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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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127/142

127.

空間の壁を蹴り破り、わたしたちはついに下の階層へと足を踏み入れた。


 そこは、先ほどまでの湿った石壁とは打って変わって、ひんやりとした冷気が漂う広大な鍾乳洞のような空間だった。

 ポタリ、ポタリと水滴が落ちる音が反響し、青白い発光ゴケが足元をぼんやりと照らしている。


「さて、次はどう進むかな」


 わたしが周囲を見渡していると、キャンピー(人間形態)の胸元から、カーナビの半透明なモニターがホログラムのように浮かび上がった。

 そこには、迷宮の地図とともに、無数の赤い点が点滅している。


『アハハッ! 下の階層にも、遭難したおバカな冒険者ちゃんたちがいっぱいいるみたいだよぉ!』


 真理のウザい声が響く。

 どうやら、赤い点はすべて怪我をして動けなくなっている遭難者たちらしい。

 キャンピーはカーナビと真理のサポートによって、彼らの現在位置を完全に把握しているのだ。


「マジか。でも、これだけ広いと、いちいち回収して回るのめっちゃめんどくさいんだけど」


 わたしは盛大に顔をしかめ、ガックリと項垂れた。

 おんぶに抱っこで遭難者を拾い集めるなんて、労働対効果が低すぎる。


『そんなズボラなスミコちゃんに朗報でーす! キャンピーちゃんの新モード、使っちゃえば?』


「新モード? また変な機能ついてるの?」


『ジャジャーン! その名も「分身」だよぉ!』


 真理がドヤ顔で言い放った瞬間、キャンピーの身体がポンッと弾けるような音を立てて光に包まれた。

 眩しさに目を細めていると、光が収まった後には、膝丈サイズの小さなキャンピーが十人ほど現れていた。


「ほえー、かわいい!」


 ミニドラならぬ、ミニキャンピー。略してミニピーだ。

 真っ白なワンピースに、頭のてっぺんでピコピコと動くアホ毛。

 ちょこまかと動き回る姿は、見ているだけで癒される。


「ダーッ!」


 だが、ミニピーの一人が、わたしの足首をヒョイと掴むと、そのまま片手でわたしを高く持ち上げたのだ。

 フワリと身体が宙に浮く奇妙な浮遊感に、わたしは目を限界まで見開いた。


「うおっ!? 見た目に反してめっちゃパワーあるじゃん!」


 わたしは激しくのけぞり、そのまま空中でジタバタと暴れた。

 どうやらこのミニピーたち、サイズは小さくても基礎スペックは本体譲りのチートらしい。


「ダー! ダーッ!」


 ミニピーたちは気合の入った掛け声を上げると、遭難者を回収すべく、鍾乳洞の奥へと凄まじいスピードで散っていった。

 あっという間に見えなくなった小さな背中を見送りながら、わたしはふと首を傾げた。


「ん? ていうか、そんな便利な機能があるなら、最初から使えばよかったじゃん。なんで今まで隠してたの?」


『いやー、それがさぁ。分身を使うと、本体であるキャンピングカーが使えなくなっちゃうっていうデメリットがあるんだよねぇ』


「あー、なるほど。車中泊や移動ができなくなるのか」


 わたしは腕を組み、深く納得した。

 確かに、快適な車内空間という最大のメリットが失われるのは痛い。


「む。つまり、今は馳走を作るキッチンもないということですか」


 テンコがふさふさの尻尾を力なく垂らし、ぷくっと両頬を限界まで膨らませて抗議してきた。

 相変わらず食い意地が張っている。


「まあでも、わたしは【野外活動】スキルがあるから、キャンプならいくらでもできるし問題ないよ」


 わたしは余裕の笑みを浮かべて、ポンと胸を叩いた。


「キャンピーがいなくても大丈夫。っていうか、いない間に敵なんて絶対こないだろうしねー」


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※4/23(木)


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