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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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「適当に装備を拾え」

スケルトン達が落ちていた古い装備を拾い、引き続き追従する。

更に奥へ進んでいく。


「キュル」

メトゥスがさっき拾ったであろうヘルコインを一枚手渡してくる。

メトゥスからヘルコインを受け取る「よく見つけたな」

「キュル!」


地面や壁は多数の蔓で覆われており、蔓自体が其々蠢いている。

「もう墓地の地下どころか、街の地下ね。こんなに広いだなんて」

「そうだな。外の樹海の元まで続いていそうだ」

「足元にこんなところがあったなんてね」

「場所自体は街より古いかもしれんな。蔓にかなりの年季が見られる。もしかすると、怪物は採掘で目覚めたのかもな」

「そうかも。さっきのもあるし、十分用心しなくちゃね。ねえ、こんなに寒いのって普通なの?」

喋るジャスミンの息が白くなっている。

「いや、これ程とは想定していなかった」

「貴方は寒くないの?」

「寒くは、ないな。だが理解はできる」

「ふ~ん。私より寒そうな格好してる癖に」

「確かに。薄着過ぎるな」

「ハァー、ハァー」

ジャスミンは歩きながら時折前足を上げ、肉球に息を当てていた。


ジャスミンと共に奥へ、更に奥へと進み続ける。

寒さに耐えながら進むジャスミンが歩みを止める。

「すんすんすんすん、何このにおい」

ジャスミンが肉球で小さな鼻を抑える。

「ふむ、確かに何かにおうな。俺にとっては芳ばしい匂いだが……つまり良くないな」

「う〜ん♪」

「死体を穢した匂いだ」

「参ったなぁ〜」

地面や壁に広がる蔓の色が茶色から青黒い色へと変色していた。

「メトゥス」変色した蔓が巻きつく大きな鉄製のドアを押し開けるメトゥス「待て」メトゥスが押すのを止める「スケルトン」スケルトン一体を少し開いたドアの隙間へ行かせる。

作動音と共に大型のバリスタボルトがスケルトンの胴体を貫き、スケルトンを後方の蔓の壁へと串刺しにした。スケルトンはそのまま粉々に砕け落ちてしまった。

合図を送り、もう一体、スケルトンをドアの隙間に向かわせる。

スケルトンが無事に中に入る。

スケルトンがドアの内側を剣で叩き合図を送ってくる。

ドアの先へ向かう。

芳ばしい香りが強まり、アンデッドの本能が底から湧き上がってくるのを感じる。高ぶる感情を抑制し理性を保つ。

ドアを抜けると蔓のドーム状の通路が先へ続いていた。

通路の先には白い光源が見えるが、光が弱く青黒い靄がかかり霞んでいた。

「た、助けて……」

掠れた弱々しい老女の声が木霊し、正面の方から聞こえてくる。

声のする方に向かうと、肉塊で作られた不格好な案山子が立てられていた。案山子からは変色した多数の小さな手足が出ている。

聴覚を研ぎ澄ますと、案山子の中から無数の子供の悲鳴や懇願、許しを乞う声が小さく、そして折り重なり合うように絶え間なく聞こえてくる。

案山子上部に置かれた老女の頭部は、衰弱した表情で口を開き、こちらに何かを訴えかけてきているようだった。

老女の側に雑に作られた木製の立て看板が置かれていた。


──雑な立て看板。

大好きな子供達といつまでも一緒にいたい。そんな素晴らしい願いを叶えてあげた傑作。

作品番号613。

※糧補充の際は気を失っているソテイラを起こし、たっぷりと糧の可愛い悲鳴を聞かせてあげるように。

そして何より、いつまでもソテイラが長生きできるようにと願う事。

──


この᯼には見覚えがあるな。

「うっ!?」

案山子の正体に気付いたであろうジャスミンが急いで遠ざかっていき、嘔吐した。


その時、離れた場所にある蔓の小さな洞窟らしき場所にある魔法陣が光り、何者かがこちらに向かって歩いてきた。

「やめて! 離して! 離して!!」

子供の声が聞こえてくる。

洞窟から出てきたのは孤児院で会った院長と同じ服を着たハッグだった。ハッグは片手で小さいが肥えた物体を引きずり、もう一方の手でダークエルフの少女の髪を引っ張り、抵抗する少女を引きずっていた。ハッグのベルトには1つの小さな頭部も下げられている。


