31
前方のミート、アリゲーターの攻撃を躱し、すり抜け、向かってくるスライム達。
すり抜けてきたスライム達を、デュラハンが剣で素早く複数回の斬撃を浴びせバラバラに切断していく。
デュラハンがスライムの攻撃を躱し、尚も反撃し足や腕にまとわりつくスライムを振り払い、踏み潰し、地面に貫通するほど剣を突き立てスライムを串刺しにしていく。
イエナがトルネードで足止めし、1箇所に固まっていたスライム達にデュラハンが背中から取り出した槌の一撃を浴びせ一気に 消滅させる。
イエナのトルネードのおかげで、マーラに飛び散るスライムの体液は偶然にも防がれた。
モートがマーラを担ぎ、こちらまで急いで後退してくる。
戦況を眺める傍ら、モートが隣へマーラを下ろす。
モートを再び後方の攻勢に向かわせる。
マーラが睨み付けてくる。
「何とかしてよ」
辛そうに立ち上がるマーラ。
「光輝魔法が使えない以上、自然に効力が失なわれるのを待つ他ない」
マーラの両目と両手が緑に光り、両手を広げながら次第に周囲に大きな緑の魔法陣を出現させていく。
魔法陣が出現すると、周囲のスライムから魔力を吸収していく。
出現した魔法陣は少しの間留まった後、粉々に弾け散った。
力の抜けたマーラが地面に膝を突き崩れ落ちた。
「平気か?」
「え、ええ…」マーラが自分の両手を見つめる「今のは一体…」
「最初は分からなかったが、今のは死霊術の一種、魔力の渇望だ。お前が放ったんだ」
立ち上がるマーラ。
「どうして私が?」
片手で額の側面を抑えるマーラ。
「さあな。だがこの場所と何か関係があるのかもしれん」
「ええ、何だか不思議と体が軽くなった気がする」
「魔力の減退でデセラレーションから受ける影響が大きかったんだろう」
戦っているアンデッドを見回すマーラ。
「あぁ…私以外は平気そうだけど」
「知識が飛んだのか?」
「そうだった。アンデッドに死霊術は効かない。常識よね。少し頭がぼーっとしちゃって。でもこんな呑気に話している場合じゃないわよね」
「大方片付いたようだ」
周囲を見渡すよう手を伸ばす。
従属アンデッド達が大方のスライムを片付け終わっていた。
「わお、頼りになるのね。はぁ、生者って想像以上に脆いって実感した」
「あいつらには俺の放っているオーラの影響があるからな。リッヂが何か言ったところで慰めにはならんだろうが、あまり気にするな」
「うん」
「それよりすまなかったな。久し振りで鈍っていた」
「わお、謝るんだ」独り言のように 小声で囁くマーラ「いいの。結果が全てだし。それにやっぱり、私ってこの中で場違い感が拭えないから。完全にお荷物だけど」
「俺は一緒にいて楽しいがな」
「ンフフ、それはどうも」首を軽く左右に振り、苦笑いを浮かべるマーラ。だが足元を見てマーラの表情が変わる「ねえ、引き返した方がいいんじゃない?」
「ん?」
「だって、私以外、みんな変な魔法に掛かってるわよ」
「この赤いオーラの事か?」
「そう…。知ってたの?」
「ただの血のオーラだ。心配ない。さっき言った周囲のアンデッドを強化する魔法だ」
アンデッドに集結するよう人差し指を立て、回す。
「いつ使ったの?」
「お前と会う前からずっとだ。これは恩恵や加護、種族に性質にも存在する一種の受動的な魔法だ。簡単に言うとリッヂの特性だな」
「知らなかった」
「普通は見えないはずだ。生者なら尚更。だが、まあここへ来てお前のネクロマンサーの力が開花した影響だろうな。良かったな」
「私以外、みんな最初から見えてたの? つまりアンデッド達ね」
「ああ」
「じゃあ、もしかして、私なっちゃったわけ? 部分的にでも。自分で気付かないだけで、他の人には私が腐ったアンデッドに見えてるとか」
「反応が楽しみだな」
「フッ、笑える」
「大丈夫だ。お前の肉体はまだちゃんと生きてる」
胸に手を置き、安堵した表情を浮かべた後、少し顔を傾け目を細め見てくるマーラ。
「なんか嬉しそうじゃない?」
「良く分かったな。表情など無いに等しいのに」
「声で何となく分かるわよ」
「ほお。だがお前の事で喜んでる訳じゃない。この光景だ。見てみろ」
スライムの体液が周囲の至る所に飛び散り、白い煙を上げている。
「ええ素敵ねー。ワイン片手にずっと眺めていたくなる景色よねー」
片膝を突き、地面に広がるスライムの体液を指先で掬う。
「このスライムは少し特殊だ。死霊魔力を多く秘めている。これだけあれば」
「スライムが? そんなこと初耳だけど」
話を遮ってくるマーラ。
「そうなのか? まあアンデッド以外は使う価値のない魔力だしな。無理はないか」
「それって象徴的な意味で言ってる?」
「いいや、そのままだ。こいつらは多くを食い漁ってきたんだろう。疑問は残るがな」
「へ~、こんなスライムもいるのね~」
「生者でも、墓場だとなんとなく感じる魔力があるだろう? あれが死霊魔力だ」
「う~ん。あ~あ! なるほどね~。以前、デュラハンにキメラを潰させたのもこの為?」
「まあそういう事だ」
「わぉ」口を細め何度か頷くマーラ「そりゃ貴方にとってはお宝なわけだ」




