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フロアを出てマーラの元へ向かう。
「はい、チクッとしますよ〜」
針が出た物体を持ち、サムに大きく振りかぶっているマーラ。
「よせよせよせ! 殺す気か!?」
「も〜、ルルイエジョークなのに」
「ルルイエの事なんて知らん癖に」
「サムはルルイエに行った事あるの?」
「そもそもあるかも分からない」
「ないさ。だがドワーフの連中は、機械クジラに乗って行ったって話だ。確か…潜水艦だったか」
「はい終わったわよ」
「本当か!?」
「うん。気分はどう?」
「悪くない。喉の渇きが消えた気がする」
「やったじゃん」
「頑張った甲斐あったようだな」
「ああ! おお! わお!? アンデッドだっていうのは本当だったんだな。幻聴や幻覚じゃなかったんだな。だがおかげで助かった。ありがとう」
「ジャスミンのことはもう聞いたか?」
「聞かなくたって察していたさ。今は吸血鬼病の影響か、さほど精神には来てない」
「治したことを後悔していないか?」
「今はまだ分からない。ただまた、王女に会えるように努力はする」
サムの元を離れる。
「可哀想に」
「ふむ」
「そうは思えない?」
「悲しいがな」
「アンデッドだから?」
「かもな。理解はできても、感情が湧かないんだ」
「それはそれで、悲しい」
「ああ。だが、アンデッドになり死の恐怖を克服するのと、摂理の循環を理解したのでは大きな隔たりがある」
「両方持っているあなたの意見は?」
「こうしてお前の事を仲間だと思えている。それが答えだ」
「私には想像しかできないけど、それって凄い事よね」
「そう思うのか?」
「もちろん」
「ンフ」
「あ〜♪ リーケン様。私のデザートを用意してくださってるなんて嬉しいですわ」
「吸血鬼!?」
「ではさっそく♪」
「マーラは仲間だ。お前のデザートではない」
「ンフフ♪ 」
「…………」
目を細め、リーウィアをじっと見つめる。
「そんな……」
「従えないのなら去るんだ」
「と、とんでもありません。このリーウィア、リーケン様のご命令であれば何でも御従います」
「変わった吸血鬼ね (小声)」
小声で耳打ちしてくるマーラ。
「モーラ!」
「はい? 私の名前はマーラ」
「そんなものどっちでもいいのよ」
「いくない」
「ところでリーラ」
「マーラだって」
「必要がない時以外は私の側に来ないでね。それと肌もあんまり見せないようにして。お互いのために、ね?」
「分かった」
「ありがとう。セーラ」
「……うん」
「リーウィア、マーラだけじゃない。イニティウムでは無闇やたら血を求めるなよ」
「え!? リーケン様。それでは死んでしまいます」
「家畜ならいい」
「家畜……。リーケン様…それではリーウィアはすぐに枯れてしまいます。リーケン様に見合う容姿も力も保てません」
「暫くの間は敵対者が多い。心構えとしてだ」
「あぁん♡ それでしたら努力致します」
「眷属はどうした?」
「騒ぎを起こさぬよう、側近以外はホルズエンドで待機させております。リーケン様のご命令があればいつでも」
「ふむ。ではリーウィア。お前には 例の、ニオスと再会していた際に話をしていた奴を迎えに行ってやって欲しい」
「……わ、私がですか?」
「詳細はニオスに聞いてくれ。この奥にいる」
「…………」
「他に信頼できるものがいないんだ。リーウィア、お前にしか頼めない。頼む」
「お任せ下さい♡」
リーウィアは嬉しそうに奥のフロアへ向かっていく。
「私いつか食べられそう」
「大丈夫だ」
「吸血鬼に血を吸われる時って痛いの?」
「大丈夫だと言っているだろ」
「で、また出掛けるの?」
「ああ」
「少しは休んだら?」
「落ち着いたら、そうする」
「アンデッドでも眠ったりするのの?」
「勿論」
「意外」
「吸血鬼やドラゴンと一緒だ。長期間魂を休めることは必ず必要になる。魂は知らずの間に、ある程度の損傷を受けるものだからな」
「老いを気にしなくていいんだから 最高よね」
「時が来れば、リッヂになる手助けをすると言っただろう? 定命の心配はいらない」
「ありがとう。その時はよろしく♪」
「待て、ついてくる気なのか?」
「当たり前じゃん」
「お前は休んだ方が良い」
「ダメよ。退屈で死んじゃう」
「いつデーモンが襲ってくるか分からないんだ。あまり庇う余裕もない」
「私の力が必要でしょ?」
「……否定はできんな。分かった」
「よっしゃ。他に誰誘う?」
「メトゥス! メトゥスと2人で行く予定だった」
「兵士はたくさんいるんだから、もっと連れて行けばいいのに」
「皆手一杯だ。それにアガレスとの戦いに総力を結集させる。いま無駄な損失は困るんだ」
「そんなに強いのアガレスって。バロルより?」
「バロルとは比べ物にならないほど遥かに危険だ。無傷で済まない。撤退も考慮している。もし共に行くのなら、相応の覚悟が必要になるぞ」
「怖がらせないでよ」
「デーモンのペットになるのは、想像以上に辛いものだ」
「オッケー。行くわ。パーティーに1人だけのけものって退屈だから」
「ふむ」
「キュル」
メトゥス、イエナ、マーティン、サムが合流する。
「私も行きます」
「鼠の扱いが分かってるのはあんた達だけだしな。自分が生きる為に手伝うよ」
「吾輩も手を貸す。受けた恩は返さないとな」
「ついてこい」
目的地へ向かう。




