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ヴォイドの呼び声Ⅰ虚無の跫音  作者: 逆立ちハムスター


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102/121

102

背後から飛翔物が迫るのを感じ、気付いていないマーラ、イエナを骨壁で覆い、念動で壁際へ移動させる。

自身の背に展開した骨壁を突き破り、避け損ねた円形のエッジ刃が助骨を掠めていく。そのまま刃は恍惚な表情を浮かべこちらを見つめていた吸血鬼の首を刈り取ってしまった。

吹き上がった吸血鬼の血を念動で回収する。


横では一体のボーンゴーレムが腹から横に真っ二つに切り裂かれていた。

強烈だな。

こちらを見下ろしていた吸血鬼達にも流れ刃が当たり、何体かが体が引き裂かれている。

尚も次々と飛翔してくる刃。有翼を放ち、マーラ達の元へ退避する。

だが刃がこちらを追ってくることはなかった。

絶え間なく飛翔する多数の刃はこちらではなく次々と吸血鬼達へ命中していく。


赤いローブの吸血鬼は倒れる事なく首無しのまま守護の布陣を放ち、飛翔してくる刃を障壁で防いでいく。刃に刈られ地面に転がっていた首が念動で宙に浮かび、体へと戻っていく。そして顔の血色が戻ると、再び恍惚な表情を浮かべ、大きな黒い翼を生やし、二本の鋭利な牙を生やす。なぜか見つめてくる。

目を逸らすと翼を生やし、高く飛び立つ。そのまま刃を避けつつ、刃の飛翔方向へと向かっていった。赤いローブの吸血鬼が飛び立つと共に、多数の吸血鬼が頂上から次々と飛び立ち追従していく。


刃はこちらが入ってきた入口から放たれており、一旦止むと多数の吸血鬼ハンターの格好をした者達がフロアへとなだれ込んできた。

吸血鬼ハンターの格好をした者達は咆哮を上げると牙を剥き出し、種族型吸血鬼へと変化していく。翼を背中から生やし、頂上から飛び立った吸血鬼達目掛け迫っていく。


バラバラになった骨を自ら再生、結合させ、元の体へと戻ったボーンゴーレムがすぐさま合流する。

指示を出し、ボーンゴーレムに両脇を固めさせる。

2人の骨壁を解く。

「一体何が起きてるの!?」

「さあな。だが用は済んだ。もうここに用はない」

両側の吸血鬼達が空中で激突し、互いを掴み合い、噛みつき、肉を抉り合いながら激しく回転し、そのまま勢いよく壁へと激突していく。

流れ刃や魔法が時よりこちらへ飛翔してくる。

「危っ!」

マーラが避け、壁際まで下がる。


壁を叩くとそれほど厚みがないのが分かった。

精々70、80程度。

それにこの材質なら行けるだろう。

ボーンゴーレムに壁を突き破るよう指示を出す。


イエナの肩から守護の布陣を両手を掲げながら放ち、呆然と戦況を見つめているマーティン。

「なんてこった。巻き添えなんて御免だ」


一瞬、ボーンゴーレムが壁を突き破ったかのように見えたが、壁は自然に崩れ落ちた。

「こちらには興味がないようですね」

「狙いは奴らだろうからな。さあ行け」

ボーンゴーレムに先導させ、外へ向かわせる。


立ちはだかる吸血鬼達をもろともせず、両手で容易く粉々に切り刻んでいく赤いローブの吸血鬼。

既に地面に多数転がる吸血鬼達の亡骸。

ドアの方からは絶えず多数の吸血鬼がなだれ込んでくる。

なだれ込む中央には、体格の大きな吸血鬼が立ち、赤いローブの吸血鬼を静かに静観していた。

体格の大きな吸血鬼と目が合う。だが吸血鬼はすぐに目を逸らし巨大な翼を生やすと、両側にいる吸血鬼に指示を出し始めた。


「リーケン、行かないの?」

壁穴の上部に手を置き、マーラが話しかけてくる。

「その名で呼ぶな」

ボーンゴーレムに追従の指示を出し外へ向かう。


「「アァァァァ!!」」


「中もやばいけど、外もやばいみたい」

外では多数のシャドウウォーカーが周囲に集まり、雄叫びを上げていた。

さらに下りになっている向こう側の大地にいた複数の巨大なシャドウウォーカーが向きを変え、こちらにゆっくりと向かってき始めた。

「終わりだ…」

震える声で嘆くマーティン。

「ゲートまで行くぞ。急げ」

ボーンゴーレムに先導させる。ボーンゴーレムが咆哮を上げながら両手を地面に叩きつけ、強引に道を開けさせていく。

「来るな!」

短剣を振りかざし、威嚇するマーラ。

「アァァァ!!」

マーラの生気に誘われているのか、黒い口を大きく開け、マーラだけを執拗に狙おうとしているシャドウウォーカー達。

「マーラ、下がれ」

小型の死の火球を複数地面に放つ。

驚いたシャドウウォーカー達が道を開けていく。だが大きく引き下がった後も威嚇を続け、止む気配はない。

その時、前方の壁を突き破り吸血鬼が吹き飛ばされてきた。

吹き飛ばされてきた吸血鬼の死体に我先にと群がり、死体を貪り始めるシャドウウォーカー。

シャドウウォーカー達は黒い唾液を撒き散らし、死体を無我夢中で食っていく。

塊になったシャドウウォーカーをボーンゴーレムが両手の拳で粉砕し道を開ける。だが死んだシャドウウォーカーらに別のシャドウウォーカー達が群がり貪り食っていく。

念動で死体を別の場所へ放り投げるとこちらへの注意が逸れた。


群がるシャドウウォーカーを大方抜け終えた時、後方から一体の種族型吸血鬼が突き破った壁を抜けこちらへ一直線に向かってくる。

吸血鬼へ身構える。

「お待ちを! 敵ではありません!」両手を開き向け、すぐさま地面に降り立つ吸血鬼。

「リーウィア様よりリーケン様へこちらをお渡しするようにと」

翼を畳み頭を下げ、両手で小箱をこちらへ差し出す吸血鬼。どこか見覚えのある荘厳な小箱を受け取る。

「では私はこれで」

吸血鬼はすぐに壁の向こう側の戦場へ戻っていった。

壁の向こう側からは魔法の衝突音、吸血鬼達の咆哮、叫び声、断末魔などが絶絶え間なく聞こえてくる。


荘厳の小箱を開けると、そこには指がが入っていた。

「アァァァ!!」

再度迫ってくるシャドウウォーカー達を念動で後方へ吹き飛ばす。

「ねえ! 早く!!」

急かすマーラの声がとても小さく聞こえる。

吸血鬼の是非や周囲の脅威など今は気にならない。指を箱から取り出し、空になった箱を地面に捨て、自身の骨へと肉をはめ込む。

力を感じる。まるで魂の奥底から昔の感覚が蘇るような。

以前見た青い髪の女が目の前に現れた。今回も記憶の幻影だろう。

相変わらず半透明で容姿は判別できない。徐ろに記憶から呼び覚まされているのか、以前同様見えない色が見える。

「ずっと……待っていたのよ」

容姿がはっきりすると共に、まるで目の前に存在するかのように声が強まり聞こえてくる。目を見開くが、幻影は既に消えていた。

離れた場所からマーラがこちらに向かって叫んでいる。



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