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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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「悪いが起きたばかりで、神と戦うのは困る」

「いいのよ。今回は誠意ある顔合わせが目的だったから。橋は架けられた。用がある時はいつでも渡って来てね。待ってる」

「そうしよう」

指を鳴らすイスティアナ「帰るわよ」

サラマンダーが指輪からゲートを開き、イスティアナと傭兵達がイニティウムを去り始める。


ゲートへ向かう傭兵2人が話している。

「ようやく帰れるな」

「俺はこっちの方がいい」

「冗談だろ」

「皮膚が燃えてるサラマンダーのお前と違って、俺はヘルよりここの方が好きなんだ」

「種族は多いし、神の大半はこの領域を欲しがるし、季節なんて16もあるんだぞ? 観光ならまだしも、落ち着くような場所じゃない」

「お前、意外と詳しいんだな」

「実は俺のいとこが……」

イスティアナ達が全員去る。


「あのデーモンは抜け目のない者です。バロルへ偽情報を流布させていました」

「そうか。俺も後始末に利用された訳か」

「用心して下さい」

「だからこそ、利用価値があると思ったのだろう?」

「ええ、実りがあると良かったのですが」

「満足だ。ニオス。良くやった。一先ずここに兵を置き占拠しておけ」

「畏まりました。その件はバディホーに一任させます」

「ではニオス様、リーケン様。早速仕事に取り掛かります」

バディホーが奥のドアから部屋を去る。


「ニオス、報告を聞こう」

「勿論です。ですがあちらのベースの方が何かと」

「分かった。行こう」

ニオスと共に入ってきたドアから部屋を出る。


「あのバディホーだが、本当に信頼できるのか?」

「はい。問題ありません。バディホーとは非常に長い付き合いです。それに師も気に入るほど腕が立ちます」

「奴を信じるお前を信じよう」

「恐縮です。バディホーから既に我々が不在の間に起きた出来事について報告を受けております。それから師よ。言いそびれておりましたが、援護に向かえず申し訳ありませんでした」

