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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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干渉を排除し、見覚えのあるシルエットが見えてくる。

ドアを念動で開く。

「いっ!?」

ジャスミンが前へ倒れ、慌てた様子ですぐさま起き上がった。

再び念動でドアを閉じる。

「ジャスミンか?」

本物のようだな。

「良かった。いてくれて」

「どこにいても、においで見つかるようだな」

「まあね~!」尾を立て優雅に靡かせるジャスミン「あっ、そんな事より助けて欲しいの」ジャスミンは上げた尾を下げる。

「どんな事だ?」

「歩きながら話すわ」

ジャスミンが尾先を左右に動かす。

「メトゥス」

「キュル」

メトゥスをロレンツォの元へ向かわせる。

メトゥスは地下からすぐに戻り、メトゥスと共に、焦り落ち着きのない様子のジャスミンの後についていく。

「随分と慌てていたようだが」

「ケリーがどこにもいないのよ」

「街を出たんじゃないのか?」

「そんなはずない。孤児院にあるケリーの荷物は、まだ残っていたもの。それに何も言わずに出ていくなんて変よ」

「確かに妙だな」

「居場所を聞こうにも、私じゃ無理だから。でも……」

「落ち着け。大丈夫、手伝おう」

「ありがとう」


ドワーフ衛兵が立ち話をしている。

「いつまでこんな状況が続くと思う?」

「分からないさ」

「ウルカヌスは俺たちを見捨てたのかもな」

「罰当たりな」

「お前だってもう分かっているだろう」


スラムにほど近い街の外周付近に建てられた古びた聖堂へ着く。

光輝の気配どころか、妙な気配が漂う場所だ。

「聖堂が孤児院とはな」

「ええ。ついてきて」

ジャスミンが先に聖堂の敷地へ入っていく。

白くうす汚れた低い壁に囲まれた聖堂。聖堂屋根の黄土色瓦は所々剥がれ、苔が蔓延っていた。正面にある聖堂へのタイルは古び、雑草が隙間から無造作に伸びている。

右側に広がる聖堂の庭は雑草で荒れ果てており、中央にあるクニナの像は顔が半分割れ、植物の蔓に覆われている。

聖堂正面のドアは解放されており、中へ入ると内部は古びた木造作りになっていた。

建物内右側、ボロ服を着た様々な種族の労働者が繊維関連の作業を黙々とこなしている。

ジャスミンが左側へ向かっていく。軽く見回した後、ジャスミンに追従する。

古びた様々なテーブル、丸椅子が置かれた場所を進み、突き当たり右側の部屋へ入っていくジャスミン。

共に部屋へ入る。

部屋へ入ると多数の子供達が走り回り遊んでいた。

人間の子供が大半を占め、ドワーフの子は1人も見当たらない。ダークエルフの種も割りといる。

「ドワーフがエルフの子を受け入れているとはな。奇妙な物だ」

「ドワーフは帝国の事で忙しいから。まあ、エルフに奴隷にされた過去を完全には忘れていないだろうけど、ここはわりと安泰よ」

ケリーの寝床らしきベッドでジャスミンが足を止める。

「ちょっと待ったぁー!!」

ジャスミンと俺が振り返ると、3人の子供が横並びに立っていた。

中央の肌の白い人間の少年はボロ布を外套変わりに、ボウルを兜、木の棒を腰に差し、腕を組み胸を張っている。

右の褐色のウッドエルフ少女は木剣を持ち、こちらを威圧するように反対の手の平に棒を当てている。

左の灰色肌でそばかすのあるダークエルフ少女は、目線こちらに合わせず装飾した木の枝を弱々しくこちらに向けてくる。


「それで偉大なる神々よ。我々に何か御用ですかな? (呆れ)」

「よく分かったわね。まあこの私の可憐な衣装センスのおかげね」

自身の胸に片手を当てるウッドエルフの少女。

「なに言ってる! 俺のおかげだろ!」

「わ、私も」

怯えた様子で小さく挙手するダークエルフの少女。

「なんですって!? よくもまあ」

「お前こそいつも!」

「わ、私も」


「ジャスミン。荷物は探ってみたのか?」

「いいえ、まだよ。窓から確認しただけだから」

「じゃあ調べてみるか」


「あっ!? おい! そこはケリーの物だぞ! 勝手に触んな!」

振り向くと、こちらを威勢よく指差している少年。

「痛い目に会いたくなかったらさっさと消えることね〜」

ウッドエルフ少女がこちらに木剣を向けてくる。

