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第二十一話 神様の言うとおり、ってわけでもないけど、失礼します

聖王国でオリアルトは・・・・・・

 覚悟を決める暇さえ与えられず、法王は両手を上に差し上げて、詠唱をはじめてしまった。

 詠唱に呼応するように、高い天井の中央から白い光が降り注ぐ。その場に立っていた皆が上を仰ぎ見て、その光を顔に浴びていた。

 光同様に柔らかい音色のファンファーレが鳴り響き、光の中から女神が現れた。

 白い衣をなびかせ、浮遊しながらゆっくり降りてくる。人間と同じサイズだ。大きな顔でも現れるのかと思ったが、本当に神が降臨するらしい。

 法王の横にフワリと着地した。俺の方を見ている。

 転生の時には声しか聞いていないから、初めて見る。美しいが、人の美しさではない。大理石像のような、想像上の美女を具現化した「造り物」感がある。女神が口を開くと、あの、転生の時の声がした。再生の女神クノーティアだ。

「ひさしぶりですね。元気そうですね、オリアルト。答えは『イエス』です」

「えっ?」

俺はまだ何も訊いてない。

「『ギャラガンの言ったことは本当か?』でしょ?」

お見通しということか。

「『神は人の信仰心を糧にしている』という話は本当です。あなたたち人間が穀物を育てて収穫するように、森で獣を狩るように。神は人の信仰を受けねば、力を失います。

「『信仰心を煽るために、魔族と人の戦いがある』これもそうです。そう望んだのが神だということも否定しません」

 女神は真顔で、ニコリともしない。

「枯れた極寒の地に住むだけの強さを持つ者として、魔族をつくりましたが、彼らの強さは『悪』という形で現れました、彼らは信仰心を持ちません。しかし、彼らと対峙する人の国に助力することで信仰心を植え付けることができた。その状況が続いていることは、神が戦争を望んでいると言われても仕方のないことになるでしょう。

「あなたはトライスラーの国王の命で、魔族との和議に対する聖王国の立場を確認にきたのでしょう?

「それにはわたしが答えます。聖王国の民は、戦いがなくとも強い信仰心を持つ、神の家庭菜園のようなものです。この国の聖騎士になろうと言う者以外の民は戦をさせません。もしもトライスラーが魔族のこの国への通過を認める条件で和睦するなら、北の地と聖王国の間に張っている結界をトライスラーとジークライトの国境にも伸ばすだけです。人の行き来もできなくなりますが、魔族は越えてくることができません」

 つまり、神にとっては聖王国ジークライトこそが重要ということか。

「トライスラー王国は信心が低いから切り捨てる、ってことですか?」

やっとこっちから質問を発した。

 ここではじめて女神がニコリと笑った。

「この状況を打破する力をあなたに授けましょう」

彼女が右手を振ると、光る星が生まれ、俺のところへ向かって飛んできた。

「あなたに新しいスキルを与えましょう。そのスキルは、あなたが魔王との対面を果たしたときに発動します」

その星は俺の左手ではなく、顔に向かってきた。避けずに身構えていると、目の上、額のあたりに飛んできて、光が消えた。左手の甲の星のようなのが、おそらく俺の額に宿ったのだろう。

 この状況とは、つまり、ギャラガンが言う和睦の話のことか。魔王と言ったら、魔族軍を率いる王のことだよな。俺が対面したら、どうなるっていうんだ。魔王を倒したりでもするのかな。

 おれが神に与えられた力で魔族を倒したら、信仰心が集まるってことか。

 考えていたら、女神が浮かんで、上昇しはじめた。帰っちまうんだ。また、スキルの説明ナシかよ。

「あ、待って。このスキルはどういう・・・・・・」

 にっこり笑って昇っていく。光に溶け込むように姿が消え、そして光も突然消えた。

「まいったな」

 その場にいる仲間を振り返って言ったが、相手が神様だから交渉してどうこうなるものでもない。

 右から左へ話を持ち帰って報告するしかないな。国境に結界って話は強烈な拒絶だ。議論の余地なしってことなんだろうな。

「あなた、ひたいに星が!」

レイナが俺の顔を見て叫んだ。何をいまさら。さっき女神がくれたスキルじゃないか。

 あれ? まわりの反応が変だぞ。他の面々も、彼女と同じ反応だ。

「神がお会い下さったでしょう?」

法王が言った。つまり、神に会ったのはおれだけか?

「え? 皆は見えなかったの?」

法王がにっこり頷く。

 じゃあ、説明しなきゃいけないわけか。

「再生の女神クノーティアが降りてきて、ギャラガンの言ってた神の糧の話は本当だって。もしトライスラーが魔族軍の通過を許したら、トライスラーとジークライトの国境に結界を張って、人も通れなくするってさ。で、解決用だと言って、俺に新しいスキルをくれた。魔王と対面したら発動するらしい」

「つまり」義父殿が言った「魔王と対面せよ、とのご神命じゃな」

え、そういうことなのか。

 となれば、まずはトライスラー国王に報告しないといけない。

 慌ただしくゲートでトロンダプトに戻る。再び乗り換え用の馬を準備して、トライスラーの王都への旅を急いだ。


「神と話した?!」

国王は俺の報告の途中で、おどろいて叫んだ。そして最後まで伝えると、眉を眉間に寄せて、しばらく唇を拳の甲でこすりながら考えていた。

「選択肢がある話ではなくなりましたね。魔族との和睦も、交渉もなしです。あなたは、魔王と会わねばならない。すぐに前線へ、あなたを魔王に会わせるべく、全力を上げるよう指示を出しましょう」

ペンを持つジェスチャーで側近を急かせて、王は俺たちを見た。そしてレイナに視線を向けた。

「おそらく激しい戦いになるでしょう。あなたはここに残ってもらえませんか」

 レイナは顔をしかめた。

「私が女だからですか?! わたしはオリアルト殿とともに行きます!」

 王が困り顔だ。この答えは予想の範疇だろうに。

「待て待て、俺とはもう別行動だ。魔王と会うとなれば、それは魔族軍全軍を倒してのことではなく、俺自身の一点突破ってことになる。ひかり号についてこれない馬も、エアウォークについて来れない兵も不要だ。なるだけ魔王に近いところまで連れて行ってもらって、最後は一人で行く」

 ということになるだろう、と女神にスキルをもらってからずっと考えていた。

「オリアルト殿に国中で最高の護符を装備させなさい。武具の類は、今身に着けているものが最高だろうから、せめて、身を護るものをなにか」

国王が側近に命ずる。


 前線の砦でも、皆が俺の装備を充実させようと、あれこれ持たせてくれた。

 怪我に対してはキュアのスキルがあるから、怖いのは精神攻撃だ。そういうのに対するあらゆるプロテクトアイテムで、鎧の下はいっぱいになった。


 そしていよいよ、神命をかけた戦いに挑むことになった。


いよいよ次話クライマックス、ということで。

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