プロローグ2
「ゆうだざぁぁん!ごべぇんなざぁぁい!」
「うっうん。泣かないで!」
「うぁぁあぁぁん 僕のぜいでぇぇぇっ!」
「大丈夫!大丈夫だからさ…だから落ち着いて?」
俺は今とっても困っているし、とっても混乱している。困ってる理由は泣きまくってる古代ローマ人風の少年のせいで、混乱している理由は人魂?火の玉?ほんわり真ん丸とした球体になっている事だ。
両親、親族に看取られながら死んだんだ。その時に病室で大声で叫ぶ少年を見た。
そう死んだんだ…。その事を理解したら、今の球体状態な事も納得できた。これが魂なんだと。
すると疑問が次々が沸く。ここがどこなのか?天国に行くのか地獄に行くのか?この子は誰なのか?
わんわん泣きまくる少年に抱えられながらまわりの様子を見ると、その景色を見て驚いた。
見たことも無い美しい草花。空の色が薄い金色で、高い山々にかかる霧は淡い桃色。
俺を抱えながら、号泣しながら歩く少年。何を言っても会話にならないので、しばらく待つ事にした。
どれだけ時間がたったのだろうか?空が薄い金色から、深い紺色へと変わり無数の星々があらわれる。
そして星の色が派手だ…。クリスマス時期の電飾のように色とりどりだ。
阿保のようにぼけっとしてたら、少年はいつの間にか泣き止み、この世の終わりだと言わんばかりに沈み込んで座っていた。非常に声がかけ辛いのだけど、聞かなければいけない事が山程ある。
「ねぇ…えっと初めまして!?俺は壱岐雄太、君の名前を教えてくれないかな?」
「………」
涙で真っ赤になった目でこちらを見る少年。せかしちゃ駄目だ、相手が答えてくれるのをぐっと待つ。
「&※☆%#$”です」
困った…。何を言ってるのかわからない。少年も自分で驚いている。
「えっと、ちょっと聞き取れなかった…ごめんね。もう一度お願いします」
すると少年は、しばし考えてから口を開いた。
「481-236-542号です。名前は失効した…ようです」
失効?ここに来て疑問が更に増えた。だが、死んで特にする事もないし、時間はたっぷりあるから一つずつ聞く事にした。
「そっか…その481…(ごめん全部覚えられなかったよ)その君は何者なの?」
「はい。雄太さんの世界で言う天使、神の使いのような者です」
天使…?神の使い…だと?糞が!神って本当にいやがったのか!天使って事は神の関係者かよ!どす黒い恨みと怒りが沸いてくる。
「……雄太さんは恨んでますよね?……全部、僕のせいです…ごめんなさい…」
「…………」
答えられない。とにかく苛立たしい。憎い。悔しい。腹立たしい。糞が!糞が!糞が!糞が!……
また、大泣きする少年。その声が、その顔が、その存在が憎い。殴りたい。蹴りたい。殺したい。糞が!糞が!糞が!糞が!……黒い感情を抑える事ができない。苦しい。痛い。
「がっがぁああああぁぁあああっ」
魂の俺は獣のように叫んでいた。すると、薄い水色だった球体の体からは赤黒い炎のような物が溢れだし、球体の色もどんどん黒く染まっていく。
「いけない!駄目です!雄太さん雄太さん、心を鎮めて下さい!お願いします。お願いですからぁぁぁ」
俺を抱いてる少年の皮膚が焼けただれはじめる。痛みを堪えながら必死に叫ぶ少年。
「お願いします。僕の事をどうしようとも構いません!ですが、このままだと悪霊になってしまいます!どうか、どうか落ち着いて下さい!」
「だぁまぁああああれぇぇぇ!糞がぁぁあああああぁ!!」
「駄目ですよ!悪霊になってしまうと雄太さんのご両親が悲しみます!ご両親を呪い殺してもいいのですか!?」
「がっ???がぁぁぁぁああああっ!?」
こいつ今何を言った?呪い殺す?ふざけるな!
「ぐぅ…!悪霊になり、意思を失うと本能的に未練を断とうとするのです。雄太さんの場合ご両親の元へ行ってしまう可能性がかなり高いです!その場合…雄太さんの呪いが……」
痛みに苦しみながらも、必死に懇願する少年を見て懸命に冷静になろうと努める。
「はぁ…はぁ…良かった、戻ってくれて…雄太さんが助かった…」
俺が助かったってどういう事なのか?暴れ狂う心をなんとか制御できたが、これで両親を呪いに巻き込まずに済むのだろうか。
「なぁ…これで俺は親父やお袋を巻き込まないのか?」
「……はい…。雄太さんの魂はこれから輪廻の神により、新たな生を受けます。そうすれば大丈夫ですよ」
「そうか…」
呪い殺さずに済む事が分かり安心すると、視界がかすみはじめ、俺は意識を失った。
靄の中に浮かぶような、とても気持ちの良い微睡みから覚めると、視界には眠る少年が映る。
まわりの景色も変わらない。空は金色だ。一応昼なのか?いつまでも抱かれているのも嫌だなと思い、抜け出そうと意識すると、ふわっと浮けた。するとどこまで浮けるのか気になる。体感で2m前後?までしか上昇できなかった。そして視野は人だった頃と同じだと分かる。
天使も寝るんだなぁなんて思っていると、少年が目覚めた。しかし、声をかけようとも思わないし、まして「おはよう」なんて言葉を交わす仲でもない。
ふわふわ浮遊する俺を少年はじっと見ている。俺もひどい火傷をおった少年の手を見る。憎かった相手ではあるが、罪悪感が沸いてきて、居た堪れない気持ちになる。
「その…なんだ…悪かったな。その手、痛まないか?」
「はい…気にしないで下さい。全部…僕のせいですから…」
「そうか…」
言葉が続かない…。少年はほんの少しだけ嬉しそうに表情を崩したが、また申し訳なさそうな顔に戻ってしまった。ふわふわに戻ろう…。




