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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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デュラハンが片手で槍を滑らせ、槍の中心を持ち、大きく槍を掲げる。もう一方の手に掴むルイン目掛けて振り下ろした。だがデュラハンの槍をマーラが短剣で弾き、デュラハンの槍は地面を抉り突き刺さってしまった。突き刺さった槍をイエナが杖の蔓で抜けないよう覆ってしまう。

「何の真似だ(殺意)」

「それはこっちのセリフなんだけど。いきなりどうしたの? いつもの冷静さは?」

訴えかけるマーラの目を見る。そのままじっとマーラの目を見つめると魂の荒波が収まっていく。

まるで酩酊だな…。


〘⇄〙再び本能に従うか。このまま荒波が収まるのを待つか。


「あぁ……マーラ」

「だっ!!」ルインが服を引き千切り、猛進し出口の方へ逃げて行ってしまった。

俺に身構えているマーラ。

デュラハンが命令を待つかのようにこちらを向く。

首を振り、デュラハンに不要を伝える。それを見てマーラとイエナが武器を収めた。デュラハンが蔓の解かれた槍を地面から引き抜き、一歩下がる。

「はぁ〜、すまないな。確かに冷静さに欠けていた」

立ちすくむ2人の間を通り、フロアの奥へ向かう。


フロアの奥、更に地下へ続く階段が見えた。階段の先は黒い霧に覆われ先は見通せない。

「仮面を着けても何も見えない」

「さっきの事は謝る」

静かに頷くマーラ。

「もう大丈夫って事?」

「いいや。まだ何か妙な感覚が残っている。この階段の先から感情を奮い立たせるような何かを感じるんだ」

「待ってた方が良い?」

「ああ。それと俺が帰ってきて妙な行動をしたら、逃げるか。その短剣で迷いなく斬れ」

小さく頷くマーラ。

階段を降り、追従してくるデュラハン

「お前も残れ」

デュラハンが戻っていく。

近付くと闇を感じる。

「これは本物の闇だ。絶対に来るなよ」

「桶。いってらっしゃい。気を付けてね」

生者の身のマーラなら一溜まりも無いだろう。

僅かだが先が見えるな。闇の濃度自体はそこまで高くないようだ。だが一体何故こんな所に闇が。


長い階段を無事降り終える。

ここが一番下か。

最下層フロアの奥を進んでいく。

相変わらず闇が漂っているな。ただ漂っているだけか。それともどこかから流れ来ているのか。

奥へ進むに連れ、上階ではまったく聞こえなかった地響きが次第に大きく聞こえてくる。

通路の突き当たりにあるᬀの紋章が刻印された装飾ドアを開く。

開ける際に勝手に手が緑に発光し、ドアが力を加える事なく独りでに開いた。

ドアを開けると部屋の中は凄まじい落雷の音が響き渡っていた。

緑の死霊を帯びた稲妻が中央の台座を中心に周囲に何度も落ち、また部屋の床は多くの骨で埋め尽くされていた。

台座の上には荘厳な箱が置かれている。部屋の中へ入り中央の台座へ向かう。

音を立て骨を踏み歩く。骨は多量の緑の死霊液で満たされていた。

歩いていると頭蓋骨に衝撃が走る。落雷が直撃したようだ。この落雷は実に心地良い。

中央の台座まで着く。

荘厳な箱の側には羊皮紙が置かれていた。数枚の羊皮紙を手に取り読む。


──死霊魔力を帯びた羊皮紙。

我々の勝利は目前。

全ての者達がヴォイドに恐れを慄き、跪く事となる。

しかしこれは始まりに過ぎない。ただの回帰でしかない。

──

──死霊魔力を帯びた羊皮紙2。

私は正しかった。あの時、凡庸な魔術師に身を窶したリーケン師に弟子入りした事。なにより自らの才を信じた事も。

師よ。いま私は無事試練を終えリッヂへと身を変えました。それもアークリッヂとなり、師の前で恥じぬアンデッドへと。

これも全て師の力添えあっての事。


しかし今尚、この体を更に昇格させる事は叶っておりません。何れ師である貴方が戻り、再び側で仕えられる事を願っております。その時は更なる精進も。


頂いた神性なる物は些かばかり予想外の物ではありました。しかしこれを用い、哀れな光輝の信者らを生け贄として捧げさせて頂きます。


ブラックハンド。

継承せし者、テレスコニオス。

──


見覚えのある字だな。

羊皮紙をしまい、荘厳な箱を開ける。

鍵もなしか。

だがドア同様、手が箱に共鳴し発光する。アンデッドへの共鳴が錠なのか。

