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黒いローブを身に着けたリザードマン2人が談笑している。
「おいJ、マスクを付けろ」
「なあK、あんたには分からないだろうが、俺はこう見えても結構イカした顔なんだぜ」
「…………」
「イカした…顔なんだぜ」
「着けろ」
「分かった。まったく冗談が通じねーんだから」
「一先ず近隣の使えそうな傭兵達を集めました。即戦力にはなるでしょう」
「ふむ、随分と栄えているようだな」
「確認できただけでも、既に4000に上ります。戦闘集団ばかりではありませんが、実体は10倍ほどはあるかと。こちらです」
アンデッドタロン達がドアを守る、奥のフロアへ向かう。
独房の置かれていたフロアへ着く。
独房やオートマトンは全て片付けられており、緑の篝火がフロア全体に灯されていた。
階段下のフロアの奥には、多数の黒いスケルトンが目を緑に輝かせ整列していた。
階段を降りる傍ら眺める。
「お前がやったのか?」
「はい…。勝手ながら。戦力が必要と判断しまして…」
申し訳なさそうに言葉を返すニオス。
「素晴らしい」
「その言葉を頂けて、何よりです」
「どこからこれほど調達した?」
「師よ。ここは以前私が管理していいた場所です」
「ハッハッ、そうだったな。いやぁ〜素晴らしい」
「スケルトン・ファントムだったか?」
「はい。更に上位のスケルトンも用意できたのですが、バランスを優先しました」
フロア中央にある、グレーター・ファントム・スケルトン2体が守る仕切りに入る。
仕切りが閉じられる。
台座の上に、囲いで覆われた白く輝く球体が発光し、囲いが激しく自転している。
「これは?」
「一種の障壁装置です」
「デスコアではないのか?」
「デスコアという物は存じ上げませんね。私の保管していた装置はこれです」
「ほお」
「いずれ、デスコアをお探しいたします」
中心の戦略テーブルへ向かう。地図が広げられ、羊皮紙、硬貨、書物が置かれていた。
「では師よ、これまでの調査に関する報告をさせて頂きます」
「ああ」
「先ずは現在のイニティウムの地図です。こちらが近隣の詳細な地図となります」ニオスが丸められていた小さな羊皮紙を念動で俺の目の前のテーブルに広げる。そしてナイフを念動で浮かべ、大きな地図を突き刺す「ここが我々のいるロクスソルス、ニザームと呼ばれるドワーフ帝国の領地の1つです。主な用途は鉱石類の産出と、飛行船の製造及び砲台の製造となっています」
「手作業か?」
「大半はそのようです。オートマトンは製造の類には深くは関わっていないようです」
「原材料は?」
「多種多様です。ですが一般的な地下鉱物資源が多いようです」
「ふむ」
「我々のいるロクスソルスはニザーム帝国の外縁部に位置しております」ニオスがナイフで示していく「ロクスソルスの側、この一帯に広がる森林地帯を挟み、隣接している西側の国々が、嘗てモナーク帝国と呼ばれていたエルフの大帝国のようです」
「モナーク? エスティナとは辻褄が合わなくなるな」
「それが少し込み入っておりまして、古代のモナーク帝国の名を継ぎ、国名として使用していたようなのです」
「まったくの別物か」
「はい。このロクスソルスに最も近い国として、ウッドエルフが中心となり統治している、サンクチュアリ共和国が御座います。統治地域の大部分が森で覆われていますが、かなり整備が行き届いています。その南に位置するのがダークエルフが中心となり統治している、ノクターナル王国です。この一帯の大部分は湿地帯となっており、沼地も数多く領土の大半を占めております。居住可能地域が乏しい反面、資源採掘の難航により、価値がある土地が多いと推測されます。この一帯から山脈沿いに北上していくと、ハイエルフらが統治するミストラル帝国となっております。彼らは所謂、モナーク帝国のエリート層を中心とした者達であり、このイニティウムでもかなり最先端の魔法技術を有しているようです」
「具体的には?」
「国境沿いに魔法照射タワーが数多く建造されておりました。送った偵察のカラスがタワーの自動砲撃に遭い、損失を被りました。また何重にも障壁が張り巡らされており、領土への侵入を困難かと。幸い、彼らには戦争の意思という物が乏しい事が判明しており、今のところ全てにおいて中立の立場を取っているようです。次にニザーム帝国の東に位置するのが、リベルタリア帝国と呼ばれるヒューマンが中心として統治している大帝国が御座います。小さな内乱が絶えませんが、それでも尚、同族意識が非常に強く、容姿や価値観の異なるヒューマン種の全てが、ほぼ1枚岩に等しい状態となっております。彼らは非常に信仰心が強く、とりわけ光輝の神々を心から崇拝しており、我々アンデッドを含め、それらの者達を憎悪や嫌悪の対象になっております。プリフィカ9についてはこの国から早急に行って参ります」
