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「意外と門が多いから、バリスタでも揃えて、開けた奴を狙い撃ち。なんてのもいいかも」
「門に毒を塗っておくのは?」
「それだと引火するんじゃん」
「燃え落ちない門にしたら」
「それいいかも」
まだ日は昇っていないが、空が明るくなってきた。
山積みの死体の前へ立つ。
今度は大丈夫だろう。
「マーラ、離れろ」
「力が戻ったから、何かできるようになったの?」
「見ていろ」
昔の感覚通り、力を研ぎ澄まし、集中する。
…………。
「…………」
「…………」
「死体が残ってて良かったわね」
「邪魔が入らず幸いだった」
…………。
「…………」
マーラがあくびをする。
山積みの死体にヴォイドの誘いを放つ。
「それで~……」
マーラが眉をひそめる。
マーラの表情が少し気掛かりだな。
周囲に緑の死の落雷が発生し、突風が巻き起こる。
周囲の死体が突風でミンチになっていき、渦巻く風で細かく刻まれ、ミンチになった死体の山が中央に集まっていく。
渦巻く突風の中から大きな足元が聞こえ。落雷と突風が収まる。
空気を揺らす低い咆哮を上げ、姿を現すアンデッド。
「はぁ~、上手くいったな」
2つ足に六本腕の巨体アンデッド。
記憶通り、腕、足は何重にも折り重なる長骨で形成され、全身は多数の小さな頭蓋骨が折り重なり形成されている。
全ての頭蓋骨がカタカタと音を鳴らし、両目を緑に光らせ始めた。そして頭蓋骨が一斉に音を鳴らすのをやめた。
離れていたマーラが側へ来る。
「ボーンゴーレム…。まさか……わお」
呆然とボーンゴーレムを見上げるマーラ。
「こいつに見合う装備が必要だな。どうだイエナ」
「素晴らしいです。蜘蛛のように大きいのですね」
「ふむ。マーラ、取り敢えず拠点の門番にしておけ」
「そ、そうね。2つ目の門がいいかな?」
「ああ」
拠点をマーラとイエナに任せ、街へ向かうか。
メトゥスにデュラハンを担がせる。デュラハンを触手で絡らめメトゥスが宙に浮く。
有翼を放ち、飛び立ち街へと向かう。
「大丈夫か?」
「キュル」
飛行していると、遠くに見える山脈に隠れていた太陽が姿を見せ、光が視界を覆っていく。
「あまり無理するなよ。久しぶりの光は堪えるぞ」
「キュル」
飛行しながらロクスソルスを眺める。
「見えるかメトゥス。良い街だ」
「キュル~」
「だがデーモンに魂を握られている者で溢れている。それでなくとも、行き着く先は浅はかな欲深い連中の元だ」
抑圧された魂の深淵から漏れ出る意識が無意識に言葉として口から解き放たれるようだ。
「キュル」
「哀れだと思わんか。真実を知れば、誰もが神に祈りなどしなくなるだろう」
「キュ」
メトゥスが目線を左上へ向ける。
何故か湧き出る感情が抑え切れない。
「祈りなど必要ない。行き着く運命は決まっている……」
…………。
「キュル?」
メトゥスがじっとこちらを見つめてくる。
我に返る。気のせいか。
「降りるぞ」地上へ向け滑空する「止まれ。大した事のない兵士とバリスタだけだが、念は入れておこう」
不可視化、精霊のベールを放つ。
「キュル!」メトゥスも不可視化、精霊のベールを放ち、デュラハンを触手で覆い被せていく。
「ほお、流石だな」
地上へ降り立ち、念動を使い再びマンホールを合わせ地下へ戻る。
同様にレバーを引き、入り口を閉じる。
「メトゥス。お前のお陰で、この煩わしさからも一早く解放されそうだ」
「キュル」
「デーモンとて、お前を知る者は限られているはずだ。頼りにしているぞ」
「キュル」
ヘルの賑やかさはこの淡い希望にも拍車を掛けてくれる事だろう。
壁の前へと着く。
「警戒しろ」
「御意」
デュラハンが盾を構え、もう一方の手に持つ槍先で壁を軽く叩く。壁の奥から足音が聞こえ、レバーを引く音と共に壁がスライドしていき…………モートが出迎える。
「変わりないようだな」
「ガル!」
中へ入り、モートがレバーを引き壁を閉じる。
「デュラハン、お前はここで待機していろ」
モートがデュラハンの鎧をつつき、デュラハンがモートを見る。モートが手にトランプを持ちデュラハンに手渡している。
奥の粗末な寝床に足を伸ばし座っているデスフラワー達がトランプ片手にデュラハンに短い手を振っている。デュラハンとモートがデスフラワーの元へ向かっていった。
「トランプを楽しめ」
4体のアンデッドはトランプを始めた。
「メトゥス。俺の背に張り付き、荷物を支えろ」
「キュル」
運び入れた大きな布袋。剣が上部の結び目から出ている。メトゥスが触手を伸ばし持ち上げ、そのまま俺の背と布袋の間に身を潜めた。
「上出来だな。この指輪を持ってろ」
メトゥスが触手を伸ばし、指輪受け取り体の奥へしまい込んでいく。
さて、資金調達に取り掛かるか。
階段を上がり、廃れた小さな家屋を通り、外へ出る。
そのまま廃地区を抜ける為スラムを通り、中央街を目指す。
廃地区の寂れた家屋には同様のビラが多数貼られ、風が朽ちかけた大量のビラを靡かせていた。
避難民や浮浪者はまだ寝静まっていた。
「ギュル」
「こんな奴らをアンデッドにしたところで、無駄な浪費にしかならない」
「ギュル」
「喰いたいのか?」
「ギュル」
「抑えろと言っただろ」
「キュルル…」
心情とは裏腹に、メトゥスの行動に嫌悪感は不思議と抱かなかった。