こちらに気付いたハッグが両手を離し、身構えようとする。

「死ねーー!!」

後方で叫ぶジャスミンから中規模のアイスシャードが複数放たれハッグに飛翔する。

ハッグが変性魔法、恐らく障壁を放とうと魔力を集約させている。

透かさず念動放ち、ハッグを掴み壁に打ち付ける。そのままジャスミンのアイスシャードがハッグの肉体を串刺しにしていく。

有翼を放ち、ハッグの元へすぐさま移動する。

ジャスミンの放ったアイスシャードは先端がハッグの酸液で溶け、ハッグが地面に落ちた。杖から触手を放ち、全身から酸液を垂れ流すハッグを起き上がれないよう抑え込む。透かさず、ハッグの背中から心臓までを手で貫く。

「グァァァァ!!」

悶え叫ぶハッグの心臓を掴み、握り潰す。

ハッグの肉体の力が抜け、地面に酸液が広がっていく。

「逃がさんぞ」そのままハッグの魂を掴み、拾い上げる。青黒い魂が手の中から逃げようと必死に藻掻いている。ハッグの形相を表し、絶え間なく藻掻き続ける「ヌア゛ァ゛ァァァ!」硬いハッグの魂を力を込め、握り潰していく。

「グァァァァ!! グァァァァーー!!」

ハッグの魂にヒビが入ると、すぐに魂が粉々に砕け散った。ハッグの肉体も魂の破壊と共に粉々に飛び散る。割れた魂の中から垂れ出る青く光る液体。液体が手の中から滴り出る。そのまま魂核を吸収していく。

「あぁ〜♪ 美味いな。ハッハッハッ……すーー、はーー」

危ない。自我を保たねば。


ジャスミンの元へ向かう。

「ねえ、大丈夫だから」

「いや! 来ないで!!」

腰を抜かし、背を壁に着け、両足で何度も下がろうとしているダークエルフの少女。

「片付いた」

ジャスミンが安堵した表情で見てくる「良かった。でも……」ジャスミンがダークエルフの少女を見つめる。

「やめて……ぐす、ぐす、お願い……ぐす……」

両手で顔を覆い、溢れるほど涙を流しているダークエルフの少女。

「孤児院で会った、あの3人の子供だな」

「酷い……」

「そうだな。残りの2人は魂ごと食われていた。もう何もできんだろう」

「…………」

「行くぞ」

「待って、この子を置いて行けないわ」

「ママ……パパ……どうして私を1人にしたの……お願いだから助けに来て……お願い……」

「錯乱状態だ。落ち着くまで待っていたら、日が暮れる」

「大丈夫よ」

ジャスミンが前足から茶色い魔法陣を出現させ、ダークエルフの少女に自然の癒しを放つ。

「んっ」少女が泣くのを止め、すぐに立ち上がった「私どうして……あっ、あなた達はあの時の」

「そうだ。君は怪物の院長にここへ連れて来られたんだ」

不安そうに辺りを見回すダークエルフの少女。

「怖い院長は?」

「もういない。俺達で追い払った。君は自由だ」

「ママとパパに会いたい……」

「ここから出れば、いつか会えるかもな」

「どうやって出ればいいの」

魔法陣を指さす。

「恐らくあそこだ。孤児院のどこかに転移できるだろう」

「魔法陣? 凄い! 分かった。行ってみる」

「私も一緒に見てくる。待っててくれる?」

「ああ。この猫が案内してくれるそうだ」

「あなた、ママやパパと同じドルイドさんだったのね。凄い! ありがとう」


ジャスミンとダークエルフの少女が魔法陣の元へ向かい、消える。


案山子の元へ向かう。

ソテイラの白く変色した目を見る。そして掠れた声で嘆き、必死に訴え掛けてくるソテイラの言葉に耳を傾ける。

「あの子を…助けてくれて…ありがとう……あぁぁぁ!! もう……やめて……た……助けて……子供達を……お……お願い……」

一瞬正気を取り戻したかに見えたが、同じ言葉を再び繰り返し始めた。

「呪術を解く事もできる。だがその場合、延命した者達は……」

「もう……やめて……た……助けて……子供達を……お……お願い……」

「…………」

「もう……やめて……た……助けて……子供達を……お……お願い……」

苦痛と絶望、狂乱に陥っているソテイラは何度も何度も繰り返しこちらに同じ言葉を投げ掛け続けてくる。しかし瞳の奥からは何かを必死に懇願しているのが感じ取れる。


ジャスミンが戻ってきた。


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