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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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地下へ向かうロレンツォに追従する。

地下に向かう階段には精巧な魔道具で障壁が折り重なり張り巡らされており、ロレンツォが黒い手が象られたペンダントをポケットから取り出し壁の所定置に翳すと、ロレンツォが障壁を透け通っていく。

「あんたは大丈夫なはずだ」

そのまま障壁を通り抜けロレンツォに続く。


ロレンツォが静かに指差す方を見ると、椅子に座り、テーブルで何かを熱心に書いているスケルトンが目に入った。

スケルトンが振り向く。

「パパ。何かあったの? えっ、スケルトン!?」

スケルトンが慌てた様子で立ち上がり、急いで目の前まで来た。

こいつはスケルトンじゃないな。なんだこの不明瞭な魔法は。なんこも痛みは…。

「うっ!」

「大丈夫か!?」

「わ、私…なにか……」

「いいや。持病だ。それに俺はスケルトンじゃない。お前と同じで喋れるし、明確な意思もある」

「リッヂなの!?」

「そういうお前も同じなんだな」

「なあ、だから言っただろアンナ。お前はスケルトンではなくリッヂだと」

「でも私はヴォイドに会ってないわ。ヴォイドの祝福も受けていない。呪術で変異しただけの醜いアンデッド。誰かに操られているだけ」

呪術を知っているのか。今は主流なのか。

「そうは思わんがな」

「あなたもヴォイドに会っていないんでしょ? きっと、あなたも操られているのよ」

「ま、まあアンナ。パパはこちらの方と大事な話がある。少し、待っていて落ち着きなさい」

「大丈夫よ。パパ」

アンナはテーブルへ戻り、座り再び書き記しを続けた。

奥にある部屋に行き、俺が部屋の中央まで先に入ると、ロレンツォがドアを閉めた。

「言わなくてすまなかった。だが、どう思うか聞いてみたかったんだ」こちらを振り向いたロレンツォは驚き、ドアに後頭部をぶつけた「メ、メトゥス!?」

「キュル」

「これでまたお互い様だな」

「あぁ……そうだな」

姿勢を戻すロレンツォ。

「目玉は苦手か?」

「笑える。やっぱりただのリッヂじゃないんだな。一体何者なんだ?」

「それはこっちが聞きたい。だが先に答えよう。実はこのメトゥスの操り人形でな。自分で自分が何をし、話しているのか時々理解できなくてな。困ったものさ」

人差し指と親指で指輪を持ち顔の横に掲げる。メトゥスが後ろから触手伸ばし受け取る。

「それは深刻そうだな……」

「そうでもない。冗談が通じない奴は多いからな」

「アンナの件はすまない。良かったら聞かせてくれないか?」

「あれは、かなり妙だ。本当にお前の娘か?」

「なんだって?」

「つまり…」

「いいや。そんなはずない」動揺し、俯き、顔を上げロレンツォが迫ってくる「あのアンナは本物だ! 偽物な訳がない!!」

「落ち着け。可能性の1つを言っただけだ」ドアを見る「本人も気になるようだな」

ロレンツォが後ろへ行きドアを開ける。

「あっ……」

それほど表情という表情はないが、気まずそうにしているアンナ。

「アンナ、向こうに行ってなさい」

「は、はい」

テーブルに戻っていくアンナ。

ドアを閉め、ロレンツォが再びこちらに来る。

「あんただけが頼りだ。頼む」

「条件次第だ」

「具体的には?」

「それはお前の能力次第だな」

「資金面か? 今までこの職で食ってきたんだ。問題はない」

「ふむ。その心配はしていない」

「そうか。それで、具体的に私に何を頼みたいんだ?」

「この街を統治する際、財に精通する者が必要だ。俺は数字に疎くてな」

「統治……」

少し驚いた表情を見せるがすぐに表情を戻すロレンツォ。

「虚言に聞こえるかもしれんが、俺は本気だ」

「わ、分かった。手を組む」

「まずは上の装備を何とかして欲しい。俺にとってはガラクタだ。今は手持ち無沙汰でな」

「何とかしよう。当面の資金も用意する。他には?」

「政策への考えはあるが、最終調整はお前の意見を聞きたい」

「分かった。忙しくなりそうだな」

「そんなに恐れるな。俺は細かい事は差して気にしない。大抵の仕事さえこなしてくれれば、不満はない。それと、野暮用がいくつか残っている。それらが片付くまで。準備だけはしておいてくれ」

