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コルンナティモラスは強靭な爪でメトゥスの触手を引き千切っていく。
「ギュゥ゙ゥ゙!!」
メトゥスもまた悲鳴を上げ、千切れた触手をしまっていく。
蠢くコルンナティモラスの触手攻撃を避け、コルンナティモラスへ接近した衛兵が触手に明晰の刃を放った。
橙色に包まれた剣が触手を切り裂いていく。コルンナティモラスの触手は引き千切れ、千切れた触手は激しく燃え上がり、赤い灰に変わっていった。
衛兵は複数回の明晰の刃で触手を切断していく。だが1つの触手が衛兵の後方から迫り、触手を切り裂いている衛兵を腹から串刺してしまった
「畜生……」
コルンナティモラスは串刺しにした衛兵を投げ捨て、投げ捨てられた衛兵は近くの建物に激突した。
コルンナティモラスが後方から援護している衛兵達に向きを変えると咆哮を上げ、咆哮で恐怖を受けた衛兵達がたじろいでいる。
衛兵達が放っていたアイスシャードはコルンナティモラスに命中し突き刺さっていたが、突き刺さったアイスシャードはすぐに溶けてしまい、消滅してしまっていた。コルンナティモラスには殆どダメージが入っていないようだ。
コルンナティモラスは再び向きを変え、死の火球を浴びせているこちら目掛け勢いよく迫って来る。
「二度と蘇れないようにしてやる!」
援護する後方の衛兵達の数人は、咆哮による恐怖に耐えられず地面に手を突き、頭を抱え塞ぎ込んでいた。塞ぎ込んだ者の内の1人は、戦技の武者震いを放ち、恐怖を弾き飛ばし、恐怖で怯んでいない他の衛兵達と共に攻撃を続けていた。
その時、肩に衛兵のアイスシャードが突き刺さる。
「くそがっ」
大した規模の物ではなかったが、念動を放ち、アイスシャードを放つ衛兵達の足元を一斉にすくい転がす。
「「あっ!?」」
「「なんだ!?」」
杖から触手を放ち、こちらへ轟音の如く足音を唸り立てるように迫り来るコルンナティモラスの勢いを受け止める。
凄まじい圧が杖から全身に伝わり襲い掛かってくる。
「ぬあぁぁ!!」
両手で杖を持ち抑え、力を込めコルンナティモラスの突進を受け止める。踏ん張る足で地面が割れ、体が勢いに押され後退していく。
「貴様の骨を戦利品にしてやるぅぅ!! グオォォーー!!」
コルンナティモラスの後方から飛び上がった鋼のオートマトンが視界に入る。触手で動きを封じているコルンナティモラスへオートマトンが長大な槍をコルンナティモラスの頭部の根元に横から突き刺した。
「グゥ゙ァァァァ!!」透かさず左側から別の鋼のオートマトンが飛び上がり、長大な槍を振るう。コルンナティモラスは鋼のオートマトンの攻撃を手で防ぐ。だが鋼のオートマトンの槍に付与されていた魔法がコルンナティモラスの守護の障壁を透過貫通し、コルンナティモラスの手の肉を突き刺さし肉を抉り取っていく「グゥァァァァ!!」
悲鳴を上げ、のた打ち絡まった触手から逃れようと足掻くコルンナティモラスを目一杯の力で押さえ付ける。
コルンナティモラスは手に槍を突き刺した鋼のオートマトンが着地すると手で掴み、握り粉砕すると遠くへ投げ捨てた。
もう一体の着地した鋼のオートマトンをコルンナティモラスは反対の手で地面に勢いよく押さえ付け粉々に粉砕した。
長大な槍から爆弾のタイマー音が鳴り響くと、槍が爆発した。辺りに爆発で粉砕したコルンナティモラスの肉片が飛び散っていく。飛び散った肉片は燃え上がり地面を黒く焦がしていく。
「うぅ……」
片手で杖を押さえ、反対の手で中型の死の火球を使者の抉れた肉体へ放つ。
「グッ! グアァァァ!!」
こちらの後方から触手が伸び、コルンナティモラスの押さえつけを助力してくる。
復帰したメトゥスが側に来る。
メトゥスに頷き、メトゥスが頷きを返す。
メトゥスと共に死の火球を抉れた部分へ浴びせ続けていく。
