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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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蜘蛛を少しは昇格させておきたい所だが、体がこれ以上肥大化するかもしれん。

現状追従が困難になってしまうのは困る。惜しいが避けねばならないか。

「イエナ、左側のスライムの魔力を吸収しろ」

「はい」イエナがスライムの亡骸の方へ向かい、両手を広げ、周囲から死霊魔力を吸収していく「……アッ!」

「イエナ、大丈夫?」

マーラが胸に手を当て、心配そうにイエナを見つめる。

「イエナ、その辺でいいだろう」イエナが死霊魔力を吸収し続ける「イエナ」イエナが吸収を止める気配がない。

「ねえ、何か様子が変なんだけど」

警戒するマーラ。

「デュラハン」

顎でイエナを示す。

デュラハンがイエナに近づき、両手で肩を掴み、イエナをスライムの亡骸から引き離す。

「はっ!?」吸収をやめるイエナ。イエナの光っていた両目の光が消える「ハァ…ハァ…」

「平気かイエナ」

「最高に…ハァハァ…いいです」

息を荒げながらも、笑みを浮かべ答えるイエナ。

「ねえイエナ、大丈夫なの?」

「大丈夫よ。ンフフ、マーラ」

マーラに笑顔を見せるイエナ。

引きつった笑みで答えるマーラ。

片手でイエナから口を隠し、俺の耳に口を近づけてくるマーラ。爪先立ちしている背の低いマーラに合わせ、耳を傾ける「ねえ、様子が何か変なんだけど、本当に大丈夫よね?」

「大丈夫だ。それほど心配はいらない。俺がアンデッドを生み出す時のように、一種の快楽が得られたんだろう。お前にも分かるよう例えるなら、薬やあれの感覚に近い」

「あれって…あれ?」

「そうあれだ」

目を点にするマーラ「お…」

「まあ半分冗談だが、悪魔が拷問で得る快感と言っても、お前には想像できんだろう」

「そうね~」

「イエナ、お前を昇格させる。準備はいいか?」

「は~い♪」

「デュラハンは平気そうにしていたが、昇格魔法は意外と堪える術だ。多少の痛みが生じる」

「大丈夫です」

右手に力を集中させ、イエナに昇格儀式を放つ。

「うぐっ!」体内に入り込む魔法に苦しんでいる様子のイエナ「ウッ!」両手で胸を抑え、両膝を地面に突く。

「イエナ…」

心配そうに顛末を見届けているマーラ。

次の瞬間、イエナが塵と化した。

「えっ……う、うそ……」マーラが駆け寄り、地面に膝を突いて愕然と灰を眺める「うそ、うそ! ねえ! イエナは!?」困惑した表情でこちらに振り向くマーラ。

「まだ終わっていない」

「えっ」マーラは立ち上がり塵を見つめたままゆっくりと後ろに下がる。


少しして、イエナの塵は緑の光りを帯び始め、元の人型へと形成し直していく。

「成功だな」

「イエナ! 大丈夫なの?」

「ええ、大丈夫だけど?」

少し戸惑っている様子のイエナ。

「心配した。ただの塵になっちゃったから」

「そうだったの? 私にとっては一瞬だったから何ともない」

自らの両手を見つめるイエナ。

「声や姿が以前より良くなってる」

「そうみたい」

向かい合い、嬉しそうにマーラと両手をつなぐイエナ。

「上手くいって良かった。マーラは寂しがり屋のようだからな」

「も~、そんなんじゃないわよ」

「ありがとうございます」

俺に頭を下げるイエナ。


イエナは干からびたミイラのアンデッドから、ある程度の肉付きがあるミイラへと変化した。

土色の肌から灰色の肌へと変化し、しがれていた声も支障の少ない物へと変わった。

「昇格で変わったのは姿と声だけ?」

「身体的には以前より向上したはずだ。デュラハンほどの変化はないだろうが、魔法面での変化が著しいはずだ。イエナ、試しに魔法を壁に放ってみろ」

イエナは片手を開き、突き出した手から魔法を放つ。

イエナの手に形成された毒の球体が飛翔し、壁に当たり弾け飛んだ。壁が僅かに融解し白い煙を上げている「凄いです」驚きつつ、魔法を放った自身の手を見つめるイエナ。

「他にも力を得たはずだ。それと今後も昇格するごとに飛躍的に力が得られる。自身の得た力を上手く制御しつつ活用し、戦闘で敵の特性を見極め、何より周囲の味方に配慮し、臨機応戦に戦っていけ」

「分かりました。努力します」

「微笑ましいわね。簡単に魔法を習得できれば楽しそう」

マーラが腕を組み、ゆっくりと尾を左右に揺らしている。

「マーラ、お前は水術が得意で、最近死霊術にも目覚めた。後は極めていくだけだろう」

「物は言いようよね」

「死霊術なら暇な時にでも教えてやろう」

「ありがと」

イエナの元に行き、楽しそうに会話をし始めるマーラ。


スライムの死骸を注視する。

やはりこれはヴォイドスライムだな。この異常な死霊魔力の保有が物語っている。

だが妙だな。なぜこんなところに。術者の気配もない。

年月の経過で俺が知らない要因があるのか。

まあどちらにしろ好都合だ。

思ったより早く既存の戦力を底上げできそうだ。

烙印問題にも早めに着手できる。


通路の先を眺める。

他にも魔物が多く潜んでいる事を考えると、胸が高まるな。

やはりこの興奮は昔の感覚を思い出せてくれる。

早く自らの記憶を完全に取り戻したいな。


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