3限目 先輩たち自慢の装備
二年の榊結夢先輩がバックの中から二枚のタブレットを取り出し、部長に手渡した。
「おい翔流、そこに立て! それから我々山岳冒険部は、そのまま名前をコードネームにしているからな」
部長はぼくの全身をタブレットのカメラで収めた。
「ほれ、登録が終わった。これがおまえのステータスだ」
そう言って部長はタブレットの画面を見せてくれた。
ぼくの全身が写り、様々な項目が表示されていた。
タップすると更に詳細ページが見られるようだ。
「ジョブは付与魔術士……か。なんか微妙だな。ホントはお姉さまの様な剣士系が欲しかったんだが」
ぼくの姉さんは、ここでいったい何をやっていたのでしょうか……。
「ほれ、この端末はおまえ専用だ。情報は共有されている」
部長はぼくにタブレットを手渡した。
「このタブレット、なんか滲みがいっぱい付いていますね」
「ああ、それは血だから気にするな!」
「ちィ――!」
オレはタブレットを落としそうになった。
「次、彩葉。そこに立て」
部長は同じ動作を繰り返した。
「彩葉はそのまんまだな。母親譲りの巫女見習いだ」
「それじゃあ、さっそく部屋にいって着替えてこい。創介、面倒見てやってくれ」
「ああ、わかった。翔流ついてこい!」
創介先輩に案内されたのは二階の客室だった。
ドアの横のネームプレートには『咲耶高校山岳冒険部男子寮』と日本語で、さらにその下には異世界文字で書かれているようだ。
部屋の中は十二畳程だろうか、左右壁際にそれぞれ二段ベッドが、その先の窓際には一対のソファーが置かれていた。
「おまえのベッドは左の上な! 下は京弥が使っている」
「さてと、翔流の装備は……っと」
創介先輩が端末で確認している。
「まあ、確認するまでも無いのだが……」
そう言いながら大きなクローゼットから服とローブを出してくれた。
「ほれ、おまえの装備品だ。『初心者の旅人』セット!」
ぼくはガクッと肩を落とした。
「副部長はハーフメイルに大盾なんですね!」
メタリックピンクの鎧を、『ガチャガチャ』と装着している。
「ああ、カッコいいだろう! 俺はガーディアンだからな。こいつはレベル50以上で装備できるオリジナルで『眠り姫の守護者』って銘の逸品だぜ!」
「京弥先輩はエルフ仕様なんですね!」
「ぼくはアーチャーだからね。この装備は『エルフの戦士』って銘の、結構レアモノなんだよ。素早さ系の身体能力や命中率が、飛躍的に向上するんだ」
それに比べて、ぼくの装備といえば……。
旅人のローブ、旅人の服、堅木の杖……。
「さあ、食堂に戻ろうか。女性より着替えが遅いと、どやされるぞ!」
しばらく食堂で待つと、三人の女子高生のリアルコスプレが現れた!
こいつはなんとも刺激的だ!
今日、ここに連れてこられて良かった! と、ぼくは少し機嫌が良くなった。
「部長はどう見ても魔女! しかもバリバリの黒魔導士ですね!」
プリムが大きく、折れ曲がった黒いとんがり帽子が、実にカッケ――!
コミケで見るのはウソっぽいけどコイツは本物だよ。
「おうよ! このコスチュームはレベル50以上に許される『深淵の森の魔女』コンポのコンプだぞ! おかげで私は『漆黒の魔女』の二つ名で呼ばれるようになった」
ぼくはタブレットを開き、部長のウインドウで装備ポテンシャルを確認した。
物理防御力3500
魔法耐性力5500
総合魅力7800
この数値がいかほどのモノなのか今は分らんが……。
自分の装備より三桁大きいのは紛れもない事実。
「でもこの装備スロットの『純白のかぼちゃパンツ』ってなんですか?」
「おまえなかなか良い所に気がついたな。『深淵の森の魔女』コンポの魅力度をさらに二十パーセントも上げてくれるんだ。しかも防御力や精神力まで上げてくれるという優れものだぞ。見るか?」
部長はそう言って膝上の黒いスカートの裾を持ち上げようとした。
「いえ、結構です!」
「結夢先輩は白魔導士ですね」
白と青を基調とした、ちょっとタイトでドレッシーな装いだ。背丈ほどの白銀のワンドが様になっている。
「私のドレスは『清き乙女の決意』って銘なのよ! どう、似合っているでしょ!」
そう言って結夢先輩は、くるりと一周廻って、長めのドレスの裾を翻した。
星屑が散りそうである。
いかにもファンタジーって感じで萌えます、結夢先輩!
「彩葉さんはそのまま巫女装束なのですね」
白衣に緋袴、黒髪には前天冠。胸の前には神楽鈴が握られている。
「この装備は、母が在学中の初期に使っていたモノだそうです。そのまま装備出来ました」
ちょっと恥ずかしそうに両手を広げる彩葉さん。
なんと初々しいのでしょうか……。たまりません!
ぼくは不覚にも三人の美少女に萌えていると、ふと部長の視線を感じた。
「それにしても翔流~。おまえ清々しいまでに、ノービス全開だな!」
言わんでよろしい……。
「よし、出発しようか!」
部長の号令と共に、ぼく達は食堂を後にした。
フロントに出発の挨拶をしていく。
「それでは行って来ます!」
「転移陣には気をつけるのよ!」
女将さんも母さんと同じ事を言って送り出してくれた。




