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「グゥアァーーーーーー!!!!」
デーモン達を殲滅し終えた巨大なシャドウシーカーが、こちらへ向かって咆哮を上げると勢いよく向かってき始めた。
「俺達もさっさとずらかろう」
「賛成」
「キュル」
すぐさまイニティウムへ繋がるゲートへ有翼を放ち向かう。
バロルの死体には既に小さな茸が生え始め、シャドウウォーカー達が群がり、バロルも体に宿る地獄の炎が消えるのを待つかのようにバロルの死体を取り囲み突いていた。
一心不乱に巨大な茸すら薙ぎ倒しながら向かい迫ってくる巨大なシャドウシーカー。
羽ばたき、速度を落とす事なく振り返り、大規模な死の火球を複数シャドウシーカーの顔面へ放つ。
だがシャドウシーカーの体の表面は反射する障壁に覆われており、火球は消滅した。
シャドウシーカーがバロルの体を踏み潰した。
シャドウシーカーの足元に念動を放ち、土を大きく深く広げ、巨大な穴を形成する。
シャドウシーカーが穴で足を躓き、倒れる。
「ンンーーーー!!!!」
シャドウシーカーの叫びが大きく響き渡る。
「時間が稼げた」
「さすが」
「マーラ、翼での飛行が上手くなったな」
「物覚えは良い方だから」
「ハハ」
シャドウシーカーが下腹部から多数の浮遊する球体を放ち、全ての球体が向かってくる。
「嘘でしょ。何あれ」
「別の手を考える。マーラお前は……」
その時、シャドウシーカーが起き上がると突然背を向け、宙に現れた渦巻く青黒いゲートへ吸い込まれていき、姿を消した。同時に浮遊していた球体も消滅した。
「凄い。何をしたの?」
「何も」
「じゃあ…どうなってるの?」
「分からない。だが妙な事が続いている」
「でも良かった。諦めてくれて」
「そうだな」
遠方にいたシャドウシーカーも向きを変え、こちらと逆方向へ歩き始めていった。
気に掛かる現象と勇敢なマーラに窮地を救われ、ゲート付近へ無事に辿り着いた。
地上へ降り、体を休めながら歩きゲートへ向かう。
「本当に助かったのよね? 生きた心地がまったくしない」
「足が透けてるんじゃないか?」
「面白い」
真顔のマーラ。
「お前のおかげだ。マーラ」
「メトゥスもね」
「ああ。改めて感謝だ」
「キュル!」
「ンフフ、最初はいつか私を食べるんじゃないかと思ってたけど、あの時の私に言ってやりたい」
「そんな事思ってたのか」
「キュル…」
「生者だもん。そこは分かってメトゥス」
「キュル」
「ありがとう」
「メトゥスの言葉が分かるのか?」
「あぁん、そう言えばそうね。はぁ、私も何が何やらさっぱり」
「でもどうして戻って来たんだ?」
「別に。ただ嫌な予感がしたから。つい体が」
「そうだったのか。イエナ無事なんだな」
「まあね。でもイエナったら、あなたの命令に反するとか何とか言って、行こうとしなかったの」
「まあそれは仕方がない。イエナはもうアンデッドだからな」
「私もアンデッドになったら、融通が利かなくなったりするの?」
「それは個々によって違う。どれだけ魂が強いかで、自我の強さの有無が変わってくるんだ。はっきりとした事は、やってみないと分からないんだ」
「そうなんだ」
「だからできれば、お前には十分に準備をして貰いたい。お前と冒険するのは楽しいからな」
「私も」
「ハッハッ、闇に永遠に囚われそうになってもか?」
「そっ! だってこんな経験、普通出来ないでしょ?」
「そうだな」
「まあ、本音は怖かったけど。今となっては良い話のタネよね。それと実はゲートで待ってるのはイエナだけじゃないの」
「ほお」
白い焚き火で暖を取っているイエナとヒューバート。そしてヒューバートの連れる魔物が視界に入る。
「これはこれは、2人とも無事で何より」
イエナが立ち上がり、こちらへ急いで向かってくる。
