勝負の結果
最近、他の作者さんの作品を読み漁りながら自分の作品と比較して思いました。
「あれ、ストーリー(自分の作品)の進行速度めっちゃ遅くね?」(゜Д゜;)
……………次回からもう少し削れるところから削っていこうかなと考えてたりします。
「知ってたよ、俺が負けることくらいさ…」
青空を見上げながら歩く俺はポツリと呟いた。
あれから1時間、ずっとグリーンスライムをぼこすか討伐したが結果はご覧の通り、俺の完敗で幕を閉じた。
ちなみに順位を発表するなら1位がアルティナ、2位がクロナ、3位がミーナ、そんで最下位が俺だ。討伐数は上から順に94、79、41、6である。
いや、皆まで言うな。分かってるよ。1時間で討伐数一桁とか我ながら情けなさすぎる。攻撃力はタイラントグローブのお陰で+500(レベル依存)されているが打撃系の攻撃とスライムは相性が致命的に悪い。
そこらにいる普通の魔物なら攻撃力が+500もされていたら一撃でやられるのだが、スライムはほとんどダメージを受けなかった。あのぷよぷよした柔らかく弾力性のある感触に攻撃力をほとんど削がれるからだ。
お陰で俺はグリーンスライムを引っ張ったり踏んづけたりしてかなり苦戦した。
ちなみにミーナは俺の苦戦してる姿を見て何故か身悶えていた。酷い時では顔を真っ赤にして鼻血出してたし…。ヤバい、後でたくさん血を吸われそうだ。
あ、ちなみにミーナの武器は先程と違って大鎌を取り出していた。鎌の柄を巧みに操りクルクルと華麗に振り回しながらグリーンスライムを真っ二つにしていた。………笑顔で。
どうやら大鎌が一番得意な武器というのは本当のようだ。……あの大鎌と【漆黒の羽衣】でも装備させれば死の女神のように見えたかもしれない。いや、今でも充分すぎるほどそう見えるし怖けど。
「まぁまぁ、今回マナさんは素手で戦ってた訳ですから無理もないですよ」
気を遣ってくれるミーナだが今はその優しさが心にしみる。自分で「負けた奴は罰ゲームな!」とか言っておきながら完膚なきまでに敗北したなんて恥ずかしすぎる。
「それで、罰ゲームはどうする?」
楽しそうにニヤニヤしながらクロナが言った。
「え―――」
「まさか、自分が言い出しっぺのくせに罰ゲームは無かったことにするつもり?」
「ちょっと待ってくれ。罰ゲームは皆で決めるんじゃなくて1位だったアルティナに決めて貰おう。討伐数、一番多かったしな」
クロナは何するか分からないし、ミーナには何されるか分からない。てか特にミーナには身の危険を感じる。それだけ絶対に避けねば…!
「むぅ、私が罰ゲームの内容決めたかったのに…」
不服そうにクロナが言った。ブスッとした顔はまるで不機嫌そうな子供だ。
ミーナもブスッとした顔はしてないものの、少し残念そうにしていた。
「勝者の権限ってやつだ。諦めてくれとアルティナも言っている」
「私はまだ何も言っていないのだが…」
勝手に人の思っていることを捏造する俺にアルティナは呆れたような目線を送った。
「ま、取り敢えずもうお昼頃だしそろそろ王都に戻らないと。結構動いたからもうお腹ペコペコだし」
「討伐数は一桁だったけれどね」
「やかましい」
「そういえば、依頼の件はどうしますか? 原因となるグリーンスライムは減らしましたけど、また増えるかもしれないのでギルドに報告します?」
「そうした方がいいでしょうね。もしかしたら原因を突き止めたお礼でいくらか貰えるかもしれないし。そしたら失敗した依頼分までとは言わないけど多少懐も温まるでしょ」
「なんというか、現実的な考え方ではあるな…」
アルティナが感嘆するとクロナは「当然よ、それが私だし」と自慢げに答えた。
「それで、さっきからなんで遠くを見つめてんのよあんたは…」
「うーん……どっかで見たことあるような気がするんだよな…」
「なんの話?」
クロナが何か聞いてくるが取り敢えず放置。
少し距離はあるけど草原の中に一本だけ他の色より濃い草が生えている。いつまでもここにいては分かりそうにないので色濃い草に向かって駆け出した。
後ろから皆の困惑した声が聞こえてくるがあとで説明すればいいか。
そう思いながら走ってると色濃い草の付近に1匹のグリーンスライムが現れた。それを見た途端、足の回転速度を上げて更に疾走する。
グリーンスライムがもごもごとうごめき、色濃い草へと近づく。多分だけど食べようとしているのではないだろうか。
