114.
「スミコ、ご飯を。早く妾にご飯を……」
テンコが私の足元にすがりつき、腹を空かせてジタバタと暴れている。
あんまりうるさいと、口にハイオクを突っ込んでやろうか。
私は大きなため息を吐き、虚空にKAmizonの画面を呼び出した。
ポチッと注文を済ませ、足元に届いた段ボールから商品を取り出す。
「ほら、おにぎり」
「おにぎり……? はぁああああ……」
テンコは露骨に肩を落とし、ぷくっと両頬を膨らませた。
「はいはい。妾は美食家、なんでしょ。でもどうせこれ食べて『美味』って言うんでしょ」
「そんな安っぽい舌はしていません。早くちゃんとした馳走を……」
ぶつぶつと文句を言うテンコを放置して、私は相棒に声をかけた。
「キャンピー、キャンピングカーモードに戻って。反重力機能で、海面を走ってダンジョンまで行くよ」
「…………ビシィッ!」
キャンピー(少女形態)が力強く敬礼をした。
直後、眩い光と共に彼女の姿が巨大な白い車体へと変化する。
「おおお! 聖女様が変身なされたぞ!」
「なんという白さ! 神々しいお姿だ!」
背後で、冒険者たちが一斉に地面に平伏して祈り始めた。
キャンピングカーのどこが神々しいのだろうか。
私は呆れてガックリと項垂れた。
「むー! スミコー! 馳走をー!」
横でテンコがふさふさの尻尾を振り回し、騒ぎ続けている。
私はおにぎりのフィルムを手早く剥がした。
パリッという小気味良い音と共に、香ばしい磯の香りと、ほかほかの銀シャリの匂いが広がる。
「はい、食べて」
「むぐっ!」
私は大きく口を開けているテンコの鼻先に、おにぎりを差し出した。
テンコは器用に直接口で咥え込み、モグモグと咀嚼する。
次の瞬間、テンコの動きがピタリと止まった。
「び、美味ー!」
テンコはあまりの衝撃にガバッと背中のけぞり、目をキラキラと輝かせた。
ほら見ろ。どうせそうなると思った。
「はいはい。じゃあ、しゅっぱつしんこー!」
私は満足げな神獣たちを後部座席に押し込み、運転席に乗り込んだ。
アクセルを踏み込むと、キャンピーはふわりと宙に浮き、荒波の立つ海面を滑るように走り出した。
【お知らせ】
※4/6(月)
好評につき、連載版、投稿しました!
『【連載版】「魔力無しの失格治癒師」とバカにされた転生【外科医】、辺境でその腕を証明する~婚約破棄され家から追放された私、治癒魔法が諦めた命を医術で覆したら、救世主扱されて困ってます~』
https://ncode.syosetu.com/n3164ma/
広告下↓のリンクから飛べます。




