113.
案内されてやってきたのは、港のすぐ外れにある海岸だった。
ざざーっと波の音が鳴り響き、濃密な潮の香りが鼻腔をくすぐる。
「あそこが海のダンジョンです!」
町長が震える指で海の彼方を指差した。
私は目を丸くした。
なんと海の上に、禍々しい石造りの神殿がポツンと浮かんでいるのだ。
「海の上にあるのね。あらま」
私が呑気に呟いていると、背後から凄まじい怒号が聞こえてきた。
「我らが聖女、キャンピー様をお守りしろ!」
「ウオオオオオオオッ!」
振り返ると、町中の冒険者や野次馬たちが大挙して押し寄せていた。
完全武装した屈強な男たちが、キャンピーの周囲をぎっしりと取り囲んでいる。
男たちの熱気とむさ苦しい汗の匂いが、むわっと押し寄せてきた。
「うーん、邪魔」
私は露骨に顔をしかめた。
ただでさえ目立ちたくないのに、これでは大名行列である。
ざばぁぁぁぁぁぁっ!
突然、鼓膜を劈く轟音と共に海面が爆発したように弾け飛んだ。
冷たい水しぶきがザザーッと降り注ぎ、肌を粟立たせる。
波の間から姿を現したのは、青く輝く鱗に覆われた巨大な海蛇だった。
「ひぃぃぃっ! 海魔蛇だぁぁぁっ!」
冒険者たちが悲鳴を上げて腰を抜かす。
「コクッ!」
キャンピー(少女形態)が無言で鋭く頷き、一歩前に出た。
手に青白い光をチャージし始める。
「まてまてまてーいっ!」
私は慌ててキャンピーに飛びつき、砲塔を力ずくで下ろさせた。
「ガソリン、また使う気でしょ! ハイオク満タンいくらすると思ってるの!」
そう。
キャンピーの規格外の必殺技は、発動するたびに凄まじい量の燃料を消費するのだ。
つまり、莫大な金がかかるのである。
私は家計のピンチを思って、ガックリと膝から崩れ落ちた。
「スミコ、ここは妾にお任せを!」
テンコがふさふさの尻尾をブワッと膨らませ、海面に向けて一気に跳躍した。
そのまま空中から、狐火を纏った強烈な前蹴りをリヴァイアサンの脳天に叩き込む。
ドゴォォォォォォンッ!
凄まじい衝撃音が響き渡る。
海魔蛇は一撃で白目を剥き、ドゴボォッと情けない音を立てて海中へ沈んでいった。
「ふぅ。他愛もない相手でした」
砂浜にスマートに着地したテンコが、ふんす、と得意げに鼻を鳴らす。
そして、くるりとこちらを振り向いた。
「さて、見事討ち取ったことですし。さっそく馳走を用意するのです!」
テンコは目を爛々と輝かせ、大きな口から滝のような涎を垂らしている。
ふさふさの尻尾をちぎれんばかりに激しくパタパタと振っていた。
「お前も金かかるんかーいっ!」
私は激しく背中のけぞりながら、今日一番のツッコミを放ったのだった。
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