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八百万の神々と千年王国の竜  作者: 涼城 鈴那
最終章「闘神の顕現と究極の依り代」

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234/235

さよならなんかは言わせない

残り2話


「!?マサキ!お前、身体が光ってるぞ!?どうしたんだ!?」

応竜の背でアレックスは政樹に起こった異変に気付き、驚いて問う。


「あ?ああ、もしかしたら時間切れかもな・・・?」

政樹は自分の光り始めた手を見つめ、諦観したようにそう言った。


「時間切れ?どういう事だ?」

「・・・紅月様、そうなんですよね?」

『ああ、その様じゃな、この世界の危険は取り除いたと言う判断なのじゃろう。』


大禍津神を倒して危機が去った後、「飯綱権現」の神体が消失したように、もう異界からの邪神の侵攻はないとして八百万の神々の意思がそう決定したのであろう。

政樹が「神隠し」でここに来た目的が達成されたからには、本来この世界では異物でしかない政樹を速やかに元の世界に戻そうとするのは道理であろう。


「アレックス、元の世界に戻らなければならないようだ、すまん、これまでだ。」

「これまでって・・・みんなお前を待ってるんだぞ!スーはどうなる!?」


救国の英雄と言われた男の帰還を待つ人々の前から、消えてしまおうとする政樹に対しアレックスが問う。『このまま一言も交わさずにいなくなるつもりか?』と。


「このままじゃ、会えてもサヨナラの一言すら言えそうにないしな・・・すまん、アレックス、スーフェイの事と後の事を頼む!」

しかし、政樹の最期の頼みをアレックスははっきりと断った。


「おい!諦めるとかお前らしくないぞ!最後の最後まで自分で努力するのがお前だろうが!やりたいことがあるのなら自分で最後まで足掻け!お前はいつだってそうしてきただろうが!?」


このまま応竜の背に乗っていれば確実にスーフェイにも皆にも会えずに消えてしまうだろう。それでいいのかと政樹は思い直す、やれる事は最後まで諦めずにやってきたんだ。最後に諦めてどうする!?最後だから思いっきり足掻かなくては!

政樹は決断した。


「そうだな、アレックスちょっと行ってくる!あとは頼むぞ!!」

政樹はそう言うなり応竜の背から飛び降り、一人地上を目指す。


スーフェイに会ってせめて一言言う為に、政樹は自分自身の持てる力を使って足掻こうとする。「飯綱権現」の加護、烏天狗の飛翔能力を最大限に自覚して使用し、「飯綱」を使って人々の中の何処にスーフェイが居るのかを把握する。


何故かメイド服の様な服装の見慣れないスーフェイを発見した後は一気に彼女を目指した。・・・しかし、このままでは届かない。体の光具合からして消失までの時間はほとんど残っていまい、どうする!?


────────────────────


「スー様!マサキ様が単独でこちらに向かってきています、何か変です!」

アキラが政樹の異変をスーフェイに報告する、その存在が薄れかかっている!?


「マサキ様のお身体が消えかかっています!消滅する寸前の様です!」

政樹の様子を報告するアキラの言葉に周囲が騒然となる。


「消えるとはどう言う事なのじゃ!?」

「マサキ様が消えてしまうなんて!?そんな!?」

「マサキ!?アレックスは応竜の方か!先行しなきゃ消えてしまうのか!?」

何らかの原因で消えてしまう前に、なんとかスーフェイに意思を伝えようと足掻いているのか!?しかし、まだまだ遠い!・・・間に合いようがない!


その瞬間、スーフェイの周囲に3つの影が現れた。「桜」、「椿」、「桃」の飯綱三姉妹がスーフェイを体を抱え飛ぼうとしているがその身体も消えかかっていた。


『ええい!!「へし切長谷部」!貴様の力も寄越せ!!飯綱に力を貸せ!!』


千鳥に宿る誾千代の叫びにブルーノの持っていた「アレス-シュナイデン」が反応し、スーフェイの手元に納まる。自らの主の想いを叶えるために刀の神たちもその力を惜しみなく発揮する。消えかかった飯綱達の身体が元の姿と力を取り戻す。


「きゃ!?」

飯綱三姉妹に抱えられてスーフェイは中空の政樹目掛けて飛ぶ。


スーフェイの脳裏にあの時の記憶が蘇ってきた。


政樹と共にドラゴンの山からビャクゴウの球根を手に入れて街を救った後、思いを伝えられないまま政樹が帰ってしまうと言う時、自分の想いを伝える為にメイの背に乗り、政樹の馬車を追い掛けたあの時の事を。


あの時とは逆の立場だが、政樹が自分に何かを伝えようと全力を尽くそうとしているのだ。自分もそれに応えなけれないけない、あの時政樹に伝えたかった事、政樹から聞きたかった事を、今ここで。


先程まで見えていた光が消えかかっている、目を凝らさないと解らない程に弱く。

スーフェイを抱える飯綱達も消えかかっている、刀の神の後押しがある分まだ姿は見えるがいつまで持つのか。


あともう少しの所で光が完全に消え失せた。幾ら目を凝らしてももう何も見えない。

マサキが消えてしまった・・・、いや違う!彼の想いがこちらに来ているのが解る。

その想いすら消えかけている、それを掴み取ろうと必死に手を伸ばす。

それが消える直前にそれに触れる事がが出来た!


