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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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「畏まりました。他には?」

「このニザームの行っていた農奴の廃止だ。とにかく今は繁栄と軍事力の増強を最優先にする。市民権の配布による安全な永住権と引き換えだ。従わない者は国外へ追放する」

「はい。他には?」

「狩猟権の公布だ。許可のない者には一切認めない」

「はい。他には?」

「あ〜ん、今のところは以上だな。2人は何かあるか?」

「共存という新たな試みですので、順次枠を築いていく現在の方針で宜しいかと」

ロレンツォを見るニオス。

「わ、私は特に」

「ふむ、続けてくれ」

「次は税に関する事項です」

「ほお…これは意外と多いんだな。細部の調整は任せてもいいか?」

「勿論です。我々が対応致します」

ロレンツォがニオスに頷く。

「では戦時税の廃止だな。気に入らん」

「はい。他には?」

「待て、この人頭税は戦時税とは異なるのか?」

「名称が異なるだけで、内容はほぼ同じです」

「特に受ける側にとっては、違いが分からない者が多い事でしょう」

「では不採用だな。交易税と取引税は何が違う?」

「これは誰が払うかです。交易税は商人が、取引税は最終消費者が支払います」

「かなり難しく感じるな」

「はい、その通りです。上手く双方の不満のバランスを取らなければ、根底から破綻してしまいます。故に不正対策に無駄な歳出が増加する懸念も増します」

「何か良い案はあるか?」

「そうですね〜。入国税を軽くするのはどうでしょ。これから新たな国を建国されるのなら、中立という認識が強いでしょうし。安全を求め往来が増す可能性が高いかと。また先程仰られた軍事力の強化にも一役買うでしょう。通行税に重きを置けば、街での取引が中心となり、比較的監視が行き届きやすいかと」

「国境沿いで取引されるのがオチかと」

「やりようはいくらでもある。敷居は低い方が良いだろう。それに公平性にも目を配れば、危険を犯すリスクは避けるかもしれん」

「工作の際はお任せを、デーモンより恐ろしい見せしめを用意致します」

「ンフフ」

「……あぁ。で、では宜しいですか?」

「ああ。今の案で最終調整は専門家のお前に任せる」

「はい。では他には?」

「十分の一税は廃止だ。ふむ、王室税と市民税か。このバランスはどうだ?」

「これらは財源の有無よりも、忠誠などの要素に大きく関わってくるかと」

「市民税を多く取り、王室税を軽くするのはどうでしょう? であれば、一定の体現は保てるかと」

「ふ〜む。いいや、王室税は廃止する。その変わり市民税を重くしろ。だが徐々にだ」

「畏まりました」

「安全と引き換えだと、絶対に認知させる」

「はい。他には?」

「土地税か。これは必要なのか?」

「はい。絶対に。ですが、状況を見てから制定された方が宜しいかと」

「具体的には?」

「政体が安定し、市民の気が休まった頃合いかと。ああ、また収入により変化させる方針が良いかもしれません」

「見るからに不満が出そうだが」

「財産の保護を特別に強めるのはどうでしょう? そういう者達は、特別待遇に何よりも心酔する傾向がありますので」

「ではそうしよう。アンデッド兵を財産と警護につけて、優越感を味わわせてやろう」

「他には?」

「実はこれが一番気になっていたんだ。宗教税だ」

「一定にしますか? それとも差異を設けますか?」

「これはかなり微妙な問題です」

「待て、具体的にはどのような仕組みなんだ?」

「この税を納めれば、我々の領土内での宗教の自由を認めるというシンプルな物です。ですが例え、光輝の神々の信仰であっても、認めなければ効果が薄くなります」

「ニオス、専門家のお前の意見が聞きたい。敢えて緩くし、情報を得るというのはどうだ? 正直な意見が聞きたい」

「良い考えですが、リスクが高いです。利用される危険の方が遥かに脅威となり得るでしょう」

「なるほどな。ロレンツォ、制定した場合の財源収入はどうだ?」

「それほど高くはないかと。私の知る限り、今の世界情勢は、宗教に関して非常に緩やかですので。占める割合も、アンデッドという種族の特性上、出だしも相性が良くはないですね。しかし、宗教はは専門外ですので」

