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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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105

カース、ディケイ、デセラレーションをバロルに放ち浴びせる。

バロルが翼を羽ばたかせながら飛び立とうしているが、翼には触手が突き刺さっており上手く飛び立てないようだ。

周囲に群がるシャドウウォーカーらが、俺がくたばるのを待っているようだ。シャドウウォーカーらが魔力干渉しているせいで転移ができない。


その間に死の活力を放つが、回復は微々たる物で時間が掛かる。それに死霊魔力の活性が圧倒的に追いついていない。

バロルもかなりダメージを負っているが、それはこちらも同じ事。


バロルへ放ったデセラレーションは直ぐに解ける。

バロルが剣を杖代わりに倒れ込むのに耐え、徐々に傷を再生させていく。


力を振り絞り、死の火球でシャドウウォーカーらを遠ざけ、バロルの元へ転移する。

バロルが驚きこちらを見てくる。

そのまま塞がっていくバロルの傷口に腕を突っ込み、ありったけの力で死の火球を放つ。

「グア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!」

バロルが曲刀で腕を切り裂いてくる。離れた後もバロルに死の火球を放ち続ける。

バロルの体内で何度も爆発が起こり、バロルが体の制御を失っていく。

バロルが念動を放ち吹き飛ばそうとしてくるが、念動で受け止める。

「ヌア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!」

「グア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!」

互いに念動で押し合い、次第に中央の空間が轟音を上げながら裂け始めた。

「クッ!! ヴゥ゙!!」

何とか踏ん張り、念動を放ち続ける。

「ア゙゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!」

押し迫る念動が一瞬で消え、空間の切り裂かれる轟音と共に、前方のあらゆる物が粉々になり吹き飛んでいく。テネブラエに凄まじい衝撃波が走っていった。

目の前にはあらゆる物が吹き飛んだ空虚な景色と、宙に浮かぶヒビ割れた球体のデーモンコアだけが残っていた。


「ハァ…ハァ…」

体に力があまり入らない。

倒れないようゆっくり歩き、デーモンコアへ向かう。

「ウオ゙ォォォォ!!!!」

全身がヒビ割れ、体内から赤い溶岩血が流れているバロルの肉体が一瞬で再生し、念動で持ち上げられ地面に叩きつけられた。

「忌々しいリッヂめ!」一点に力を集約させたバロルが曲刀を振り下ろしてくる。バロルの曲刀を念動で受け止める。だがじりじりと押され、剣先が額に迫ってくる「貴様の魂を未来永劫苦痛で満たしてやる!!」

「うぅ……なら、お前も道連れだ」


「グハッ」ホーリーピラーを放とうとした時、バロルの力が消滅していった。周囲から灼熱が消え、バロルの全身から炎が消えていく「ディスコルディアよ……」バロルの目に宿っていた炎が消えると、バロルは横へ倒れた。