俺の様子を見て驚いているイエナ「すみません。行った方が良いとは思ったのですが……その……」
「大丈夫だ。気にするな」
「はい……」頬や鎧が汚れたマーラを見るイエナ「マーラ……。私……」
「右に同じ。ヒューバート。リーケンに話があるんでしょ?」
「そうとも。さあ2人ともこっちに来て寛いでくれ」
全員で焚き火を囲む。
白い焚き火の影響か、周囲にはシャドウウォーカーらが群がって来ていない。
よく見るとヒューバートが何かしらの強力な障壁も張っているようだ。
「それで話とは?」
「お前さんを待っている間、2人から聞いた話なんだが。そこのアンデッドのお嬢ちゃんの服に隠れている鼠が、どうやら私の魔道具を盗んだかもしれないと聞いてな」
「あ、あれは不可抗力だった。もう何度も謝ったし、許してくれると言っただろう」
「勿論許した。それに怒っている訳ではないぞ。ただお前さんが持っているその魔道具を返して貰いた為に説明しただけだ」
「ふぅ〜」
「そうしたいところだが、これを持つと妙に懐かしい感覚に囚われてな」
「そうなの? そんな事言ってたっけ?」
「思った事を全て口に出す馬鹿なんていないだろう」
「それはただ言葉を濁しているだけなのか? それとも…」ヒューバートは妙に真剣な表情で聞いてくる。
「手放したくない訳じゃない。ただ、元々こちら側の物だと思うんだが、これをどこで手に入れた?」
「それは話せない。だがお前さんの言う通り、それは恐らく、アンデッドに…いやお前さんに関係する物だろう」
「どういう意味だ?」
「初めて会った時から、お前さんの記憶が欠けているのには気が付いていた。まあ、神々の思惑にはあまり関わりたくないというのが常でね。これ以上お互い詮索せず、それを受け取ってお終いにしてくれないか?」
「分かった」
「さて、じゃあ儂はそろそろ行かせてもらうよ」
「気を付けてな」
「待ってヒューバート。この本をあなたに返さなくちゃ」
マーラが地面に置いていた本を持ち上げる。
「いやいい。これも何かの縁だ。その本はお前さんにやるよ」
「いいの!? 貴重そうだけど」
「なら大切にしてくれ。では」
そう言うとヒューバートはゲートに入り消えていった。
「良かったね。マーラ」
「タダで貰うと、何か裏がありそうで怖いのよね」
本の表紙に付いた黒い砂を払うマーラ。
「……マーラ。私に怒ってるの?」
「うん」
「マーラ、イエナのせいじゃ無いと言っただろ」
「でももし私が死にそうな時、他に命令されてる事があったら、そっちを優先して、私を見殺しにするって事でしょ?」
「そんな事しないよ。絶対にしない」
「そう、なら安心ね」
「マーラ……」
マーラがイエナに手を伸ばし握手を待っている。
「ん!?」
「でも友達だから、一度は信じる」
マーラと握手するイエナ。
「絶対見捨てたりしない」
「私もよ。信じてる。もう本能に負けたりしないでね」
真剣な表情で頷くイエナ。
「それで…その本にはどんな事が書かれているんだ?」
マーラが得意気に表紙を見せる。
「偽の神々」
「退屈そうだな。待て、読めるのか?」
「ンフフ。普通、本に驚くでしょ」
「そうか〜」
「だってヒューバートの持ってた本よ」
「イエナは聞きたいでしょ?」
「勿論♪」
「中身は読んでないのか?」
「誰かさんを助けに行くのに忙しくてタイトルだけ」
「ああ、悪かったな」
メトゥスが枯れて硬化した茸を火へ焚べる。
「じゃあ、行くわよ。あぁ〜♪ ドキドキ、ワクワク」
マーラが緊張した様子で本を開く。
だがマーラの表情が一瞬で無表情に変わる。
「どうしたのマーラ!?」
「これ見て! 何も書かれてないんだけど」
「本当だ」
「もしかして、私達には見えないだけで、リーケンは見えてたりする?」
「いいや、右に同じ」
「本当?」
マーラが声を荒げる。
「マーラ、俺に八つ当たりするな」
「ショック……。悲しぃ〜」
「貸してみろ」
マーラから本を受け取る。