「正直助けが欲しかったぞ。もう少しで闇の牢獄に囚われるところだったからな」

「申し訳ありません」

「ハッハッ、半分は冗談だ。塔の者だけではないのだろう。本当はなんだ?」

「何かが干渉しており、ゲートに入れなかったのです。私自身ゲートを開こうとしましたが、今はまだ本来の力半ばでして、不甲斐ないです」

「なら仕方がない。力は取り戻せそうか?」

「幸い、忌まわしいハッグに吸われていた程度ですので、死霊魔力さえ取り戻せばすぐにでもお役に立てるかと」

「お前程か。それはそれで大変だぞ」

「解決策を見出します。報告の一部に触れてしまいますが、世界は想定以上に戦いで溢れておりました。比較的容易かと」

「あ〜あ、我々にとっては好都合な時代だな」

「ええ」

「ところで、俺達より先に老人が出て来なかったか?」

「いいえ、誰も。カラスさんに捜索させましょうか?」

「いや」立ち止まる「それよりニオス、プリフィカ9を覚えているか?」

「勿論です」

「そうか、少し意外だが。初期段階の手筈はもう整えた。残りの調整を頼む。分かっていると思うが、最優先だ。障害排除の手段は問わない」

「他に知っている者は?」

「現段階の記憶では不明だ」

「では私と近しい立場が有力ですね。かなり数が限られますが、そちらにも注意を払っておきます。おおよそですが、4名程でしょう」

「これはトップシークレットだ。慎重かつ迅速に事を運べ。正直、悠長にし過ぎた」

「心得ております」

「モーク、ロレンツォという2人のドワーフに会わせる」

「お任せを」


ヘルの純火に触れた事で、今まで以上に知識や記憶が戻って来たのを感じる。

同時に自身に恐ろしさを感じるのは気のせいだろうか。


その時、ニオスが突然壁に向かってデスライトニングを放った。

イスティアナの話は本当だったか。ニオスは計り知れない程強力なウィザードのようだ。あまり背を見せぬようにしなければ。


「出て来い。我々の目を欺く事などできんぞ」

「危ないじゃないニオス! 私だって不死身じゃないのよ」

赤いローブの吸血鬼が姿を現す。

「おや、おや、おや。誰かと思えば。見飽きた魂だ」

ニオスが身構えるのをやめる。

あれを避けたのか。凄いな。

しかし、気配に気付けなかった。

「リーウィアだったか?」

「はい♡ ……はぁ〜、手荒い歓迎よね。ニオス」

「師はリーウィアを御存知で?」

「ああ、俺の指を持ってた奴だ」

「あぁん……」

リーウィアはなぜか酷く動揺している。

「どうしてここにいる?」

「リーウィアは、リーケン様の為ならどこまでもお供致しますので♡」

「それで、何が目的だ?」

「師よ。リーウィアはこう見えて、我々と古い知り合いなのです」

「ほお」

「刺さる言い方ね。んんっ、ではリーケン様、本当に記憶を無くされているのですね?」

2つの声質を使い分けるリーウィア。

「そう、だが」

「あぁー! なんとっ。では……このリーウィアの事も、全く覚えていらっしゃらいのですか?」

「今のところは」

「うぅ♪」両手で顔を覆い、俯くリーウィア「リーケン様」俯いたまま1枚の羊皮紙を手渡してくるリーウィア「これを」

念動で羊皮紙を受け取る。

「これは?」

顔を上げないリーウィア。

「声に出して、是非読んで下さいませんか?」

丁寧に折り畳まれた羊皮紙を広げ、簡易な短い文を読む。

「リーウィア、お前さえ良ければ、共に来てはくれないか?」

「はい!」勢いよく顔を上げ満面の笑みを浮かべるリーウィア「リーケン様から直接お誘い頂けるなんて、リーウィア嬉しいです!」

「フッ、愉快な奴だ。だが気に入った」

「本当ですか! 嬉しいです〜♪」

無邪気にはしゃぐリーウィア。

「お前は相変わらずだな」

正気に戻るリーウィア。

「あなたもねニオス」

「ニオス、こいつは4人の内に含まれるのか?」

「いいえ」

「リーウィ…」

「はい!」

言い終える前に言葉を挟んできた。

「何か聞いていたか?」

「いいえ、リーウィアはずっとリーケン様に見惚れていましたので♡」

まったくなんだこいつは。

「俺を馬鹿にしているのか?」

「と、とんでもありません!!」慌てふためき、後退るリーウィア。

「師よ。リーウィアはあれですが、普段からこうなのです。それに、師には決して嘘をつかないかと」

「そうか。なら、まあ信じよう」

「私の事をあれって、失礼ねニオス」

「滅多にない擁護だ。感謝しろ」

「歩きながら話そう」

「はい」

「リ、リーウィアめもっ」

片手を胸に置き、訴え掛けてくるリーウィア。

リーウィアに頷くと、リーウィア嬉しそうにし、ついて来る

リーウィアが嬉しげに隣に来ては、目を輝かせながら見上げ、じっと見つめてくる。

「詳細はさておき、ニオスは嘗ての弟子だった。お前と俺の知り合った経緯を知りたい」

「私も是非聞きたいですな〜」

含みがある。

「それが偶然だったんです。まさに運命!」両手を胸の前で握り、声高らかに続けるリーウィア「出会ったその瞬間から感じたのです。これ程深く、見通せない程の魂を持ち、今まで出会った誰よりも知識に溢れる姿」姿勢を戻すリーウィア「それからというもの、リーケン様の事が頭から離れなくなってしまい…調べに調べ抜いた時には、もうリーケン様に心を骨抜きにされておりました。私がリーケン様の知識を身につける内に、抗いようのない心の束縛に襲われました。私の心はいつの間にかリーケン様の事で溢れ返っていました。身も心も魂も、リーケン様の魅力に惹かれ…。もうかれこれ3000年前から愛しています。今では出会った頃よりも、もっと愛しくなりました♡」


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