「ふむ。宗教学者と言えば、誰を思い浮かべる?」

「クエーサー領域のロドビクでしょうか。奴は称賛に値するほど狡猾ですから」

「私はルド帝国のガレヌス…ですかね」

「ふむ」

「フッ」

「分かってますよ。御二人の言いたい事は」

「ンフフ、師はどうです?」

「ルッケトルシだな」

「おお〜、意外ですな♪」

「誰なんです?」

「言葉で神を説き伏せる事に飽き、最終的に神に洗脳魔法を掛けようとした者だ」

「それは恐ろしい」

「だが面白い奴だろ。きっと会えば気に入っただろう。ハッハッハッ」

「一度会ってみたいものですな。師は実際に会った事がお有りのようですが」

「記憶では一度な。だが、奴はほぼ自我を失っていた。会ったとは言えんだろう」

「残酷ですね。聞きたくはなかった。神は恐ろしい…」

「ロレンツォ、神は王のようなものだ。時には手荒な王もいるだろう」

「そうですな。神に対する考えを改めてなければなりませんな」

「話は逸れたが、他に気になる点はないな。まあ後は頼むぞロレンツォ」

「分かりました」ニオスが念動で書羊皮紙束を全てロレンツォに戻す「では失礼します」

ロレンツォが去る。


「俺は使える奴だと思っている」

「本人も娘も、今のところ気に入っています。ただ、見極めるのはこれからでしょう」

「そうだな。様子を見よう。ニオス、報告の続きを頼む」

「はい。次は非常に重要な事項です。師の肉体に関するものとなります」

「どうしてこうなったのか、判明したか?」

「いえ、地下で再会した際にも申した通り、私の事前知識は皆無に近い状態でしたので。ですが現状を垣間見るに、何者かが意図的に行った可能性が高いかと」

「やはりそうか。モルスの関与はどうだ?」

「関わっている可能性は高いですが、敵対性があるかどうかは疑わしいところです。またモルスの意思に反し行われている可能性も捨てきれません」

「ふむ、プルトーはどうだ?」

「ハッグとの件にあまり計画性は感じられませんでした。ですがこちらもプルトーの意思に反している可能性が高いかと」

「イスティアナの話では、連中は心を入れ替えたと」

「あまり信用性は高くありませんが、可能性はあるかと。真の脅威が何なのか、早急に突き止めるのも必要です」

「俺もそれが引っ掛かっていた。何か重要な事を見逃している気がしてならないんだ」

「佐用ですか。何れにしても、師の記憶が重要な手掛かりになり得る事は疑う余地がありません。引き続き細心の注意を払い、仮に妨害が発生した場合は、都度迅速に調査のメスを入れて参ります」

「上手くいくといいが」

「それが吉報が御座いまして、師の肉体に関する有力な情報をいくつか既に掴んでおります」

「おお!」

「マーラから得た情報を元に、師が再起された遺跡を抑え、既に調査を開始しております。瓦礫の撤去作業は崩落への注意が必要であり、時間を要するものではあるのですが、封印されていた箇所が崩落を免れ残っておりました」

「それなら知っている。手形の台座があったところだろう?」

「はい、恐らくその先に重要な物があるかと。また師の囚われていた棺ですが、棺自体は有り触れた資源で造られた物でした。ですが台座は一種の転移魔法の技術が備わっていた物です」

「それは予想外だな。間違いないのか?」

「持って来い」障壁が開き、アンデッドタロンが一礼した後、俺の側のテーブルへ破片を置き出ていく「これが台座の一部です。どうぞご覧になって下さい」


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