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「デュラハン、イエナの残りの死霊魔力を吸え。吸い過ぎるなよ」
「御意」
デュラハンがスライムの亡骸から死霊魔力を吸収していく。
頭部のない自らの首元から体内へと死霊魔力を取り込んでいく。
「よし、二度目の昇格だ」
デュラハンが目の前に来て片膝をつく。
手に力を集中させ、デュラハンに昇格の儀式を放つ。
デュラハンが眩い緑の光りに包まれ昇格を得ていく。
輝きに気付きマーラが意気揚々と見物に来た。
「禍々しいのにどこか神秘的」
昇格したデュラハンを見て目を大きく見開き、静かに驚いているマーラ。
デュラハンは再度体格が増し、全身が燃える緑の死霊火に包まれ、穴の空いた首からも炎を燃え上がらせる。
「美しい(高揚)」
心地良い火だ。
「私には少し息苦しい。確かに幻想的だけど、返って目立ったりしないの?」
「お前の血のオーラ同様。それほど目立つものでもないだろう。それにデュラハンは隠密に長けてはいないしな」
「歩く時、鎧がうるさいしね。その鎧脱げたりするの?」
「厳密には鎧じゃない。ドラゴンの鱗のようなものだ」
「へえ~、そうなんだ。何でも知ってるんだ」
「それよりもお前のカンテラの方が目立つ。さっさと何とかしろよ」
「私も貴方のようなリッヂにしてくれるのなら、今すぐやるけど」
マーラの爪先から頭頂部まで見る。
「諦めろ」
昇格したデュラハンの元へ行く。
「ふんっ、絶対なってやるから。リッヂになったとしても、近くでカンテラぶら下げてやる」
「気分はどうだ?」
デュラハンが静かに頷く。
「向上した身体能力は実戦で見定めるとして、 新しく習得した魔法を見せてもらおう」
デュラハンが軽くマーラの方を見る。
「影響の無いものだけでいい。早くしろ」
デュラハンが全身に力を込めていき、死の誘いを解き放つ。
デュラハンから辺りに緑の死霊ショック波が駆け抜けていく。
「あっ!? ビ、ビックリしたぁー。デュラハンは何を放ったの?」
「死の誘いだ」
「ちょっと! 私がいるのよ。少しは気に掛けてよ」
「恐怖を与えるだけだ。問題はないだろう?」
「ハァ〜、心臓バクバクしてる」
「今後デュラハンの側では気をつけた方が良いな」
離れた場所で壁に向かって魔法を放っているイエナの方へ向かう。
イエナの魔法を見ていたマーラの側に行く。
「デュラハンは魔法が使えるようになったの?」
「ああ、2つほどな」
「今のと、もう1つは?」
「お前が待ち望んでいたものだ」
「う~ん」斜め上を向き、首を傾げるマーラ。「あっ!もしかして、タクトの事?」
「そう。カースだ。正確にはデュラハンのは広範囲に影響を与えるが、充与くらいは可能だろう」
「広範囲って…恐ろしいじゃない」
マーラを見る。
「もちろん! 生者とっては、ねっ!」
「ああ。ミートやアリはそういう類いの魔法は扱えないから、もし別行動をする時が来たら、あいつらと行くといい」
「昇格してもってこと?」
「どうだろうな。アリは全くだろう。むしろ近くにいると恩恵が多い。ミートは基本的には…そうだな、いくつかはあるかもしれん。さっきのデセラレーションのような」
「あぁん。早くアンデッドになった方が楽かもね」
「側にいるならそうだな。リッヂじゃなければ駄目なのか?」
「ダメ! あっ? イエナはリッヂじゃないけどしっかり意思があるわよね。なんで?」
「皆、意思があるだろう」
「そう…だよね」
マーラが首を傾げる。
壁に向かって毒噴射を放つイエナの側へ行く。放つ毒液の規模が以前より少し大きくなっている。
「さっきは濃度だけだったが、規模も上がったようだな」
「だいぶ慣れてきました」