「よ、容赦は……し、しませんよ」目を合わせようとせず、震える手で枝を向けてくるダークエルフの少女「さもないと……さもないと……えっと……この後何だったっけ?」

「おい、そこはしっかり決めるところだろ」

「そうよ!」

少年が片手で口を隠し、ダークエルフ少女の方を向き小声で話す。

「そ、そうだった……。ご、ごめん……」

涙を浮かべ泣きそうになるダークエルフの少女。


「俺達はケリーを探している。何か知らないか?」

呆然とし、お互いに目を合わせる子供たち。

「知らない」

「知らない!」

「うぅん……」

俺と何度か視線を合わせるが、すぐに反らすダークエルフの少女。何かを訴え掛けるように見える。

少年が一歩こちらへ近付く。

「そんな嘘に騙されるか! 何度も同じ事を言わせるなよ。ここはケリーの……」

太った少年が急いで3人の元に駆け寄ってくる。

「おい! 魔女が戻ってきたぞ!」

「や、やばい」

「早く行きましょ!」

「あ!? ま、待ってよ!」

子供達は急いで奥の部屋へ去っていった。

人間の老女が部屋に入ってくると、一瞬険しい表情をした後、笑顔を作りこちらへ向かってきた。

「これはこれは。当院に何かご入り用ですか?」老女はシワを寄せ、目一杯の笑顔を見せてくる。

「ケリーという子を探している。何か知らないか?」

「衛兵の方? ならもう話したと思いますけど」

「衛兵に見えるか?」

「ではケリーをお引き取りで? 聖堂の地下で書類に署名頂ければ直ぐにでも引き取って頂いて結構ですよ。ですが、あの子は少々厄介ですよ」

「居場所について聞きたい。何か知らないか?」

「冷やかしならとっとと帰って。あたしゃ、うるさいガキ共の世話で忙しいんだ」

老女は床に唾を吐き捨て、子供達の逃げた奥の部屋へ向かっていった。

「相変わらず嫌なお婆さんだわ」

「知っているのか?」

「ここの院長よ。子供達に食事だけ与えて後はほったらかし。浮いた支援金を全部懐に入れているって噂」

「なるほどな」

「以前はそんな事なかったのに……。そんな事より、ケリーの手掛かりよね」

ケリーの荷物をジャスミンと共に探る。

「院長の話じゃ、衛兵も探しているようだが」

器用に前足と尾を使い荷物を探るジャスミン。

「どうせ建前だけよ。孤児の子供なんて気にも留めないわ。連中が興味あるのは貴族の子だけ」

「世の常だな」

死霊術関連の書物が何冊か出てきた。

学びはそれなりに得ていたか。

「ケリーは勉強熱心でしょ」

「のようだな」

丸められた羊皮紙を手に取り広げる。

絵か。見覚えがあるな。

ルインの店で見た事のある絵の1つだ。

「これといって手掛かりになるような物は何もない。そっちは何かあった?」

絵をジャスミンに渡す。

「少しな。だが確信は得られん」

「あの〜……」

赤い髪をした若い人間の女性が話し掛けてきた。

茶色く古びた服を着た女性は裾を握り締めていた。

「何か用か?」

「ケリーの親族の方ですか?」

「いいや。だがケリーを探している。心当たりはあるか?」

「あぁ……その……」

子供達のいる部屋の方を気にしている女性。

「静かに話せる場所はあるか?」

「もちろん。こちらです」

まるでこちらの返事を待っていたかのように案内する女性。

ジャスミンと共に女性の後を追う。

女性に付いて行き聖堂端の部屋へ入る。

女性は素早くドアを閉め、テーブルに急ぎ、引き出しを開けて魔道具を取り出し、白い石の魔道具を発動させた。

「これでいい」

「ふむ。それで、君は?」

「私はここで子供達の面倒を見ている助手のマリアと言います。子供達を院長から守っていると言ってもいいかもしれません。力にはなれていないんですけど……」

ジャスミンを見る

「嘘は言ってないわ。院長の彼女への扱いも酷いものよ」

酷く怯えた様子で話しを続けるマリア

「ケリーは院長が連れ去ったと思います」

「根拠は?」

「その……院長はなんていうか……変わったんです」

「魔女か?」

「そう! あっ……抽象的な意味でです。嘘じゃないですよ。誘拐には絶対院長が絡んでいる。それは間違いないです」

「迷信だとは思わん。そういう知識には長けている方だ」

「衛兵の方々のように、馬鹿にして帰ってしまうかと恐れていたんです」

悪意は感じないが、何か隠しているな。

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