その直後、主の後を追うかのように飯綱達も消えてしまい、スーフェイは空中に一人残された。政樹の想いを右手に確かめたまま落下が始まる。


地上からは幾つもの悲鳴が上がる、でも不思議と恐怖は感じなかった。

政樹の最期のメッセージを受け取れた安堵からか満足感すら感じていた、その直後にスーフェイの身体は消えかかった白狐の背に保護され緩やかに地上へと向かう。


『・・・戻って来れるかは政樹次第だ、上手くいくように祈っておれ・・・。』


そう言い残し、白狐の身体も地上10m程の所で消えてしまった。再び落下するスーフェイの身体は狼化したアキラの背に乗ったメイによってしっかりと確保された。


「スー様!お怪我はありませんか!?」

「うん、大丈夫。メイありがと。」

「また、好きだって言えませんでしたか?」

「うるさい、黙れ。」

「はい。」


メイとのいつかのやり取りを繰り返したスーフェイは、政樹から受け取った想いを確かめた。短いメッセージだがはっきりと伝わった。


『待っててくれ。』 それだけだった。


スーフェイは思い返す、そう言えばお互い「好き」等と言った事が無かった様な。

なんともお互いに言いたい事も言えない様な不器用な似た者同士なのだろうか。

でも、今度会った時こそははっきりと言えるだろう・・・多分。



────────────────────


政樹は白狐の背に揺られて意識を取り戻した。

淡い光に包まれたトンネルの様な場所を白狐の背に揺られて進んでいる様だ。


『起きたか、政樹よ。』

『あ、はい。ここは何処なんでしょうか?』

『あの世界から八百万の神々の世界へと戻る途中の空間じゃ、間もなく着こう。』


そうか、もうすぐ元の世界に帰れるのか。そう思うと何故か今までの世界での出来事が夢の中の出来事だったかのように思えてきた。


『元の世界に戻るとお主は此方の世界の記憶を失う事に成ろう。』

『え?そうなんですか?一切思い出せなくなるんですか?』

『それはお前次第じゃな、何かの切っ掛けで思い出すやも知れぬ。』


『もし思い出した場合、お前が望めばあちらの世界に送る事も出来よう。』


あのまま向こうの世界に置いておいても良かったのだが、元の世界の親兄弟や知人に挨拶だけはしておかなければなるまい?何も言わずに消えてしまっては、不幸に成る者も居よう。その為にも一旦は戻らねばならない。と白狐は政樹に言う。


『そうですよね、外国で暮らすとでも言っておけば心配させる事もないですね。』


安否の解らない者をいつまでも待つなんて人生においてかなりの負担になるだろう、やはりここは一旦帰らなければならない、そして改めて向こうの世界に行けば良い。


『・・・でも、思い出せるでしょうか?』

政樹が不安そうに言うと、白狐は笑いながら


『そればかりはお主次第じゃ、我らには解らぬな。」 


それもそうだな、解らない事を考えても仕方がない、成るようになるだろう。

そして政樹は長らく思っていた疑問を口にした。


『あの、なんで俺なんかに権現様の加護が与えられたんでしょうか?』


政樹は白狐に思っていた事を尋ねてみた、もしかしたら何か俺には特別な才能でもあるのだろうかと疑問に思ったからだが、意外な答えが返ってきた。


『何を言って居る?飯綱権現を祀る者全てに加護は与えられておるのじゃぞ?』

『ええ!?そうなんですか!?俺が特別ってわけじゃなくて!?』

驚いて聞き返す政樹にん白狐は続ける。


『まぁ、祀る頻度などによって加護の多寡はあるが、お主よりも強い加護を与えられた者もざらに居るのじゃぞ?』

さらに意外な事を聞かされた政樹に、再び疑問が生じる。


『あれ?じゃ、何でその人達じゃなくて俺が選ばれたんですか?』

『うむ、お前が子猫の死骸を供養した事が決め手となったのだ。』


実はあの子猫の死骸は神々が用意した紛い物で、死骸に触れることも厭わずに供養する事の出来る者を探すための方策だったことが伝えられた。なんでもあの死骸は朝から用意してあったにもかかわらず、誰一人触る事無く放置され続けていたと言う。


それを夜中に発見した政樹がいちいちバイクから下りて手間をかけて埋葬し、来世に無事生まれ変われるように祈願までした事で、向こうの世界でも神を敬う事の出来る人物だと判断されて今回の「神隠し」に選ばれたのだと言う。


『お主は期待以上に上手くやってくれたからな、神々もお主が希望すれば向こうの世界に再び送り込む事も可能だとしているぞ。』


・・・そういう事だったのか、と政樹は納得した。

向こうの世界に行きたいか?と問われれば、迷わず行きたいと答えるだろう。


なにしろ、この短い期間にこちらの世界では体験出来ない様な非常に濃い体験をして、得難い仲間たちにも出会えたのだ。今後元の世界で同じ様な体験や仲間が得られるとは限らない。それに俺を待っていてくれているはずのスーフェイが居る。


思い返せばお互いに「好き」とか言った事も言われた事もなかったように思う。

でも、お互いの気持ちは伝わっているはずなのだ。・・・多分。


『さて、そこの穴を抜けたら元の世界じゃ、縁が有ればまた邂逅出来よう。』

そう言った白狐が一息に跳躍して、元の世界へと飛びこんだ。

政樹はまた意識を失い、その身体は優しい光に包まれた。


そして白狐ともスーフェイ同様に「さよなら」と言わない別れの時となった。



次回、最終話

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