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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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「な、なにやってんだ…。頼む化け物にはしないでくれ。そ、それにあんたにとっちゃ俺なんて、カ、カスも良いとこだ。あんたの貴重な力が無駄になるだけだ。そ、そうだろう? なっ?」

「…………」

「何とか言ってくれよ」

「なぜ嘘をついた?」

「う、嘘だって? お、俺は何も……」

ゲイグは視線を反らし合わせようとしない。焦った様子で目を泳がせている。

「ネクロマンサーを目指してたって? なら今からアンデッドに変え、お前の願いを叶えてやろう」

「やめてくれ! わ、分かった…。お、俺は……そうだ。ディスコルディアの信者だ」

「ディスコルディアは常に生け贄を求める。街のどこかに祭壇があるはずだな? 言え」

「それは知らない!」

「デュラハン」

デュラハンがゲイグに迫る。

「ほ、本当だ! 俺はただの下っ端。んだが街で従順に殺し回ってる奴がいるのは知ってる。そいつなら祭壇の在りかも…」

「今すぐ改宗しろ。さもないと」

「分かった。分かった。するよ! だから俺の魂を奪わないでくれ」

デュラハンに合図を送り、下がらせる。

ゲイグは走り去って行くが、腰が抜けていたのか何度かこけながら慌てて出口へ向かっていった。


「どうして彼の信仰が分かったの?」

「ただの直感だ。全てが分かっていた訳じゃない」

「遺跡で会った時、私の魂も覗いた?」

「いいや。奴と違い、お前には興味を抱いた。ネクロマンサーの素質があり、窮地を救ってもらった。間違っていなかったな」

「結果オーライね。それで、ディスコルディアって?」

「そんな事も知らないのか…。殺戮の女神。とにかく注文に煩い神だ。要求通りの殺し方をした生け贄を捧げないと酷く機嫌を損ねる」

「イカした神ね」


上階に戻る。

「貴方が良い状態の死体を寄越せとか、死霊魔力を勝手に取るな。って言うみたいなもん?」

「あぁ…。多分な」

適当に相槌を送る。

「良かった。知らなくて。面倒くさそうな神だもん」

「だが信者は猟奇的な殺しに快楽を得るんだ。しかもそれで神が喜び、恩恵が貰える。この上なく幸福だろう」

「あ~あ! 持ちつ持たれつなのね。指のおかげで記憶は戻ってきたの?」

「一部は…戻った」

「本当? 良かったじゃない! 全然喜んでいなさそうだったから、敢えて聞かなかったのに。その記憶、聞いてもいい?」

「まあ色々あるが。俺は何か、大きな事を計画していたようなんだ。詳細までは分からんが、だがそれを良しとしない連中がいたのかもな。それで俺をこんな目に合ったと」

「ふ~ん。他の部位も取り戻せば、もっと記憶が戻る?」

「それと力だ」

「力?」

「取り戻した指のおかげで烙印魔法。虚無の誘いを放てるようになった」

「読んだことがある。魅了と似て非なる……何たらカンテラ」

「う~ん」

「たしかアンデッド退散も無力化するのよね」

「その通り。お前も冴えてきたのか?」

「まあね。アンデッドなのに肉体を取り戻すなんて、不思議ね」

「俺の肉体と決まった訳じゃない」

「どっちにしろ。凄いじゃん。あ~、未知の事って大好き」

「ブラックハンドを再建したいと思うか?」

「いいえ。でも新しくしたい。ヴォイドを信仰しないブラックハンドとか。もう神の気紛れに振り回されるのは嫌だから」

「奇抜だな。だが無理だろう。ヴォイドあってのアンデッド。ヴォイドの力が無ければ非力だろう。ヴォイドの事は心底嫌いか?」

「大嫌い。でも、まあ言われてみれば確かにそうよね。ディスコルディアと一緒で向こうも持ちつ持たれつでしょ。それにホノースやウィルトゥースだって昇華できたんだし」

「昇華は神の助力が無ければ難しい。なぜそんな話になる?」

「別に」

「ふ~む」

「ンフフ、死んだらヴォイドに詰め寄って、絶対に私をリッヂにさせてやる」

「良い粋だな。ヴォイドは神の中でラフだと聞くし、案外気に入られるかもな」上階に着く「感じるか?」

「ん~?」首を軽く捻るマーラ「う~んうん」首を左右に振る。

「上だ」

「上?」マーラが上を見上げる「イエナ!?」

蜘蛛が糸を垂らし地面に降りてくる。背中にはイエナが乗っていた

「バレないと思ったんですが」

「マーラは気付かなかった。牢の連中は全員出たか?」

「はい。それと入り口を蜘蛛の糸で塞いでおきました」

「上出来だ」

マーラが短い髪を顎で束ねる。

「イエナも成長したね~。お前さん」

「それは?」

「小さい頃、こうして良く遊んでたの」

「ふむ。イエナは従属の指揮を執るのに憧れてる。いずれアンデッド部隊を与え、指揮を任せるつもりだ」

「イエナはアンデッドの治癒もできるし、ピッタリね」

「ふむ。お前への褒美の件だが、この拠点はいずれお前にやる」

「そう…」小さく頷くマーラ「え!? 本当に?」

「今はまだだが、いずれお前の好きに使うといい。改修費用も出してやる」

「わお。ありがとう。でも、気が早すぎない?」

「メトゥスのおかげで街を統治する目処が早まった。この街なら資源に困らんし、色々とルートに当てがある。だが、独房より先には行くなよ。なぜか闇が残っていたからな」

「マジで本当にやるつもりなんだ」マーラが遠ざかり歩きながら下を向き、なにか思い更けているようだった「わお…」


「イエナ」

地面を二度指差す。

イエナが蜘蛛から降りる

「はい」

「俺を救った褒美として、この拠点をマーラに与えた」

「うわ!」マーラの方へ嬉しそうに振り向くイエナ「やったじゃんマーラ」

親指を立て、イエナにウィンクするマーラ。

「拠点の守りをマーラと共に固めろ。まあ、大抵の事は好きにして構わん。資金が必要な物に関しては、後日な。今は取り敢えず、周辺の森で魔物を狩り、ここに集めろ。頭数が必要になる。アリゲーター、バジリスク、蜘蛛を残す。好きに使え。だが拠点の守りを忘れるなよ。スケルトンは入り口を見張らせておく」

「分かりました」

「桶っ」

「期待を裏切るなよ。それからもう1つ。ついてこい」

出口へ向かう。



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