第十四話 孤軍奮闘の伝説なんてほしくないから勘弁してください。
今朝アップしたぶんの続きができましたので。出し惜しみしてたわけではなく、今日書いたぶんです。しばらく寝かせるのもナニなので、すぐアップすることにしました。
俺は円形の塔の屋上の中央に立ってハルバートを構えた。塔の上には俺のほかにレイナとお父上、ヴォルトックがいて、お父上の側近や護衛の兵が六人で合計十人いた。凹凸の塀に囲まれた屋上は直径30メートルくらい。東の端に階下への階段の入り口がある。
広さは俺のスキルにとってお手頃だ。
十二従将とやらは身長2メートル以上の、羽根つきの魔物で、どうやらゴーレムの依代になっちまったゴーガンってやつと同種族らしい。生命力や強さも同じくらいだといいが。たしかやつならホーリーファイアーバースト11発分だったな。
十二従将はトライデントで武装していた。鎧は着ていないが、あいつらの皮膚はフルプレートなみなんだろうっていうのは予想できる。俺に向かって飛んでくるが、一度に十二人は襲い掛かれない。俺に取り付けるのは四人が限度だ。あとのやつらは屋上にいる他の9人と戦うことになる。数字的にはいい感じだ。全部屋上上空に到達したあたりを狙って、ハルバートを片手で大きく振り回しながら、炎をイメージする。
「ホーリーファイアーバースト」「ガン!」
俺の足元を中心に緑がかった青白い光が、魔法陣のような模様を描いて広がり、十二匹の魔物が燃え上がる。例によってほかの人間には影響ない。効果範囲は半径30メートルだから、はみ出た分は空中に円盤のように模様が浮かび、塔の下のほうで「ぎやああ」という魔物の声がした。上空だけじゃなく下向きにも効果範囲が広がってるらしい。
振り回したハルバートが俺の隣にいたレイナの体をすり抜けて、レイナに襲い掛かりながら燃え上がっていた十二従将のひとりの横腹に命中する。
「ボーナスダメージバーサスイビル」
ボン! と命中個所で爆発が起きて、相手の横腹の肉が吹き飛ぶ。かろうじて腰と胸がつながってるレベルだ。
「ホーリーファイアーバースト」「ガン!」
レイナを襲ってたやつは灰になって崩れた。
ハルバートをもうひと回しして、俺にトライデントを突き出してくる四匹からの攻撃を振り払う。
その瞬間、俺のホーリーファイアーバーストの圏外上空でとどまっているタストクリスの手の甲が光った。
「コーズシリアスウーンズ」
遠隔攻撃スキルだ! ターゲットがレイナやドラスベイン卿だったら、とぞっとしたが、幸い、俺の体に痛みが走った。
「キュアシリアスウーンズ・マイセルフ」
ハモるように重ねて俺のスキルが傷をふさぐ。だが、そのおかげで攻撃スキルに集中できなかった。タストクリスの狙いもそこなんだろう。まずいぞ、俺のホーリーファイアーバーストつきじゃないと、十二従将(もう十一だが)に押し切られちまう。
タストクリスにスキルを使わせちゃだめだ。俺は手に持ったハルバートを回転させながら投げつけた。と、そのあとでしまったと思った。やつにはミサイルウェポンは効かない。だが、スキルは発動しなかった。あれは飛び道具が飛んできたときに自動発動するようだったが。つまり、スキルのルールでいうミサイルウェポンには俺のハルバート投げは含まれないということらしい。
タストクリスもスキルが発動するものと思ったらしい、間際まで無防備にしていて、慌てて腕でかばった。やつの左腕の手首とひじの間あたりにハルバートの斧の部分が命中する。
「ボーナスダメージバーサスイビル」
当然のようにやつはイビルだからボーナスがある。命中個所が爆発する。やつの手首から先がちぎれて宙に舞った。
えっ? これってどうなるんだ? やつのスキルの元の月はあの手の甲にあるんだぞ。
