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中へ進むと広大なフロアになっており、中央を囲むよう円筒形に多数の席が段になり、均等に設けられていた。
火山灰を含んだ石材のようだな。
高い壁のようになっている席台を先へ進んでいく。
椅子の向く先には円形の立地が設けられ、上には演台が置かれていた。
演台の側には、魔力を帯びた白いローブを羽織る、何者かが背を向け立っていた。
中央付近に近づくと、白いローブを着た者がこちらに振り返る。
年若に見えるハイエルフの男だった。
先端がドラゴンの頭部を象っている杖を地面に突き立て、静かにこちらを見下ろしてくる。
杖を握るハイエルフの男の指には、10を超える魔法の指輪が嵌められ、反対も同様だった。また奇妙な力を発する目の形をした緑のペンダントも身に付けていた。
「アンデッドか。それにその鎧。ヴォイドが再び気紛れでも起こしたか」
ハイエルフの男が口を開き淡々と話し始めた。
ルビーが一歩前へと出る。
「住人達に烙印を刻んだのはあんたね。あんたの素晴らしい大義とやらを聞かせてもらおうかしら」
「哀れな連中を救いに来たのか。だったら無駄足だったな。牢獄の連中は死ぬ運命だ」
「へぇ~、神にでもなったつもり?」
「それは恐れ多い」静かに胸に手を当てるハイエルフの男「私は使者に過ぎん。無駄話は終わりだ。貴様達も神の生け贄にしてやる。さあ、共に運命のいたずらに感謝しよう」
ハイエルフの男が杖を地面に一突きし、奥の高台へと転移した。
全ての席から青い半透明の種族型アイスエレメンタル達が氷剣、氷盾を装備し出現した。一斉に迫りくる。
「後退し陣を形成」
入り口の方へ翼で羽ばたき下がる。イエナも間を入れずに追従した。
すぐさま左側から迫る種族型アイスエレメンタルをお引き寄せていく。
ルビーが有翼を放ち、空中へと飛び上がった。
ルビーはすぐさま刃の無いパイクを振り下ろす。
刃のないパイクの先端から赤く輝く半透明の刃が複数現れ、ルビーがパイクを振るうと同時に種族型アイスエレメンタルへと飛翔していく。
立ち止まり、盾で飛翔する刃から身を守っている種族型アイスエレメンタル達。刃は稀に盾の氷を貫き、貫通しているようだ。
種族型アイスエレメンタル達もルビーに応戦するように盾を構えながら小型のアイスシャードを剣先から次々と放っていく。
ルビーは飛翔するアイスシャードに多少被弾しながらも翼で飛び回り、素早く回避していた。
ルビーの攻撃を受けた種族型アイスエレメンタルの体や損傷した氷盾が徐々に再生していっている。
「クソッ!」
後退したイエナが迫る種族型アイスエレメンタルに向け毒霧を放つ。
種族型アイスエレメンタルの周囲が毒霧に包まれ、続けざまにイエナが毒霧目掛け小規模のネクロファイアを放つ。
ネクロファイアが毒霧へと引火し、引火地点から緑に燃え滾る死の炎が一瞬で広がっていく。
種族型アイスエレメンタル達は溶け、青い蒸気となり消滅していった。
周囲の地面は焦げ、死の炎の残り火が微かに残っている。
「デュラハン、アリゲーター、バジリスク。行け」
引き付け、集団となった種族型アイスエレメンタルへ各個衝突させる。
種族型アイスエレメンタルの集団は迫り来ると同時に小型のアイスシャードをこちらへ放ち、剣と盾を身構え迫ってくる。
魔法障壁を放ち、飛翔するアイスシャードを防ぐ。
デュラハンは盾でアイスシャードを防ぎ向かい。アリゲーターは足や胸にアイスシャードが突き刺さりながらも動じる事なく向かっていく。バジリスクは体を上手くくねらせ、地面を這うように飛翔するアイスシャードを避け、素早く向かっていった。
デュラハンが集団の先頭目掛け槍を投擲し、そのまま剣と盾を取り出し集団へと斬り込んで行く。
デュラハンの投擲した槍が3体の種族型アイスエレメンタルを串刺しにし、突き刺さった種族型アイスエレメンタルは粉々に砕け散り、蒸発していった。
デュラハンに続きアリゲーター、バジリスクも集団に切り込んでいった。
デュラハン、アリゲーター、バジリスクに小型のネクロファイアを放ち、活性化させる。
全身が死の炎に包まれたデュラハン、アリゲーター、バジリスクは敏捷さを増し、血のオーラに加え更に攻勢を強めた。
イエナが透かさず、先ほどと同様に毒霧を放ち、燃え滾る各アンデッドのネクロファイアが引火し、周囲が死の炎で満たされた。
後方に下がったハイエルフの男がこちらをじっと見つめ、睨み付けている。
ハイエルフの男が指輪を光らせ、2体のアイスゴーレムが空中から出現した。アイスゴーレムが轟音を立て四足で地面に着地する。
こちら目掛け、蒸発する青い煙を全身から上げ、突進してくる。
アイスゴーレムを指差しグールと全てのキメラを向かわせる。
「グウァァァァ!」
2体のグールが咆哮を上げ、アイスゴーレムに突進していく。グールに続き多数のキメラも追従する。
アイスゴーレムとグールが衝突する前にハイエルフの男が指輪を光らせ、中型のアイスシャードをグールに向けて、それぞれ放ってきた。
「あっ!?」
念動でイエナを前進させる。
ハイエルフの男が放ったアイスシャードはイエナを囲うリフレクトの魔法に弾き返され、ハイエルフへ跳ね返り飛翔していく。
悠然と身構えていたハイエルフの男がアイスシャードを避ける、だがもう1つのアイスシャードがハイエルフの男の胴体へ突き刺さった。
ハイエルフの男は動じる事なくすぐさま指輪を光らせ、自身に治癒魔法を放ち、ハイエルフの男の体は黄色い光に包まれていった。
治癒の影響で突き刺さったアイスシャードが消滅していく。
ハイエルフの男へ向け、小型のネクロファイアを複数放つが、ハイエルフの男は指輪を光らせアイスウォールを放つと飛翔するネクロファイアを全て防いだ。
アイスゴーレムが両手を地面に何度も叩きつけ、激突して倒れたグールを原型が留まらぬ程ズタズタに粉砕していた。
もう一方のグールはアイスゴーレムの体の一部をもぎ取ってはいるが、アイスゴーレムは全身を凍りつかせ、グールがもぎ取った部分を再生させていく。
グールがミンチにされている隙に無数のキメラがアイスゴーレムの背や足に張り付き、アイスゴーレムの魔力を吸収していく。
右側の種族型アイスエレメンタルの相手をしていたルビーが苛立つ表情を浮かべ、火球の加護を放っていく。ルビーの周囲に小規模の火球が複数現れ、ルビーの周囲を周回する。周回するごとに火球の勢いが増していき、そして次々と種族型アイスエレメンタルへ飛翔していく。
火球は放たれると同時に新たな火球が出現していく。
火球を受けた種族型アイスエレメンタルは再生する事なく次々と消滅していった。
異様な火力だな。
ルビーは飛び回りながらアイスシャードを避け、種族型アイスエレメンタルへと火球を浴びせ続け、同時にパイクから刃を放っていく。




