プロローグ3
ふわふわ…ふわふわ…
「なぁ…これからどうするんだ?」
「はい。僕と一緒に神様の所に行って頂けますか?」
糞な神の所に行くのはとても嫌だが、この少年はなぜか憎めない。一人っ子だった為に、ずっと兄弟が欲しいと思っていた。もし弟がいたらこんな子なのかなとも思う。だが、見た目は古代ローマ人風金髪少年なのだが…。言葉にするのは難しいのだが、なぜか親近感を覚える。
「わかった。さくっと行くとしようか」
「はい…。有難うございます」
少年が俺を抱きかかえる。痛々しい手を見るとつらい。
「この火傷治せない……の……か?」
そう声をかけた時に、眩い光に包まれた。そして一瞬で先程までとは違う、真っ白な部屋へと移動した。そして、目の前には古代ローマ人風青年が立っている。
「壱岐雄太よ…。本当にすまなかったな」
こいつが神か。こいつのせいで…。糞が!またどす黒い心がわなわなと心の奥底から沸き上がる。
「まぁ待ちなさい。こちらの話を聞いてもよかろう?」
青年が手をかざすと、ふっと心が平穏になる。
「さて、先程も申したように本当にお前には申し訳ないと思っておる。本来産まれるべき世界へと送ってやろう」
上から物を言ってくれる。謝罪ってのは言葉だけじゃ伝わらないものだ。神とはこうもいけすかない奴なのだろうか?ところで本来産まれるべき世界とは一体なんなんだ?
「まぁそう言うでない。本来産まれるべき世界というのは言ってみれば『マナ』に満たされた世界なのだ。簡単に言うと魔法が使える世界だ。ところがお前がいた世界には『マナ』が存在しない為に体がもたなかったのであろう…まさか32年も生きるとは思わなかったのだが…」
神はそう言うと目を細めて少年の方を見る。体が弱かったのはそういう理由だったのか…。馬鹿げている。世界を間違えただけであんなにも苦しい人生だったのか。
「そこの481-236-542号がお前の魂を送り間違えたのが原因だ。ただし、罰はもう与えておる。間違いが発覚した時点でそやつの天使の輪と羽は奪った。そして自ら申し出て地上のお前の元へ行き、ずっとお前を守護しつづけておったのだ…。力を失ってもなお、お前の両親の願いを叶えるべく少しずつ『マナ』を補充しておった。………その結果お前は長く生き続け、苦しんでおったようだが…」
そうだったのか。複雑な心境になる。許せてしまう自分もいるが、納得できない自分もいる。だけど、その話が本当の事なら、きっとこの少年も苦しみ続けたのだろう…。許そうと思ってしまう。
「全て真実である。お前は優しいのだな…。ずっと我を憎み、そなた自身を憎んでいたのは知っておる。本当に済まなかったな…神界の決まりで我は見守る事しかできなかったのだ。許してくれ」
心が澄み渡っていく気分だ。全てを完全に許せる訳ではないが、まぁ良いか。しかし、ずっと心を読まれている事に改めて神なんだなぁと実感が沸いてくる。
「そなたは面白い奴だな、そんな事雑作も無い。詫びと言ってはなんだが、新しく産まれ変わる時には少しばかり加護を与えておこう」
「あの…神様。お願いがあります」
「ふむ、両親親族へと恩返しの方が良いとはな。良かろう我に任せておけ」
やっとの思いで言葉を発したのに、思考を先読みされてしまった…。もう思う事だけにしよう。
「いや、すまんな。せっかちだと他の神にもよく言われるのだ」
「はぁ…ありがとうございます。ところで、これから行く世界について詳しく教えてもらっても良いですか?」
「それは行けば分かる事であろう?さぁ行くが良い。そなたの次の生に幸あれ」
神が手を振りあげると、俺の体(球体)が輝きはじめる。
「え?ちょっと待って!まだ聞きたい事があぁぁぁ」
プチンッと弾けるように消えてしまい、部屋には神と少年だけが残った。
「さて、481-236-542号よ。そなたへの罰も十分であろう。力と名を与えてやる故こちらへ来い」
「…恐れながら、申し上げたき事があります」
「ふむ、雄太へついて行くと申すか…二度と天使に戻る事ができなくなるが良いのか?」
「はい。お許し願います」
また思考の先読みをしてしまう神であったが、しばらくの沈黙の後に先程と同じように手を振るった。
「その覚悟や良し!481-236-542号に生を授けよう、そなたにも幸あれ」
少年もまた同じように発光し部屋から消えて行った。




