だな」

「行き止まりみたいね」

「いいや、何か感じる」

「ウゥゥゥゥ……」

壁に虚ろな表情を浮かべる大きな顔が現れた。

「ど、どうも……」

ジャスミンが羽ばたきながら片方の前足を振る。

「ウゥゥゥゥ……」

「通してくれ」

「ウゥゥゥゥ」

壁に現れた顔が低い声を上げ、悲壮に満ちた表情に変わり、じっと凝視してくる。

「ねえ、こっちは急いでいるの。早く通してくれない? それとも力尽くがお好みなのかしら?」

ジャスミンが魔法を放つ仕草を見せる。

「ウゥゥゥゥ!」

目の前に幻影が出現し、白く半透明のドワーフ衛兵達が現れる。

「本当にここか?」

「間違いない。ここの婆さんが子供を連れ去っているんだ。きっとこの奥に行方不明の子供達がいるはずだ」

「分かった。分かった。お前の勘はいつも正しいからな。確認しよう。でも分かってると思うが、見つけたとしても誰も喜ばないぞ?」

「構わないさ」

衛兵達が通路の先へ進んでいき、幻影が消える。

「ウゥゥゥゥ!」

次に殉教騎士の格好をした白い半透明の者達が現れる。

「本当にネクロマンサーだと?」

「ネクロマンサーだろうとなかろうと、捕らえてから考えればいい」

殉教騎士の格好をした者達が通路の先へ行き、幻影が消える。

「ウゥゥゥゥ」

新たな幻影が現れ始めた。

ローブを身に着け、杖を地面に突き立てるウッドエルフの女が。側には赤い鎧を身につけた大柄な人間の男と、二本のダガーを腰に差し、背に二本の剣を背負う革装備のリザードマンが現れた。

ウッドエルフの女が壁に一歩近付く。

「早く通して! これ以上、犠牲者を出させるわけにはいかないの」

「ウゥゥゥゥ……」

大柄な男がウッドエルフの女の方を向く「こいつもここの連中の仲間だ。始末しておこう」

リザードマンは腕を組んだまま無言で佇んでいる。

「ウゥゥゥゥ……」

幻影の中に先程見た、複数のドワーフ衛兵達が白く半透明に現れた。会話の後、衛兵達が通路の先へ進んでいき幻影が消える。先程の殉教騎士が現れ、同じく会話の後幻影が消えた。

腕を組んだまま無言で佇んでいたリザードマンが2人の方を向く。

「こいつは俺達に警告しているんだろう」

「ハッ! 俺達は今見せられた連中とは違う。おい壁! いいからさっさと通せってんだ!」

壁が道を開く。そして3人が奥へと進んでいき、幻影が消える。

「ウゥゥゥゥ!」

ここに訪れた大勢の種族達の幻影が一気に重なり合って映し出され、次々と目紛るしく入れ替わっていく。そして全ての幻影が流れた後、一瞬で消滅した。


ジャスミンと目を合わせ、そして互いに壁の方を見る。

「ウゥゥゥゥ……」

壁は悲壮に満ちた表情で目を瞑ると壁に浮かんでいた顔が消えた。

壁から顔が消えると、進路を塞いでいた壁が次第に消滅し消えた。

ジャスミンと共に奥へ進む。


奥へ進んで行くと、更に地下へ続く古びた石の階段が見えた。

警戒しつつ霊廟の深部へ向かう。

階段を降り終え深部へ着くと、歪な老婆の顔が浮かび上がる多数の太い蔓が進路を塞いでいた。

ジャスミンが小型の火球を蔓の壁へ放つ。だが蔓は燃える事なく、火球はそのまま消滅した。

「ダメみたい」

手に力を込め、中型の死の火球を蔓の壁に放つ。蔓は緑の炎で燃え上がり、炎から逃げるように他の蔓は壁の奥へ引っ込んでいった。

蔓が引っ込んでいくと、壁際の蔓に覆われていた部分から無数の骨が出てくる。骨の側には多数の羊皮紙や錆びた装備が散乱していた。

「やったわね。彼らのお仲間にはならずに済んだ」

落ちている羊皮紙を念動で幾つか拾い、手元に寄せる。

羊皮紙を読む。


──変色した地獄の羊皮紙。

この場所は悍ましき気配と共に、プルトーの領域のように寒い。

ああディスコルディアよ。

我が魂の炎をどうか祝福したまえ。我が魂を地獄に戻したまえ。

──


──変色した古びた羊皮紙。

奴の跡を追うべきではなかった。

これは俺の仕事じゃない。俺が出る幕じゃなかった…。

ああ、ウルカヌスよ。どうか、どうかこの哀れなドワーフの魂をお救い下さい。どうか、どうか……。文字が掠れている。

──


──変色した古びた羊皮紙2。

ここにいるのはハッグなどではない。

もっと邪悪で悍ましい存在だ。

これを読んだ者がいるならすぐに引き返し、騎士団長に警告してくれ。

我々の手に負える相手ではないとな。

我らにウィクトーリアの加護があらんことを。

モナク帝国・神聖騎士団。

ルカーン。

──


──変色した古びた羊皮紙3。

ロクスソルス地下に潜む我が眷属を食い物にする不届き者を狩って来い。

そして我らが闇の女神モルスへと不届き者の血を献上するのだ。

ルーセット。

──


──変色した古びた羊皮紙4。

ヴォイドよ。どうして我々を見捨てたのですか。この場所には貴方の崇高なる恩恵である死霊術を汚す偽りの神が居座っております。

どうか、どうか、あの穢れた者に虚無の裁きを御示し下さい。

ブラックハンド。奪いし者。

マルク。

──


──変色し古びた荘厳な羊皮紙。

昔は悪戯ばかりしてよく叱られたわね。あの時は反抗してごめんなさい。

でも今は街を解放する為に戦っているの。今の私を見たら、アブンダンティアの元にいる母はなんて言うのか聞いてみたい。

会えると思っているけれど、万一の為に書き残しておくわ。

もうすぐ会いに行ける。

ザナ。


以下の印はラークホール神官の物であり、公布書類として扱う。

これらはログド王の名の下、神官に与えられた権限であり、破り捨てる行為を禁止とし、違反した場合は厳罰に処す。

──


──変色した古びた羊皮紙5。

モナークとの戦いが長引いて物資が底を突き始めた。くそエルフ共め!

だが俺はドワーフ。生粋のドワーフだ。負けると分かっていてもウルカヌスへの忠誠は変わらない。

こんな所で死ぬ事になろうとも、信仰心を持ち続けるしかない。それがドワーフとして生まれた俺の運命であり宿命だ。

ボーク。

──


読み終えた羊皮紙を捨てる。


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