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捨てられ聖女は万能チート【キャンピングカー】で快適な一人旅を楽しんでる  作者: 茨木野


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108/114

108.

極太ビームの轟音の後、海岸には不気味な静寂が戻った。


 もうもうと立ち込める白煙が晴れる。

 そこには、こんがりと焼け焦げた巨大な触手が散乱していた。

 辺り一面に、香ばしいイカ焼きの匂いが充満している。


「これ、食えるんだろうか」


「じゅるり」

「じゅるるるるっ!」


 テンコとそーちゃんが、滝のような涎を垂らしている。

 今にも飛びつきそうな二匹の前に、キャンピー(少女形態)が立ちはだかった。

 両手を広げて「ステイ、ステイ」と、犬を嗜めるような動作で必死に止めている。


 でも、これが食べられるなら当分の食費が浮く。

 家計を預かる身としては、この特大食材を見逃す手はない。


「よし、あとで毒味して問題なければ食べよう。とりあえず回収!」


 私はアイテムボックスを開き、巨大なクラーケンの足をごっそりと収納した。


「おい、今すげえ音がしたぞ!」

「海岸の方だ! 魔物が出たって!」


 背後から大勢の人々の声が聞こえてきた。

 先ほどの騒ぎを聞きつけて、街の衛兵や野次馬が集まってきたのだ。

 これ以上目立つのはマズい。


「スミコ! ここは妾に乗るのです!」


 テンコが大きな口を開け、私の襟首を器用に咥えて自分の背中に放り投げた。

 そして、そのまま四つ足で力強く地面を蹴り、空へと跳躍する。


「NOォォォォォッ! ちょっと待って! 乗り心地悪いから!」


 私の絶叫をよそに、テンコは夜空を駆け抜けていく。

 なんとか街の喧騒から離れ、安全な小高い丘の上へと着地した。


「ふぅ。危ないところでした」


 テンコがふさふさの尻尾を揺らしながら、得意げに胸を張る。

 そーちゃんも私の腕の中でキャッキャと笑っていた。

 しかし、遅れて空から合流したキャンピーの様子がおかしい。


 キャンピーは地面にペタンと座り込み、ぷくっと頬を膨らませていた。

 明らかな不機嫌オーラを放っている。


「え、キャンピー? どうしたの!?」


 キャンピーは無言のまま、私の顔を指差し、次に自分を指差した。

 そして、最後にテンコをビシッと指差して、ブンブンと首を横に振る。


「ん? どういうことだ?」


「スミコを乗せるのは『自分キャンピングカー』の役目なのに、狐に奪われて拗ねているのですよ」


 テンコがあっさりと通訳した。

 なるほど。乗り物としてのプライドが傷ついたらしい。

 キャンピーは両手で顔を覆い、めそめそと泣き真似までし始めた。


「ご、ごめんって! 緊急事態だったから!」

「妾だって悪気はなかったのです! 許すがよい!」


 私とテンコは激しく腕を振り回して慌てふためく。

 チートな相棒のご機嫌取りに、私たちはしばらく奔走する羽目になった。

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※4/6(月)


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