「なんだこれは」

箱を開けた途端、ドアが勢い良く閉じた。

そして上方に感じる凄まじい圧。ゆっくりと視線を上へ向ける。


振り向くと無数の触手を蠢かす巨大な黒い物体が浮遊していた。

周囲の景色が一変していた。

どうやらこの部屋には強力な変性魔法が掛けられ、幻影のベールに覆われていたようだった。

周囲には死の霧が充満している。

アンデッドの俺には身体的ダメージは生じないが、濃度の高い死霊魔力で高揚としてしまい。理性を奪われそうになる。


こちらの魂をじっと見つめてくる黒い物体は、全身が絡まった無数の黒い触手に覆われ、触手は常に蠢き動き、触手の隙間から無数の目玉が動いていた。蠢く黒い触手が時折千切れ、周囲に飛散している。

飛散した触手は地面や壁に当たると、ばたつきながら這い回り、接触した地面、床を溶かしていた。

無数の目玉が全体にまとわりついた大きな触手が伸び、こちらの目の前までゆっくりと近付いて来た。

無数の目玉が視点を定める事なく激しく動き回り、周囲とこちらを見回しているようだった。

大きな触手から緑の粘液が垂れ地面に落ちる。垂れ落ちた粘液が直ぐに蒸発していき、死の霧へと変化していた。

こいつは虚無の監視者。メトゥス。

「グュュュュ!!」

メトゥスが俺の心を読み、激しく反応し、咆哮を上げていく。

叫び終えると壁から遺跡に蔓延らせていたであろう触手の切れ端を自らの元へ集めていくメトゥス。

「戦うつもりか?」

「ギュルル、スーー!」

メトゥスが息を吐くように多量の死の霧を自身の体から放出していく。

戦う意志はないようだな。

「箱の中身を見てもいいか?」

「ギュル」

メトゥスが少し奥へ下がる。

箱の中身が緑に光り出し、宙へ浮かぶ。そしてこちらの目の前まで来ると静止する。

宙に浮く物体を手に取る。

「人差し指?」

「ギュルル」

「誰の指だ?」

「…………」

「リーケンとやらのか?」

「ギュルル」

「ヴォイドのか?」

「ギュルル」

「どこかの神か?」

「ギュルル」

「まさか、俺のか?」

「ギュル」

「はん。これは右用か、それとも左用か」

「ギュルル」

右の人差し指の骨に肉を通し嵌めていく。

「うぅ……」

全身に鈍い痛みが駆け巡り、魂が捻れる感覚と共に周囲に緑のショックパルスが駆け抜けた「グハッ!」あまりの痛みに立っていられず、地面に手を突く「アァ゙ッ……ハァ、ハァ……クソ」魂を削られているのか。意識が保………………………………「ハァーー!!ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」立ち上がり、右手を眺める。

手を開き、閉じ。再度開く。肉が自分の手によく馴染んでいた。

昔の感覚が戻ってきているのを感じる。

「メトゥス、共に来るか?」

「ギュルルルル!」

全ての記憶を取り戻すには、自らの肉体を取り戻さなければならないな。

だがなぜ俺の指がこんなところに。そもそも本当に俺の物なのか。ヴォイドがメトゥスを操り差し向けた。いや、どうも回りくどい。そんなまどろっこしい事はしないだろう。

「お前の力が必要になる。メトゥス。共に行動する時は本能を抑えてくれよ」

「ギュル」

手に力を集中させ、メトゥスに虚無の誓約を放つ。

メトゥスは一切抵抗をする様子を見せず、素直に受け入れたようだ。普通は本能で魔法に抗うものだが、まあいい。

メトゥスが全身を白く輝かせ、分子再構築を放った。

メトゥスがフロアを埋め尽くす程に体を肥大化させていく。

「逆だ」

「ゴリュリュリュリュ!」

肥大化し、巨体になったメトゥスの声が響き渡る。そして再びメトゥスが分子の再構築を放つとメトゥスの体が縮んでいった。

鴉ほど、鼠ほど、蝿ほどに縮んだ。

「それだと見失ってしまう」

メトゥスの体が再度肥大化し、鴉ほどの大きさに落ち着いた。

「キュル」

「その大きさをなら、意外と愛嬌が持てるな」

「キュル」

メトゥスが念動を放ち、奥に1つ置かれていた赤銅色の大きな壺を揺らした。

「ふむ」壺の元へ向かう。壺の中は黒い毒液が貯まっていた「これがどうかしたのか?」

「キュル」

メトゥスが触手で輪を作り、その中に別の触手を入れる。そして地面の破片を取り、多数の目を見開く。

「なるほどな」壺の中に手を入れ、腕まで浸かっていく。そして壺の中に沈んでいる物を掴み、取り出す「杖か」


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