やつについて飛んできていたアマンダが手首を慌てて追って受け止めようとしている。やはり、腕がなきゃスキルが発揮できないんだ。アマンダのスキルで直してつなげることができるんだろうか。指をくわえて見てるしかないのか。俺は腰の長剣を抜いた。飛べなきゃどうにもならない。この剣も投げちまうか? 飛ぶ方法がないのか? 俺の思いに答えたのは、伝説の鎧のブーツの部分だった。左右のブーツが銀色に輝き、年配男性アナウンサーの声がする。
「エアウォーク」
よくわからんがアマンダに向かって駆け出す。すると、まるで透明な階段があるかのように、俺の体はどんどん空を駆け上がっていくじゃないか。飛ぶことはできないが空が歩けるから、走る速度で飛べるのと同じことだ。
アマンダがラグビーボールをキャッチするように、胸と腕でがっちりとタストクリスの左手を受け止めた。タストクリスのところへ戻るのを阻止しなきゃ。
透明の階段を駆け上る俺の前に、4匹の従将が立ちふさがる。足を止めずに手近な奴を長剣で薙ぎ払う。
な、なんだ? 当たったのに手ごたえがないぞ。すり抜けちまったのか? こいつはイビルだろうよ。だが、俺のスキルでフレンドリーファイアーがキャンセルされたわけじゃなかった。年配男性アナウンサーの声が答えだ。
「イビルスレイヤー」
剣が銀色に光っていた。イビル退治に特化した剣だ。すり抜けたんじゃなく、手ごたえを感じないほど、きれいに切れたんだ。従将の体は真っ二つになって落ちていった。
次の従将が突き出すトライデントを払うようにしながら切り付けると、これも手ごたえがない。トライデントの又に当たったはずが、スッパリとトライデントが切れて、おまけに従将の頭を半分に切って目から上が宙に舞った。
あとの二匹も駆け上がりながら振るった剣の一往復で容易に葬り、あとはアマンダまでまっしぐら。距離が詰まったところで届くより先にスキルを見舞う。
「ホーリーファイアーバースト」「ガン!」
魔法陣が空中に浮かび、その上空に含まれたアマンダの体が燃え上がる。アマンダはタストクリスに近づこうと飛んでいる。間に入るように駆け上りながらさらに、
「ホーリーファイアーバースト」「ガン!」
アマンダがのけぞる。彼女の生命力はゴーガンや従将たちほどじゃなさそうだ。彼女もそれを悟ったのか、受け止めた手首を、タストクリスめがけて投げつけた。
「ホーリーファイアーバースト」「ガン!」
アマンダのコウモリ風の羽が燃え上がって灰になってくずれる。リーチ状態だ。だが、それより先に羽を失った彼女の身体は落下しはじめた。
「アマンダ!」
タストクリスは投げつけられた自分の手首を残った手で受け止めながら、落ちていくアマンダに呼びかける。アマンダは塔の上空にはいなかったので、塔を外れてさらに下の城壁の上に落ちた。
俺は今度はタストクリスめがけて空を駆け上る。距離を詰めて、炎の射程に収めた、と思った瞬間、タストクリスは北の渓谷へ向かって飛び去った。
「ちくしょう! 覚えてやがれ! ちくしょう! ちくしょう!」
いやもう、単なるガキだな。俺が言うのもナニだが。
下ではまだ戦闘が続いている。攻城戦は一進一退だ。おいおい、タストクリスの野郎、撤退の命令も出さずに逃げちまったのか? どうするんだよ、これ。
俺が一万五千を蹴散らしていかなきゃいけないのかよ。
空にポツンと取り残され、とりあえず敵を蹴散らしていくのに、さっき投げたハルバートがほしいな、と見下ろすと、場外に落ちている。あそこまで下りるのか。飛び降りられないんだよな、このブーツの力、切ったりできそうにないし。
とか思っていると、剣を持っていない左手のガントレットが輝いた。星の輝きじゃない。ガントレット自体だ。年配男性アナウンサーの声がする。
「リターンウェポン」
すでに地に落ちて止まってるハルバートが、急に宙に浮かび、だれかが投げたかのように俺の左手に向かって飛んできた。柄をガシッと受け止める。ガントレットのスキルで、手放した武器を呼び寄せられるらしい。さて、どうせ重さをほとんど感じないんだ、このまま両手武器でいこう。
見えない階段を駆け下りるのは、駆け上がるのと違い、ちょっとスピードが上がらなかった。