「昇格での限界はある。だがそれでも向上は可能なはずだ」
「はい。ですが、風の方はあまり変化がないです…」
「風術は体得が困難な魔法だ。扱えるだけで十分な才だ。極めるのはかなり難しいだろう。生前のお前の才能故、昇格では魔力以外助けになることはないはずだ。まあ焦らず気長にやるんだな」
「はい。あの…リッヂのあなた様は、風術にお詳しいですか?」
「月並みだ。新しい体に慣れてきたところ悪いが、もう一度昇格だ」
「もう一度、ですか?」イエナが周囲を見る「他のアンデッドはいいんですか?」
「話すと長い。現状、有益な優先順としては、お前の番なんだ。お前が少し慣れる時間が必要なように、デュラハンにも新しい体に慣れさせる時間が多少必要だからな」
「そうですか。何だか頼りにされて嬉しいです。分かりました。すぐにお願いします!」
魔法を律儀に待つイエナ。
「イエナ、その前に死霊魔力を吸うんだ」
右側のスライムの亡骸を指さす。
「あっ…そうでした…」
スライムの死霊魔力を吸収していくイエナ。
「イエナが化け物になったりしないわよね?」
「ここではお前以外全員化け物だ」
「私には心の目もあるのよ」
「心眼という特性があるからな。いまいちだな」
「昔スケルトンをペットにしてたの。だから今も体に愛おしさが残ってる」
「フフ……」
マーラを睨みつける。
「ンフフ〜、スケルトンの事よ」
「ハァ…ハァ…」
吸収し終え、息を荒げているイエナ。
「今度は制御できたみたいだな」
「こんなに…ハァハァ…死霊魔力を取り込むのが気持ちいいなんて思っていませんでした」
両目が緑の光を帯びたまま笑みを浮かべるイエナ。
「これからも本能は制御しろよ。勝手な行動をすれば、デュラハンがお前を真っ2つにする」
「大丈夫です。必ず忠実な従属になってみせます」
「期待している」隣で少し驚きながらも、何度か頷いているマーラ「準備はいいか?」
「……はい」呼吸を整えるイエナ「お願いします」
右手に力を集中させ、イエナに再び昇格の儀式を放つ。
イエナが緑の死霊光を全身から放ち、光を覆う様に自身の周囲に吹き荒れる砂で身を纏っていく。
砂が一気に地面に落ち、イエナを覆っていた光は失われた。
「見た目的にはデュラハン程あまり変化はないのね」
イエナを観察するマーラ。
「気分はどうだ?」
「かなり良いです。体の中から、こう」両手で胸を抑えるイエナ「とても強い力を感じます」
「他に変化を感じる部分ってある?」
「そうね〜」
余裕があるな。
モートも昇格させておくか。
「デュラハン、お前は前方の…」後方へ向かう「誰が食らっていいと言った?」
首を低く下げるバジリスク。
モートは蜘蛛の元へ行き、デスフラワーはお互い肩を組み、ゆっくりと横歩きで俺の視界からフェードアウトしていく。
バジリスクが首を低くしたまま身動き1つしない。
「旨かったか?(苛)」
バジリスは反応を示さない。
「このままイエナが…今度は蛇ちゃんを昇格させるの?」振り向くと、イエナが視線を逸らす「何かあったの?」
「いいや、何もない」
軽く頷くマーラ。
「ねえ。その、今は戦力が必要でしょ? だから……」
「マーラ(棘)」
人差し指でサインを出す。
「オッケー…」
片手を開いて数回サインで返し、イエナと会話を再開するマーラ。
伏せるバジリスクを見下ろす。
「一度だけだ。いいな?(威圧)」舌を一度出すバジリスク「活用するしかない」
右手に力を集中させ、バジリスクに昇格の儀式を放つ。
バジリスクの六つの目が緑に光り、体格が少し肥大化する。
「バジリスクの具体的な変化は?」
「さあな。一度だけでは大して変わらんだろう」
「バジリスクって、良く見ると可愛いよね」
バジリスクを撫でるマーラ。




