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【完結】ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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「デュラハン、イエナの残りの死霊魔力を吸え。吸い過ぎるなよ」

「御意」

デュラハンがスライムの亡骸から死霊魔力を吸収していく。

頭部のない自らの首元から体内へと死霊魔力を取り込んでいく。

「よし、二度目の昇格だ」

デュラハンが目の前に来て片膝をつく。

手に力を集中させ、デュラハンに昇格の儀式を放つ。

デュラハンが眩い緑の光りに包まれ昇格を得ていく。

輝きに気付きマーラが意気揚々と見物に来た。

「禍々しいのにどこか神秘的」

昇格したデュラハンを見て目を大きく見開き、静かに驚いているマーラ。

デュラハンは再度体格が増し、全身が燃える緑の死霊火に包まれ、穴の空いた首からも炎を燃え上がらせる。

「美しい(高揚)」

心地良い火だ。

「私には少し息苦しい。確かに幻想的だけど、返って目立ったりしないの?」

「お前の血のオーラ同様。それほど目立つものでもないだろう。それにデュラハンは隠密に長けてはいないしな」

「歩く時、鎧がうるさいしね。その鎧脱げたりするの?」

「厳密には鎧じゃない。ドラゴンの鱗のようなものだ」

「へえ~、そうなんだ。何でも知ってるんだ」

「それよりもお前のカンテラの方が目立つ。さっさと何とかしろよ」

「私も貴方のようなリッヂにしてくれるのなら、今すぐやるけど」

マーラの爪先から頭頂部まで見る。

「諦めろ」

昇格したデュラハンの元へ行く。

「ふんっ、絶対なってやるから。リッヂになったとしても、近くでカンテラぶら下げてやる」


「気分はどうだ?」

デュラハンが静かに頷く。

「向上した身体能力は実戦で見定めるとして、 新しく習得した魔法を見せてもらおう」

デュラハンが軽くマーラの方を見る。

「影響の無いものだけでいい。早くしろ」


デュラハンが全身に力を込めていき、死の誘いを解き放つ。

デュラハンから辺りに緑の死霊ショック波が駆け抜けていく。

「あっ!? ビ、ビックリしたぁー。デュラハンは何を放ったの?」

「死の誘いだ」

「ちょっと! 私がいるのよ。少しは気に掛けてよ」

「恐怖を与えるだけだ。問題はないだろう?」

「ハァ〜、心臓バクバクしてる」

「今後デュラハンの側では気をつけた方が良いな」

離れた場所で壁に向かって魔法を放っているイエナの方へ向かう。

イエナの魔法を見ていたマーラの側に行く。

「デュラハンは魔法が使えるようになったの?」

「ああ、2つほどな」

「今のと、もう1つは?」

「お前が待ち望んでいたものだ」

「う~ん」斜め上を向き、首を傾げるマーラ。「あっ!もしかして、タクトの事?」

「そう。カースだ。正確にはデュラハンのは広範囲に影響を与えるが、充与くらいは可能だろう」

「広範囲って…恐ろしいじゃない」

マーラを見る。

「もちろん! 生者とっては、ねっ!」

「ああ。ミートやアリはそういう類いの魔法は扱えないから、もし別行動をする時が来たら、あいつらと行くといい」

「昇格してもってこと?」

「どうだろうな。アリは全くだろう。むしろ近くにいると恩恵が多い。ミートは基本的には…そうだな、いくつかはあるかもしれん。さっきのデセラレーションのような」

「あぁん。早くアンデッドになった方が楽かもね」

「側にいるならそうだな。リッヂじゃなければ駄目なのか?」

「ダメ! あっ? イエナはリッヂじゃないけどしっかり意思があるわよね。なんで?」

「皆、意思があるだろう」

「そう…だよね」

マーラが首を傾げる。


壁に向かって毒噴射を放つイエナの側へ行く。放つ毒液の規模が以前より少し大きくなっている。

「さっきは濃度だけだったが、規模も上がったようだな」

「だいぶ慣れてきました」

「昇格での限界はある。だがそれでも向上は可能なはずだ」

「はい。ですが、風の方はあまり変化がないです…」

「風術は体得が困難な魔法だ。扱えるだけで十分な才だ。極めるのはかなり難しいだろう。生前のお前の才能故、昇格では魔力以外助けになることはないはずだ。まあ焦らず気長にやるんだな」