「ふむ」
「このリベルタリア帝国と、ニザーム帝国は数年前から宗教上の相違から戦争を行っているようです」
「根深いのか?」
「戦争自体は最近ですが、火種はかなり前から燻っていたようなのです」
「なら利用できるな」
「ええ。和平は蓋然的にはあり得ない事でしょう。現在リベルタリア帝国内でも、信仰する神々での相違対立が起きているようなのです。こちらも上手く利用できるかもしれません。そして次の問題です。北側の中心地帯一帯を有する大帝国、ウェルミス帝国です。彼らはゴブリン、トロール、オーク、オーガ、ミノタウロスなど、謂わば知性に遅れを取っていた種族らが結束した国であり、その急進さは目を見張る物が御座います。しかしながら文化水準は低く、野蛮で粗暴な国家の代表と認識されております」
「軍事力は?」
「後ろ盾はマーゴッドと呼ばれる神が精力的に支援しているようです」
「狂気か。厄介だな」
「ええ」
「誰が昇華に手を貸した?」
「ティモールが最有力です。次点でプルトーかと」
「恐らくプルトーだろう」
「であれば、最悪の事態も考えられます」
「そうだな。続けてくれ」
「このニザームの南部にはとても深い森林地帯が広がっております。あまりに深く、また木々が特殊な魔力を放っており、空からの情報収集には限界が御座いました。ですが入手できた情報によると、この一帯を支配しているのはドラゴン狩りを生業としているハイオークの部族です。評判を聞くに、腕は確かなようです。また部族国家という事もあり、常に民会が開かれており、外交に関してはそれほど閉鎖的ではないようです。他にも数多くの国々が御座いますが、現在の要員ではこの程度となります」
「流石だなニオス」
「恐縮です。報告を続ける前に先に…」
「ニオス様。例のドワーフが来ております」
テーブル端に置かれた頭蓋骨が喋る。
「通せ」
アンデッドタロンが障壁の仕切りを開け、ロレンツォが入ってくる。
「ああ、良かった。こ、これはリーケン様」
少し挙動不審なロレンツォ。
「堅苦しいのはいい。こっちへ」
「では」ロレンツォが後ろで手を組み、恐る恐る歩きながら俺の反対側のテーブル前へと立つ「正直、本物だとは…。それに、あなたがこの場にいなければ、死を覚悟していました」
「ンフフ、長く留守にしていたからな。迷惑を掛けたな」
「とんでもない。またこのような場所に立ち会わせて頂けるだけで光栄です」
「できているか?」
「はい。ロレンツォがローブの左の内収納から折り畳まれていない書類の束を取り出しテーブルへ置く」
ニオスが念動で自らの前へ持っていき、軽く目を通した後、半分を俺の前へと置く。
「説明を」
「リーケン様。一番上の束は、兵や諸侯などの賃金に関する書類です」
目を通す。
「ふむ」
「詳細に関しては後程、ゆっくりと目を通した後にでも修正箇所を提示して頂ければと」
「分かった」
「まずは今後の制度方針に関して、大まかな指標を提示して頂きたいのです」
「ふむ。だがそれには専門家が必要だ。評議員や書記官…」
「はい。それらの調整に関しては私が進めているところです。迅速性を高める為、不便ですがお願い致します。この場では私が代役を務めますので」
「大丈夫か? 少し頼り過ぎだと思っているところだ」
「問題ありません。久しく師のお役に立てていなかったので、寧ろ光栄です」
「それは助かる」
「こちらは財務に関係する法案の事項などに関する資料です。謂わば下地となります。なにか提案がありましたらどうぞ」
「そうだな。一番に徴兵制を取り入れたい。だが強制はしない。餌で釣る方針だ。具体的には、軍に入った者には市民権を与え、同時に小規模な土地も与える。また市民権の証明書には予算を惜しまない。とにかくあらゆる手で偽造を防ぐ。市民権を有すると同時に、保有する土地と財産全てを我々が保護すると誓いを立てる。戦場で功績を立てた者や、名声を得た者には、相応の地位や報奨を与える。装備や勲章、土地の購入権利などだ。何よりも何者でもチャンスが掴めると思わせたい。入隊には種族、身分なども不問にしたい」
羊皮紙に記入していくニオスとロレンツォ。




