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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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112/117

112.

 熱気に包まれたギルドの喧騒の中、人混みを掻き分けて一人の老人が進み出てきた。

 潮風と日差しで日焼けした顔に、深い皺が刻まれている。

 漁師たちのまとめ役のような出立ちの老人は、キャンピーの前に進み出ると、すがりつくように膝をついた。


「おお、ミカデス様の再来たる聖女様! どうか、我らをお救いくだされ!」


 老人の悲痛な叫びに、ギルド内の空気がピンと張り詰める。


「実は最近、港のすぐ近くの海域に、巨大な『海のダンジョン』が突如として出現したのでごぜぇます」

「海のダンジョン?」


 私が聞き返すと、老人は深く頷いた。


「はい。そのせいで周辺の海流が荒れ狂い、恐ろしい魔物たちが湧き出して、船が全く出入りできなくなってしまったのです」


 老人はガックリと項垂れ、床に額を擦り付けた。


「このままでは漁にも出られず、交易船も来ない。港町ウォズは干上がってしまいます! どうか、聖女様のお力でダンジョンを塞いでいただきたいのです!」

「あわわわっ!」


 懇願されたキャンピーは、完全にパニックになっていた。

 白銀の髪を振り乱し、両手をバタバタとさせて後ずさる。


 だが、キャンピーは根が(車だけど)とてつもなくお人好しだ。

 困っている人を目の前にして、見捨てて逃げるような真似はできないらしい。


 キャンピーは私の服の裾をギュッと掴み、上目遣いでこちらを見上げてきた。

 その瞳はうっすらと涙ぐみ、助けを求めるように揺らいでいる。


 私がこういう面倒事を極度に嫌がっているのを、相棒である彼女はよくわかっているのだ。

 だからこそ、助けたいけれど言い出せないという板挟みになり、もじもじと身をよじらせていた。


「きゅいー?」

「スミコ。キャンピー殿が困っていますよ」


 ソーちゃんが首を傾げ、テンコがふさふさの尻尾をパタパタと揺らしながら言ってくる。

 テンコに至っては、海のダンジョンと聞いて「さらなる海鮮の宝庫では」と目を輝かせ、涎を垂らしていた。


 私は大きく天を仰いだ。

 そして、勢いよくガバッと背中のけぞり、特大のため息を吐き出す。


「あー! もう! わかったよ! やればいいんでしょ、やれば!」


 私が半ばやけくそ気味に叫んだ瞬間。


「ぱぁっ!」


 キャンピーの顔が、文字通り花が咲いたようにパッと明るくなった。

 そして、私の前に立って、力強くバシッと親指を立てる。


「ぐっ!」


 満面の笑みでのサムズアップだ。

 お前、本当に車かよ。可愛すぎるだろうが。


「おおお! 聖女様が依頼を受けてくださったぞ!」

「うおおおおおおおおっ! 奇跡だ!」


 老人が歓喜の涙を流し、ギルド中の冒険者たちが一斉に拳を突き上げて咆哮した。

 床が震えるほどの凄まじい歓声が、ギルド内に響き渡る。


「ダンジョン攻略の暁には、町中の海鮮で大宴会だぁぁぁ!」

「海鮮! 馳走なのです!」


 冒険者たちの言葉に、テンコが歓喜の声を上げてガッツポーズをした。

 ソーちゃんも短い手足をバタバタさせて喜んでいる。


「はぁ。また厄介事に首を突っ込むことになっちゃったよ」


 私はガックリと膝から崩れ落ちた。

 だが、満面の笑みを浮かべるキャンピーと、美味い飯を期待してはしゃぐ神獣たちを見ていると、不思議と悪い気はしなかった。


 かくして、追放聖女とチートキャンピングカー一行は、海のダンジョンへと挑むことになったのである。

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※4/6(月)


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