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天井から砂煙と共に小石が落ちてくる。
通路先を見る。
この場所の探索は一旦やめておいた方がいいな。
いずれ再探索も考えるか。
問題は街へのルートだな。
バジリスクが頭をこちらの左手にこすりつけてくる。頭をこすりつけてきたバジリスの頭部を軽く撫でる。気持ち良さそうに目を瞑り舌を何度か出すバジリスク。
遺物か。
自身の記憶に近付きそうな予感がする。
デュラハン、モートが宝物庫にあった残りの装備を蜘蛛に積み終え、デュラハンに糸の壁を剣で切り開からせる。
「まだ先は長いの?」
「いいや。もうすぐ着く。お前はそこで少し休むといい」
「ふ~、そうさせてもらう」
来た道を少し戻り、分かれた別の通路を進む。地図を頼りに出口を目指す。
この壁か。
「おい」
デュラハンが壁を叩く。
だが反応がない。
デュラハンが再度叩こうとした時、壁がスライドしていく。
壁の側にあるレバーから離れ、見覚えのあるドワーフの男が近付いてくる。
「まったく遅かったな~」
革鎧を身に着けたドワーフの男が俺を軽く見た後、後ろ頭を掻きながら部屋の奥へ戻って行く。デュラハンを先導させ、続けて入る。
振り返るドワーフの男。デカイ蜘蛛を見て少し動揺しているようだ。
「デュラハン、モート。荷物を降ろせ」
驚いているドワーフの男の方を向く。
「蜘蛛は苦手か?」
「こんな化け物まで来るなんて、聞いてなかったからな」
「慣れるしかないな」
「その辺は大丈夫だ。ああ後、一応簡易的な物は用意しておいた」
テーブル1つに椅子2つ。粗末な寝床1つが視界に入る「足りなければ……」
「十分だ。それと準備ができるまでは、モークに不干渉だと伝えておけ」
「分かった」
ドワーフの男が2つの変性魔法を放ち姿を消すと、階段の方へ向かっていった。
「待って!」
マーラがドワーフの男を呼び止め、急いで男の方へと向かった。少し話した後、男がマーラにカードの束を手渡していた。マーラが受け取りこちらへ戻ってくる。
「ここで休むことに関して意見は?」
「ない。平気」
粗末な寝床を整え始めるマーラ。
「お前が望むなら自由だ。上の騒がしい宿でもいいぞ」
「楽しいからここで良い」
「ふむ」
「それに1人で宿だと、今は何だか危険そう」
「まあな。この街の情勢は複雑だしな。新参者の縄張り主張者は何かと厄介ごとに合うかもしれん」
「私は遺跡暮らしは長かったし、逆になんだか安心する」
「なら良かった。モートと植物2匹を置いていく。植物は鑑賞だけにしておけよ」
マーラは寝床の上にあぐらをかいて座り、尾をゆっくり左右に揺らしながら受け取ったトランプを切り始めた
「どこへ行くの?」
「野暮用だ」
デュラハン、モートが荷物を降ろし終える。
「デュラハン、一緒に来い」
デュラハンを先導させ、階段を上がる。傍ら生者感知を放つ。上がり終え、ドアをデュラハンが盾で押し開ける。
ドアの先は荒れ果てた部屋だった。無造作に置かれたテーブル、椅子。埃が積もり蜘蛛の巣に覆われ、散乱したガラクタで荒れている。
右側のドアを合図で示し、デュラハンが盾で押し開ける。
扉の先から部屋に月の光りが差し込んでくる。
外に出て警戒するデュラハン。
周囲を見回すと街の端付近のようだった。寂れた廃屋が数多く建ち並んでいる。物乞いすらいない。人影のない場所だった。
出てきた小さな家にはビラが貼られていた。
──廃屋に貼られ風化しているビラ。
立ち退き勧告!
鉱石精製に伴う汚染物質排出経路の為、この地区の住人に対し立ち退き勧告を宣言する。
従わない者は処罰の対象となる。
ロクスソルス衛兵隊。
──
「デュラハン戻るぞ」
俺の後に続き、デュラハンが盾を構え廃屋に戻る。
そのまま地下へ。
モートが丁度、降ろした積み荷の整理を終えていた。
マーラがデスフラワーとトランプをしていた。
俺の話を聞いていないな。
だがデスフラワーが懐いているのなら、別にいいか。
椅子に座っているイエナの元へ向かう。イエナは椅子に座り、杖を布で拭いていた
「出かけるぞイエナ」
イエナが手を止め立ち上がる。
「準備はできています」
イエナはどこか興奮に満ちた表情を浮かべ、仮面を着けた。
イエナ、デュラハン、アリゲーター、バジリスク、蜘蛛を連れ、遺跡の通路へ戻る。
「モート、警戒しておけよ」
「ガル」
モートが内側のレバーを引き、壁が閉じる。
「デュラハン、先導しろ」
これでモークの情報と街へのルートの裁定が済んだ。上々だな。
周囲を警戒しながら隣を歩くイエナ。
「イエナ、マーラはいない。思う存分戦え」
「はい。期待に応えられるよう…」
「俺の事も気にするな。思うままやればいい」
「分かりました」
両手で杖を握りしめるイエナ。
「新しい装備、魔法の確認は済んだのか?」
「はい。待っている間に少しずつですが確認していました。その、私もリッヂようにアンデッドを生み出すことはできるようにになるのでしょうか?」
「アンデッドを生み出す魔法は、ヴォイドの囁きや呼び声と言って、リッヂしか無理だ」
「そ、そうですか…」
「だが召喚に似た類いなら可能だ。それに、魔道具などを用いれば、質や利便性はさておき、行使自体は比較的容易だろう」
「色々と方法があるんですね。あと、この仮面を身に付けている際の欠点はありますか?」
「マーラの前では外した方がいいかもな。俺の前では気にするな」
「顔が見えているんですか?」
「ああ、透過している」