「そうか。具体的に最初は何に取り掛かるんだ?」

「ちょっとした要塞に、防衛兵器。転移門を作る為の資材に、街の改修。兵士の装備諸々だ」

「戦争でも始めるつもりなのか?」

「もう始まっているさ」

「…………」

「時が来たら呼ぶ。アンナの件に取り掛かろう」

「分かった。アンナは……一体どうすればいいんだ? まったく見当がつかない」

ドアへ向かう。

「情況次第だな。まずは事情を。それから真相を探す。一緒に来てくれ」

ドアを開けるロレンツォ。

椅子に座ったまま体を捻り、こちらを向くアンナ。

「パパ。言いつけ通りしっかり離れてたわよ」

そして座ったまま椅子を動かしこちらを向く。

「あぁ……」

「アンナ、俺がお前について調べる事になった。まずはリッヂなった経緯を聞いておこう」

「う~ん……」

アンナの緑に光る目が下を向き、口籠るアンナ。

ロレンツォはアンナを見つめたまま何も言わない。

「脅迫されているのか?」

「いいえ! 私が……悲しんでいるパパを喜ばせようと思って、勝手にパパの書斎の本を漁っていたの」

「1人で行くなと言ったのに……。どうやって中に? 喜ばせるって、一体」

「ロレンツォ、それは今どうでもいい。アンナ、続けろ」

「隠されていた死霊術の本を見つけて、古文書にあった記述を頼りに読み上げたの。そしたら急に緑の光に包まれて……」

「リッヂになった」

「そう……」

「実は解こうとしたんだが……駄目だった。力不足で。それに強力な魔法だと塵になるかもしれないと思ったんだ。無茶はできなかった」ロレンツォは悲しい表情を浮かべ、拳を強く握り締めている。

「良い判断だった。その本を見せてくれ」

「ええ!」

「アンナ! ここで待っていろ」

「だってパパはある場所知らないでしょ?」

「ここで待っていなさい」

「は、はい…」

「書斎は2階だ。案内しよう」


ロレンツォと共に二階へ向かう。

「その本についてはどれぐらい知っている?」

「実は殆ど知らないんだ」

「じゃあアンナの話は本当か」

「私が馬鹿だった。あんな危険な本があっただなんて」

「ここはお前の家じゃないのか?」

「いいや。正確には……。ここは元々支部の避難所だった」

「なるほどな」

「私がネクロマンサーとして未練が残っていたばかりに……娘を危険に晒してしまった。さっさと諦めて、別の人生を歩んでいれば……」


二階に上がるとロレンツォが茶色い木製ドアに掛けられた饕餮の封印を解き、開ける。

アンナはこれを開けたのか。一体どうやって。

微かに闇の痕跡が残っているのが感じ取れたが、すぐに消滅してしまった。


書斎には多くの本棚が綺麗に並べ置かれ、本棚には多数の本が整頓され収納されていた。

一先ず、妙な気配はないな。


ロレンツォの後に続き、中央の本棚に囲まれた円形の中央を通り、部屋の奥へ向かう。

部屋の奥には黒く上質な木製の丸テーブルが1つ置かれ、テーブルの上には分厚く古びた一冊の本が置かれていた。

「アンナが見つけた後、ここに置いたんだ」

「触れても問題なかったのか?」

「一応できる限りの対策はした。その上でなら、大丈夫だった」

古びた本は全体的に黒み掛かっており、表紙は何も書かれていなかった。

見たはずがない。だが見覚えがある気がする。

古びた本を取り、表裏を観察する。「特に、変わったところはないようだな。だが何か……妙だぞ」本にしては、やけに軽い。まるで空洞だな。それに……これはまさか「罠だ。今すぐ部屋から出ろ!」

「えっ!?」


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