「させるかぁぁぁあああああッ!!」
大声で叫びながらグリーンスライムを力の限りを尽くして蹴り上げた。グリーンスライムにダメージはほとんどないがポーンっと空高く舞い上がる。
その様子は高く蹴り上げられたサッカーボールのようだ。ボールは友達とか言いながらその友達を思いっきり蹴ってた人物をその時何故か思い出した。
その理論からするとグリーンスライムは友達なのだろうか? いや、グリーンスライムがサッカーボールという訳ではないが。
やがて重力に従って遠くまで蹴り飛ばされたグリーンスライムは川の上にポチャンッと音を立てて川底に沈んでいった。さよなら、俺の友達。あの世でも元気でな。
清々しいほどの気持ちでグリーンスライムの最期を見届けた俺は、隣にある色濃い草へと視線を移す。
深緑の葉にしっかりとした茎。全体的に少し変わった形をしているが、これは上薬草ではないだろうか。
上薬草とは、エネナギ草の一つ上のレア度の薬草だ。回復量はもちろん、治る早さだってエネナギ草より上だ。
もしかしたらこれを薄めて沢山のポーションを作ることが出来るかもしれない。早速採取して俺はミーナ達のところへ戻った。
「なにを採ってきたの?」
「これ」
そう言って俺はクロナに上薬草を見せた。するとクロナは意外そうな表情を浮かべると素直に感心してくれた。
「へぇ、これって上薬草じゃない。こんな所に生えてるなんて珍しいわね…」
確かにクロナの言う通りだと思う。MMORPGアルザストルーナでも始まりの街付近には上薬草なんてない。あるとするならばこの街の人達が警戒している【深緑の森】くらいか。
「ああ、これ1本だけしか生えてなかったからな。他にも見渡して探してみたけどなかったよ」
「まぁ、普通は【深緑の森】に生えてるからな。私も少しだけ行ったことはあるが、ほとんどが奥地の方に生えているぞ」
「何気にアルティナって【深緑の森】に行ったことあるのね」
「ん、まぁな。しかし熟練の冒険者パーティに同行してもらわなければ生き残れなかっただろうな」
何度も思うがやはりアルティナの話には少し違和感がある。【深緑の森】はボスのレベルでも40くらいだというのにアルティナと熟練の冒険者パーティで生き残れるレベルだというのだ。
アルティナの現在のレベルは85。本来ならソロでもボスを狩れる強さを持っている。明らかにおかしい。
「なぁ、アルティナ。【深緑の森】って昔からそんなに強い魔物がいたのか?」
「いや、これは熟練の冒険者に聞いた話なんだが、昔はそうでもなかったらしい」
(絶対何かヤバい魔物が住み着いてんだろそれ…)
そう思わずにはいられなかった。だって大抵の物語のお決まりだし。
「それよりその上薬草はどうするのだ?」
「取り敢えず依頼されてた調合屋に行って今回の事を報告した後、これを渡してこようかな」
少しでも足しになればいいんだけど。
「……これ、上薬草を薄めてポーションを作るにしてもちょっと足りないかもしれないわね…」
クロナが難しそうな表情で呟く。
「すごいな、薬草のことも分かるのか?」
「別に大した事じゃないわ。種類は知ってても私は錬金術師じゃないから正確な数値は出せないし」
「いや、それでも凄いだろ」
「…ッ! そ、そう…?」
クロナが少し嬉しそうに言った。照れ隠しに必死で表情に出ないように頑張っているが、口角が微妙に上がっているのでかえってニヤけた表情になってしまっている。
なんだかんだで可愛げがあるんだよね、クロナって。
「目安でも分かるようになったらそれはそれで便利そうではあるしな」
「あ、でしたら今度教会で転職をしてみてはどうですか?」
「転職…?」
ミーナのおかしな発言を理解出来ず俺は首を傾げた。転職以前にそもそも職業がないんだけど…。
そう思ってアルティナの方へとこっそり視線を向けると目をパチパチとまばたきさせていた。なるほど、アイコンタクトというやつか。
『よく聞けマナ。王立聖魔法女学院は前提として職業がないと入試を受けることが出来んのだ』
初耳な情報に口角をひきつらせながら俺もパチパチとまばたきをしてアイコンタクトをとった。
『いや、その情報初耳なんだけど? てかなんで最高責任者の学院長が説明してないんだよ。こんなの絶対おかしいよ』
