120.
カニの残骸が散乱するホールで、人間形態(少女の姿)に戻ったキャンピーに対し、へたり込んでいた冒険者たちが深々と頭を下げた。
「ああ、聖女様! お助けいただき、本当にありがとうございました!」
「コクッ!」
キャンピーは照れくさそうにえへへと微笑み、純真無垢な笑顔で頷いた。
その光景を見て、テンコがギリッと牙を鳴らす。
「むきーっ! 助けたのは我が主であるスミコーーもがもがっ!?」
「いいの! 言わなくていいの!」
私は慌ててテンコの口を両手で塞いだ。
ふんすふんすと鼻息を荒くするテンコを羽交い締めにしながら、私は冷や汗を拭う。
よみがえる、過去の面倒事の数々。
人を救うと、こうやって変に感謝されて信者化し、町に残ってくれと引き留められるのがオチなのだ。
だから、キャンピーが身代わりに聖女として祭り上げられている今の状況は、ぶっちゃけ私にとって好都合だった。
「ていうか、ちょっと待って」
私は虚空に向かってジト目を向けた。
「真理。あんた、自分が神様として崇められるのが面倒になったからって、その役割をキャンピーに押し付けてない?」
『シャラップ! 細かいこと気にする女子はモテないよぉ!?』
図星だったらしく、ウザいギャル神がものすごい勢いで誤魔化してきた。
「うっ、痛てぇっ」
突然、冒険者の一人が呻き声を上げた。
見ると、腕や足から血を流している。さっきのカニのハサミでやられたらしい。
「誰か、回復魔法を使える者はいないか!?」
「ダメだ、神官はさっき気絶しちまって!」
冒険者たちが顔を青くして騒ぎ始めた。
回復かぁ。できるだろうか。
私は自分のステータス画面を思い浮かべるが、私の固有スキルは【野外活動】だ。
火を起こしたりテントを張ったりはできても、他者の傷を治すような高等魔法は使えない。
テンコは言わずもがな。食べるか蹴るかしかできないし、ソーちゃんに至っては私の腕の中でヘソ天になって爆睡している。
「どうしよう、ポーションの持ち合わせもないし」
私が焦っていると、少女姿のキャンピーがスッと前へ出た。
心配そうに眉を下げ、怪我人を助けたいと必死に願うようにお祈りのポーズをする。
カチッ。
キャンピーが両手を頭の横に掲げた。
チッカ、チッカ、チッカ、チッカ。
なんと、キャンピーの両手と、頭のアホ毛が、オレンジ色の光を放って点滅し始めたのだ。
ハザードランプだ。
なぜ少女の姿で路上駐車の合図を焚くのかと思った瞬間、そのオレンジ色の光が、温かな波動となって冒険者たちを包み込んだ。
「な、なんだこれ!?」
「おおお! 傷が、傷が塞がっていくぞ!」
驚くべきことに、オレンジの光を浴びた冒険者たちの怪我が、みるみるうちに完治していくではないか。
私は目を限界まで見開き、盛大にのけぞった。
「おおー! ハザードランプにそんな力が!」
「って、ないから! 絶対ないから!」
自分でボケて自分でツッコむという、高度な一人芝居をかましてしまう。
すると、スピーカーから真理の得意げなボイスが響いた。
『ジャジャーン! これぞ、キャンピーちゃんの新機能! |死の危険を退ける聖なる光だよぉ! すごっ、マジ尊い!』
「もー! なんでもありだな!」
私はガックリと項垂れ、そのまま床に崩れ落ちた。
キャンピングカーの概念が、音を立てて崩れ去っていくのを感じていた。
【おしらせ】
※4/20
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