バロルが倒れると、そこにはマーラが立っていた。


「脆いリッヂ。私がいなきゃダメみたいね」

マーラがバロルの背に足を当て「んっ!」短剣をバロルの肉体から引き抜く。


「マーラ、助かっ……」

マーラを呼ぼうとしたその時、マーラの足元から闇の手が現れ、マーラの体を掴むと地面へ引きずり込んでいく。

「くそっ! なにこれ!?」

マーラが短剣を振り回し、必死に抗っている。だが闇の手がマーラの腕や肩を抑え込み、マーラが闇の手に埋もれ次第に姿が見えなくなっていく。

念動でマーラに纏わりつく闇の手を振り払おうとするが、上手く力が入らない。


次々と地面から闇の手が現れバロルの死体も掴み、地面へと引きずり込んでいく。


既に足は掴まれており、引きずり込む闇の手に身を任せるしかなかった。

最早バロルとの戦いで力は殆ど残っていない。

魔力の溢れるイニティウムと違い、闇が立ち込めるテネブラエでは力の戻りも遅い。


メトゥスが引っ張り上げようと触手で腕を掴み引っ張り上げてくる。


「リーケン!」

マーラの叫び声と共に、マーラが完全に地面に埋まっていき見えなくなってしまった。


「ギュル」

「メトゥス、離せ」

「キュル…」

「今度は俺がマーラを救わなければならない」

メトゥスが触手を離す。


視界が一瞬で闇に染まり、何も見えなくなった。


…………………………。


…………………………。


…………………………。


…………………………。


何も見えず。


何も聞こえず。


何も感じない。


視界は完全に闇に覆われてしまっているが、意識だけはまだはっきりとしている。

ここで冷静さを欠いては、闇に呑まれてしまう。

不可思議だが、どうやら今のところは魂を喰らわれずに済んだようだ。


死の炎を手に宿らせ周囲を照らす。

死の炎を照らすと闇の手が引き下がっていき、トンネル状に道ができ視界が開けていく。


周囲全てが蠢く無数の闇の手に覆われている。

死の炎で引き下がった腕は再び伸び、こちらを掴もうと近くまで手を伸ばしてくる。だが再度死の炎を嫌うように引き下がっていく。

意味もなく繰り返し伸びては縮むを繰り返している。

死の炎を宿しつつ先へ進む。

後方で炎の明かりが届かなくなると闇の手が開いた道を塞ぐように覆っていく。


微かに生命の痕跡を感じ、先を急ぐ。

少し進んだ所で空洞が出来ており、地面を含め周囲一帯を覆う壁、天井が鼓動が脈打っている。


中心でマーラとバロルが其々全身を掴まれたまま意識を失っていた。


すぐさま意識を失っているマーラへと近付き、マーラを掴んでいる闇の手を引き剥がす。

だが先程の闇の手とは異なり、死の炎では逃げず、全体が激しく脈打ち、触れると痛みは感じないが自身の掴んだ腕も激しく脈打ち始め、凄まじい不快感が腕全体に走っていく。

「ヌア゙ァ゙ァ゙!」

念動で闇の手を引き千切る。


引き千切った後も吸盤のようにマーラの皮膚に吸着している闇の手を引き剥がしていく。

だが、黒く粘りの闇の液が、マンティコアの血液で作られた接着剤のように強力に吸着していて中々剥がせない。

「くそが!」


手は再びマーラの皮膚に吸着していってしまう。

様子がおかしい。

マーラはまるで……。


「こ、ここは…。あっ、ああ! た、助けてくれ!」

何故かバロルが意識を取り戻したようだ。

なぜディスコルディアの元へ行かなかった。


再び力を込め、マーラを掴む闇の手を引き剥がすのを試みる。

「ンンッ! どうやらディスコルディアに見捨てられたようだな」

「頼む。助けてくれ!」

「意識が戻ったのなら自分で抗え。ンン!」

「ハァ…ハァ…」バロルが抵抗しようと必死に試みているようだ「駄目だ! 力を吸われ続けていてどうしようもない。どうすればいい?」

「ンン!」

いくつかの闇の手がマーラから引き剥がせた。

何故こんなに必死にマーラを喰らおうとするんだ。

「そんな獣人より俺の方が役に立つ。アガレスを排除したいのだろう? 俺が手を貸す!」

「黙ってろ!」

「アガレスは……ア゙ァ゙! そんな……よせ。こんな最期は嫌だ。ヘルに戻りたい。ヘルに戻りたい……」錯乱したバロルが叫び声を上げていく。

バロル同様、何かが迫って来るのを感じる。

「ンン! くそぉ! これじゃあ間に合わない。ハァ、ハァ。力が足りない」

「ディスコルディアよ。どうか、どうか御救いを」


必ず何か方法があるはずだ。

周囲を見回し方法を探す。

だが何もない。


その時、蠢く壁の奥から迫ってくる気配が強くなってくる。

「ああ、ダメだ。ダメだ。こんな所でくたばってたまるか!」

バロルが無我夢中で必死に抗い始めた。


マーラの魂まで消滅するかもしれないが、もうあの方法を試すしかない。


その時、頭上から青黒い光が差し込んできた。

この光の感覚には覚えがある。

差し込んだ明かりに体が触れると宙に浮き、上昇し始めた。頭上の先にはテネブラエの空、宇宙が見え出口らしき場所へ引き込まれ始めた。

二度も俺を救ってくれたマーラを置いてはいけない。

マーラの体を掴むと、闇の手が引き下がり消滅していった。


「頼む……」


〘⇄〙この哀れなデーモンに同情するべきか。だが救うにはリスクがあまりに大きい。


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