どこぞの魔法少女のように文句を言う。だがアルティナはそれに構わずアイコンタクトを続けた。
……会話のキャッチボールって大事だと思うんだ。
『とにかく、だ。もし職業がないなんてバレた日には最悪学院から追放される可能性があるのだ』
『な、なんだってー!? それかなりヤバいだろ! 俺ここ追い出されたら行く宛皆無なんだけど!? しかもレベル1だから悪い人(美少女)に誘拐なりなんなりされて奴隷にされた挙げ句、「さぁ、今日から貴方は私のペットよ」とか言われて鞭で痛め付けられたりするかもしれないって事じゃないか!?』
『嫌なほど具体的だな!? しかも一部願望が混ざっていたような気がするのだが!?』
願望というよりは、高校に通ってた時に男子が「やっぱ年上美少女だよな!? だったらこう手玉にとられてみたいぜ!」なんて事を言っていたのでそれを参考にしただけなんだけど…。
俺はMじゃないので流石に鞭は嫌だけど年上美少女に掌の上で転がされるシチュエーションは個人的には悪くないと思う。誰に言ってんだろ…。
とにかくアルティナとミーナにステータスの変化を伝えておいて良かった。こうしてフォローしてくれるので今度からも何かあれば伝えるようにしよう。報連相って大事だね。
「ちなみにですが自分に合った職業を探すために学院の生徒が教会で転職しに行くことがわりとあったりします」
「へぇ~、そうなのか……知らなかった…」
追加情報に感心しながらもどうやってバレないようにするか模索しておく。そうそうバレることはないと思うけど万が一があるし。
「でも転職って結構お金掛かるわよ」
「え」
クロナの発言に不意を突かれた俺は彼女の方へと視線を移した。
俺、今無一文なんだけど…。
「当たり前でしょ。転職させる事が出来る魔導具【天性の秤】は教会にしかないもの」
【天性の秤】か…。懐かしいな。俺もよく転職して他の職業を1からやり込んだりしてたっけ。
ゲームでは転職すると今まで使っていた専用スキルが使えなくなり転職した職業のスキルを1から覚えなくちゃいけないという結構面倒な仕組みだった。
なので自分に合った職業が見つかった後で転職するプレイヤーは少なく、やり込みたい人だけが教会に来ては転職を行ってたりする。
まぁ簡単に言えば職業が剣士だと仮定して魔法使いに転職すると剣士の専用スキルは一切使えなくなる。また、魔法使いから剣士に転職して戻るとちゃんと習得した専用スキルは使えるようになるので消えるわけではない。
そして専用スキルとは別に汎用スキルというものがあり、これはどんな職業でも使用可能なスキルだ。結構便利ではあるのだが、他の職業に存在する汎用スキルを習得しようとすると転職して1からやらなきゃいけなくなるのでやってるプレイヤーは半数くらいしかいなかった。
よくお世話になった【天性の秤】に対して感慨深くなる。それとは別に少し悲しくもあった。
……ゲームでは無料で転職できたのにこの世界では金がいるのか…。
「ちなみにどれくらい掛かるんだ?」
「一回の転職につき金貨20枚」
「圧倒的に足りない!? てか高過ぎるだろ!?」
俺は思わず叫んだ。たった一回の転職でそんな大金をとるのはどうなのかと思ったが、クロナは当たり前のように言った。
「別に高過ぎることないわよ。職業ってのは自分の人生を大きく変えるものよ? それがたったの金貨20枚で出来るんだからむしろ安いものよ」
確かにクロナの言うことは最もだ。ゲームとは違い、この世界での転職とはまさに人の人生に大きく関わる。それが1年と数ヶ月遊んで暮らせるだけの代金(金貨15枚から推測した)で出来るのなら確かに安いのかもしれない。
しかし、俺は今無一文の上に働ける場所もない。働けない立場にいるならもちろん給料なんて入らないしお金を稼ぐ事ができない。……あれ、詰んでね?
「うーん……でもなぁ…」
「なに? そんなに転職したいの?」
クロナが不思議そうにこちらを見てくる。
「いや、そんな大金持ってないし(むしろ無一文)出来ないならやめとくよ」
俺はそう言いながら今後なにをするのかを考える。
(やっぱ一番必要なのはお金なんだよなぁ…)
そう思いながら俺は何か上手いやり方はないかと模索してみるが、結局は調合屋に着くまで何も思い付かなかった。
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