地面のタイルが割れ、露出した地面の土を抉り、激しい粉塵を上げながら触手の拘束に抵抗するコルンナティモラス。
投げ飛ばされた鋼のオートマトンが衛兵達の念動で壁にぶつからず地面へゆっくりと降ろされていた。
多重する高音の笛音が聞こえてくる。
多数の衛兵と鋼のオートマトンが次々と駆けつけて来た。
杖を持ち、他の衛兵とは兜の形状、鎧の色が異なるドワーフがマジックオーラを放ち、続けざまに浄化を放ってくる。
自身、メトゥス、周囲の衛兵達の足元に白い魔法陣が出現し、各々を追従し始めた。
コルンナティモラスの咆哮で塞ぎ込んでいた衛兵達が浄化で恐怖が消滅し、立ち上がり再び武器を握りしめ、コルンナティモラスへ身構え始めた。
「散開!」
杖を持ったドワーフが叫び、衛兵達が素早く間隔を空けて広がっていき、後方からクロスボウを構えた衛兵らが整列する。
杖を持ったドワーフが杖を輝かせ、癒しのオーラを放つ。
円形の黄色く輝く魔法陣が現れ、魔法陣内にいる衛兵達を黄色いオーラで各々包んでいく。魔法陣はその場でゆっくりと時計回りに回転し、治癒効果を放ち続けている。
広がり迫る魔法陣。
「メトゥス」
「キュル」
メトゥスと共に魔法陣を避け、後方へと下がる。同時に大規模の死の火球を一発コルンナティモラスへ放つ。
不安定な形状だが、コントロールと規模を失うことなく、コルンナティモラスに命中した。
「グゥァァァァ!!」
死の火球と治癒のオーラを受けたコルンナティモラスが苦痛に満ちた悲鳴を上げる。
後方で全身の毛を逆立たせ、尾を立て力を溜めているジャスミンが中規模のアイスシャワーをコルンナティモラスに放った。
コルンナティモラスの上空に大きな青い魔法陣が出現し、中型の氷柱を多数降らせていく。
コルンナティモラスに鋭利な氷柱が次々と突き刺さっていく。
燃え滾る死の炎が、ジャスミンの放つアイスシャワーの影響で氷炎へと変化していき、コルンナティモラスの肉体を容赦なく燃やしていく。
「やるな。ジャスミン」
「はぁ、はぁ…と、当然でしょ」
少し疲労の表情を浮かべるジャスミン。
弱るコルンナティモラスに衛兵達が放ったボルトの雨が飛翔し、次々とコルンナティモラスの肉体へ突き刺さっていく。
更にボルト先に付けられた爆弾がタイマー音を立て、次々と起爆していく。
爆発と共にコルンナティモラスの肉片が飛び散ってくる。
息を整えたジャスミンが側に並び、立てた尾の先から青い魔法陣を出現させ、中規模のアイスシャードをコルンナティモラスへ多数放ち始める。
「女王陛下! 遅ればせながらこのサムめも加勢致します!」
茂みからサムが飛び出し、二足で立ち前足から小規模の闇の火球をコルンナティモラス目掛け放っていく。コルンナティモラスを覆う炎は、死、氷、闇、三種の炎が淡さっていき、混沌の炎へ変化しコルンナティモラスの体を燃やしていく。
「イーハー! シルバー!」
高揚に満ちたサムは飛び跳ねながら叫び、続けざまにブラッドチェーンを放った。
黒い闇のオーラを帯びた鎖がコルンナティモラスへ突き刺さり、燃え滾る赤い血が鎖を伝いサムの元へ脈打ちながら吸収されていく。
コルンナティモラスのヘルブラッドを吸収していくサムの目が赤く光り始めた。
サムが二本の牙を伸ばし、魔法を放つジャスミンの方を向くと襲い掛かった。
「サム!?」
ジャスミンが驚きサムの方を向く。
サムの牙がジャスミンの体を貫くよりも前に骨の揺り籠をサムに放ち閉じ込める。
骨の揺り籠に閉じ込められたサムは必死に骨に食らい付き、牙を剥き出している。
「一体どうして?」
「ジャスミン、サムの事は後だ。先に奴を片付けるぞ」
「そ、そうね……」
「グゥ゙ァァァァ!!」混沌の炎、そして多数の爆発ボルトを受け、ようやくコルンナティモラスが地面に倒れた。
「うぅ……あっけない最期だ……」
「撃ち方やめ!」
杖を持ったドワーフが叫ぶと、射手達が一斉に射撃をやめクロスボウを下げた。
戦いの音が鳴り止み静寂が訪れた。