「はい。あの…リッヂのあなた様は、風術にお詳しいですか?」

「月並みだ。新しい体に慣れてきたところ悪いが、もう一度昇格だ」

「もう一度、ですか?」イエナが周囲を見る「他のアンデッドはいいんですか?」

「話すと長い。現状、有益な優先順としては、お前の番なんだ。お前が少し慣れる時間が必要なように、デュラハンにも新しい体に慣れさせる時間が多少必要だからな」

「そうですか。何だか頼りにされて嬉しいです。分かりました。すぐにお願いします!」

魔法を律儀に待つイエナ。

「イエナ、その前に死霊魔力を吸うんだ」

右側のスライムの亡骸を指さす。

「あっ…そうでした…」

スライムの死霊魔力を吸収していくイエナ。

「イエナが化け物になったりしないわよね?」

「ここではお前以外全員化け物だ」

「私には心の目もあるのよ」

「心眼という特性があるからな。いまいちだな」

「昔スケルトンをペットにしてたの。だから今も体に愛おしさが残ってる」

「フフ……」

マーラを睨みつける。

「ンフフ〜、スケルトンの事よ」


「ハァ…ハァ…」

吸収し終え、息を荒げているイエナ。

「今度は制御できたみたいだな」

「こんなに…ハァハァ…死霊魔力を取り込むのが気持ちいいなんて思っていませんでした」

両目が緑の光を帯びたまま笑みを浮かべるイエナ。

「これからも本能は制御しろよ。勝手な行動をすれば、デュラハンがお前を真っ2つにする」

「大丈夫です。必ず忠実な従属になってみせます」

「期待している」隣で少し驚きながらも、何度か頷いているマーラ「準備はいいか?」

「……はい」呼吸を整えるイエナ「お願いします」

右手に力を集中させ、イエナに再び昇格の儀式を放つ。

イエナが緑の死霊光を全身から放ち、光を覆う様に自身の周囲に吹き荒れる砂で身を纏っていく。

砂が一気に地面に落ち、イエナを覆っていた光は失われた。

「見た目的にはデュラハン程あまり変化はないのね」

イエナを観察するマーラ。

「気分はどうだ?」

「かなり良いです。体の中から、こう」両手で胸を抑えるイエナ「とても強い力を感じます」

「他に変化を感じる部分ってある?」

「そうね〜」


余裕があるな。

モートも昇格させておくか。

「デュラハン、お前は前方の…」後方へ向かう「誰が食らっていいと言った?」

首を低く下げるバジリスク。

モートは蜘蛛の元へ行き、デスフラワーはお互い肩を組み、ゆっくりと横歩きで俺の視界からフェードアウトしていく。

バジリスクが首を低くしたまま身動き1つしない。

「旨かったか?(苛)」

バジリスは反応を示さない。


「このままイエナが…今度は蛇ちゃんを昇格させるの?」振り向くと、イエナが視線を逸らす「何かあったの?」

「いいや、何もない」

軽く頷くマーラ。

「ねえ。その、今は戦力が必要でしょ? だから……」

「マーラ(棘)」

人差し指でサインを出す。

「オッケー…」

片手を開いて数回サインで返し、イエナと会話を再開するマーラ。

伏せるバジリスクを見下ろす。

「一度だけだ。いいな?(威圧)」舌を一度出すバジリスク「活用するしかない」

右手に力を集中させ、バジリスクに昇格の儀式を放つ。

バジリスクの六つの目が緑に光り、体格が少し肥大化する。

「バジリスクの具体的な変化は?」

「さあな。一度だけでは大して変わらんだろう」

「バジリスクって、良く見ると可愛いよね」

バジリスクを撫でるマーラ。


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