108.
極太ビームの轟音の後、海岸には不気味な静寂が戻った。
もうもうと立ち込める白煙が晴れる。
そこには、こんがりと焼け焦げた巨大な触手が散乱していた。
辺り一面に、香ばしいイカ焼きの匂いが充満している。
「これ、食えるんだろうか」
「じゅるり」
「じゅるるるるっ!」
テンコとそーちゃんが、滝のような涎を垂らしている。
今にも飛びつきそうな二匹の前に、キャンピー(少女形態)が立ちはだかった。
両手を広げて「ステイ、ステイ」と、犬を嗜めるような動作で必死に止めている。
でも、これが食べられるなら当分の食費が浮く。
家計を預かる身としては、この特大食材を見逃す手はない。
「よし、あとで毒味して問題なければ食べよう。とりあえず回収!」
私はアイテムボックスを開き、巨大なクラーケンの足をごっそりと収納した。
「おい、今すげえ音がしたぞ!」
「海岸の方だ! 魔物が出たって!」
背後から大勢の人々の声が聞こえてきた。
先ほどの騒ぎを聞きつけて、街の衛兵や野次馬が集まってきたのだ。
これ以上目立つのはマズい。
「スミコ! ここは妾に乗るのです!」
テンコが大きな口を開け、私の襟首を器用に咥えて自分の背中に放り投げた。
そして、そのまま四つ足で力強く地面を蹴り、空へと跳躍する。
「NOォォォォォッ! ちょっと待って! 乗り心地悪いから!」
私の絶叫をよそに、テンコは夜空を駆け抜けていく。
なんとか街の喧騒から離れ、安全な小高い丘の上へと着地した。
「ふぅ。危ないところでした」
テンコがふさふさの尻尾を揺らしながら、得意げに胸を張る。
そーちゃんも私の腕の中でキャッキャと笑っていた。
しかし、遅れて空から合流したキャンピーの様子がおかしい。
キャンピーは地面にペタンと座り込み、ぷくっと頬を膨らませていた。
明らかな不機嫌オーラを放っている。
「え、キャンピー? どうしたの!?」
キャンピーは無言のまま、私の顔を指差し、次に自分を指差した。
そして、最後にテンコをビシッと指差して、ブンブンと首を横に振る。
「ん? どういうことだ?」
「スミコを乗せるのは『自分』の役目なのに、狐に奪われて拗ねているのですよ」
テンコがあっさりと通訳した。
なるほど。乗り物としてのプライドが傷ついたらしい。
キャンピーは両手で顔を覆い、めそめそと泣き真似までし始めた。
「ご、ごめんって! 緊急事態だったから!」
「妾だって悪気はなかったのです! 許すがよい!」
私とテンコは激しく腕を振り回して慌てふためく。
チートな相棒のご機嫌取りに、私たちはしばらく奔走する羽目になった。
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