121.
怪我の治った冒険者たちを、このままダンジョンに置いていくわけにはいかない。
かと言って、一度外へ出て送り届けるのも面倒だ。
「とりあえず、あんたたちも車に乗りなよ。外に出るより、このまま連れて行った方が安全だから」
「な、なるほど!」
冒険者たちがコクコクと頷くのを見て、私はキャンピーに合図を送った。
少女の姿だったキャンピーが眩い光を放ち、巨大なキャンピングカーへと変身する。
真っ白な車体が、ダンジョンの薄暗い空間に現れた。
「おおお! 聖女様が変身なされたぞ!」
「なんという神々しさだ!」
冒険者たちが再び平伏し、車体に向かって祈りを捧げ始めた。
ただの車なのに。
「うーん。恋は盲目ってやつかな」
私は呆れて肩をすくめ、彼らを急かして車内へと押し込んだ。
スモールモードとはいえ、キャンピーの車内は外見から想像もつかないほど広々としている。
ふかふかのソファに冒険者たちが恐る恐る腰を下ろした直後だった。
きゅるるるるるっ!
盛大な腹の虫の音が、静かな空間に響き渡った。
「スミコ。妾は限界なのです。馳走を」
テンコが両手でお腹を押さえ、ふさふさの尻尾を力なく床に垂らしている。
目を潤ませて、今にも倒れそうなアピールだ。
「もー。君、今日はまだ何もしてないよ?」
「む? しかし、他の連中も腹を空かせているようですが」
テンコがふんすっと鼻を鳴らし、顎で冒険者たちをしゃくった。
見ると、屈強な男たちも一様に腹を押さえ、申し訳なさそうに視線を逸らしている。
彼らも迷宮で遭難し、ずっとまともな食事をとっていなかったのだ。
「まじかよ」
私はガックリと項垂れ、そのまま膝から崩れ落ちた。
神獣だけでなく、むさ苦しいおじさんたちの食費まで面倒を見ることになるとは。
「しかたないか。こちらの都合で乗っててもらうわけだしね」
私は気を取り直して立ち上がり、アイテムボックスを開いた。
「さっきキャンピーが轢き殺したカニ、回収しておいたから。塩茹でにして食べるか」
「おおお! カニ! カニの馳走なのです!」
テンコがパァッと目を輝かせ、ちぎれんばかりに尻尾をパタパタと振り始めた。
冒険者たちからも、歓喜のどよめきが上がる。
私はため息を吐きながら、車内のシステムキッチンへと向かった。
ぐつぐつと大鍋でお湯を沸かし、豪快にカニの足を放り込む。
しばらくすると、磯の香りとカニ特有の甘い匂いが車内に充満し始めた。
こうして謎の神様を救出するダンジョンアタックは、なぜかカニ食べ放題の宴会へと移行していくのだった。
【おしらせ】
※4/20
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