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「モート」モートが四足で駆け寄ってくる「この残りの死霊魔力を吸収しておけ。
「ガル」
モートがスライムの亡骸から死霊魔力を吸収していく。
ギリギリと言ったところか。
吸収し終えたモートに昇格の儀式を放つ。
モートの全ての目が緑に光り、モートが無事昇格を得た。
モートの肌は灰色へと変化し、体格が肥大。牙も肥大化に従い更に鋭利に研ぎ澄まされた。
「かっこよくなったじゃない。ゼン」
笑顔でモートの顔を撫でるマーラ。
そういえばそうだったな。
「なんだか吸血鬼に近づいた気がするけど」
「吸血鬼を見た事があるのか?」
「直接はないけど。私まだ16だもん。世界を見るのはこれからなんだから」
「そうか。出発するぞ」前方へ向かう「デュラハン、この死霊魔力を残らず吸収しておけ」
「御意」
デュラハンが前方に散らばる死霊魔力を吸収していく。
「もう一度デュラハンの昇格は無理なの?」
「無理だろうな。昇格を繰り返せば、それだけ必要な量も増す」
「体も大きくなってるしね」
「アリ、ミート。先導しろ」
暫く地図を頼りに地下を進んでいく。
「疲れてきた~」
前屈みになり、両膝に手を置き俯くマーラ。
「大した距離じゃないだろう。寝てないからか?」
「ふぅ」姿勢を戻し、片腕で額を抑え、顔を少し上に向け口を開くマーラ「それもあるけど、何か息苦しくて」腰に両手を置き、歩き始めるマーラ「貴方は疲れないわけ?」
「勿論疲れるさ」
「本当に? そこは、いや疲れん。この中で疲れを感じるのはお前ぐらいだ」
「それは俺の真似か?」
「そうだ」
「やめろ」
「ンフフ、結構似てたでしょ?」
「いいや」
「ンフフ、ただの尊敬の表れよ。でもほら、イエナは笑ってるよ」
イエナを指さすマーラ。
「ンプッ、す、すみません」
笑みを溢しながら、右手で口元を覆うイエナ。
「流石イエナ。チチッ、わかってる~!」
ウィンクして舌を鳴らし、イエナに軽く肩を当てるマーラ。
「アリ、ミート。止まれ。向こうに行き警戒しろ」2体を直角の角先へ行かせ、待機警戒させる「地図通りならこの辺だな」
曲がり角の角部分で入り口を探す。
「こんな何もなさそうな所に、ブラックハンドの隠れ家があったの?」
「恐らくはな」モークの話は本当だったようだな。壁や床に比べ、ここに捨てられた松明が比較的新しい。それでも随分と前の話のようだが「お前達も周囲を探せ」
「アイアイキャプテン。イエナあの階段を見てみよ」
「うん」
「気を付けろよ」
特にこれといって、頭によぎる事はないか。
周囲には魔法障壁の類いも無し。
というより、魔法の痕跡がないな。
「ねえ? ここにレバーみたいなのがあるけど」角を曲がり、少し先の壁側にある階段からマーラが呼び掛けてくる。
階段の方へ行くと、マーラとイエナが、先が崩落している階段の途中で、壁に埋め込まれた小さなレバーを見ていた。
レバーはクモの糸に覆われている。
「これでどこか開くのかもね」
「マーラ、触れ…」
マーラがレバーを引く。
壁の隙間から錆びたボルトが飛び出してきた。
「イ、イエナ!?」
イエナがマーラを抱き締め庇い、飛び出してきたボルトを背に受け止めた。
「大丈夫、マーラ」
「私は大丈夫。でもイエナは…」
「この体だから平気」
「良かった。あぁ、ありがとうイエナ」
「気を付けてよねマーラ。私、もっとマーラと一緒にいたいんだから」
「ごめんね。背中のボルト抜かなきゃ」
「うん、でも階段から離れてしよ」
「そうね」
一緒に階段を降りてくるイエナとマーラ。
「ガル」
モートが側に来て何かを告げる。
「何か見つけたのか?」
先導するモートについて行く。
モートが角にある地面のタイルを両手で一枚引き剥がす。すると何かをはめ込む鋳型のような物が設置っsれていた。見た事あるの形状だな「マーラ」
「凄い! ボルトの怪我がどんどん塞がっていく。どうしたの?」イエナのボルトを抜き終えたマーラがボルトを地面に捨て、こちらへ来る「何かあったの?」
地面に視線を向ける。
「型の形状がお前のタクトに似てないか?」
「仕掛けは地面にあったのね。そりゃ気付かないわよね。まったく」マーラがタクトを取り出し、型と見比べる「形状的にこれって感じもしなくも、ないかな〜。微妙じゃない?」
「いいから嵌めてみろ」
タクトを俺の目の前に差し出すマーラ。
マーラを見る。
「さっきの事があったし、お願い」
マーラからタクトを受け取る。
「一応離れてろ」
タクトを地面の型の窪みに嵌め込む。岩の動く音と共に、角の分厚い壁がスライドし、入り口が現れる「モート、よくやった」
「ガル」
入り口から中に入る。
「これってもう取っていいの?」
「ああ、取っていい」
マーラがタクトを取る。「えっ!?」音はするが壁はスライドしなかった。中へマーラが入ってくる「一瞬驚いた」
「そぐそこに解くレバーがあったんだ」
「本当だ。暗くて見えなかった。う~ん。にしてもよくできてるわね。ドワーフが作ったのかな?」仕掛けを見て頷きながら感心しているマーラ。
「今でもちゃんと動くって凄いよね」
「ボルトの怪我は大丈夫なの?」
「大丈夫」
「デュラハン」デュラハンを中に入って来させる「奥を調べてこい」
デュラハンが奥へ向かう。
内部は広い部屋になっている。
テーブルや椅子が無造作に放置され、テーブルの上や床には様々なガラクタが散乱していた。
天井や壁、床など様々な物の上には埃などが積もり、暫く何者も出入りしてない事が伺える。
「凄く荒れてるわね〜。でもこういうのってやっぱりなんだかシクシクする。ね〜?」
「ワクワクだろ。気持ちは分かる。高揚とするな。だが気をつけろよ」
「大丈夫。もう何も触らないから」
部屋の中を見回しながら、奥へ歩いていくマーラ。
マーラが壁に掛けられた松明へカンテラの火を移していく。
まったく。




