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調合屋【鍋釜亭】

最近忙しくなりつつある日々ですがなんとか書いていきたいです。





 王都に戻った俺たちはギルドにエネナギ草枯渇の原因を報告した後、目的地であった大通りにある調合屋に到着した。


 ちなみにギルドからは原因が本当に合っているのかを確認するため、報酬などは何も受け取っていない。もし報告した通り原因がグリーンスライムだったら後程学院長を通して銀貨10枚が送られるそうだ。



「ここが目的地の調合屋か…」



 紙にメモされていた通りに進んだがここまで大きい調合屋とは正直思わなかった。


 木造ではあるものの、傷もほとんどなく綺麗だ。ちゃんと出入り口付近に看板が立て掛けてあり、そこには「調合屋【鍋釜亭】」と大きな文字で書かれていた。名前からしてちょっと飯屋と勘違いしそうだ。


 取り敢えずドアを開けて中にも入ってみると同時にチリン、チリンと呼び鈴が鳴った。


 調合屋の中は沢山の木製の棚があり、そこにはかなりの種類の商品で埋め尽くされていた。でもちゃんと通路の幅は確保されているのでそこまで狭くないし、室内はかなり明るいからよく見える。


 他の客も歩きながら目的の商品を探しては買いに行っている。その中に一般人もいるが、比率的にはやはり冒険者の方が多い。


 薬草から作ったポーションや攻撃力などを強化したりする補強薬などの医薬品もあれば、狩りに使う罠用の道具や何に使うかも分からない変な水晶もあった。……全体的な印象としてはなんか掘り出し物でも出てきそうな感じの店だ…。


 ミーナ達も興味本位でそれぞれ棚にある商品をしばらく眺めたりしている。



「俺は報告してくるから皆はここで待っててくれないか?」


「え、でも―――」



 1人で報告してくる事を突然告げられたミーナが心配そうにするが、俺は軽く笑って言った。



「報告してくるだけだから大丈夫だって」


「……ふむ、なら私達はお言葉に甘えさせてもらうとしよう」


「私もあんたに任せるわ」


「えと、お任せしてもいいですか?」


「おう、任せとけ」



 了承を得た俺は一人で店内をあちこち歩き、店主を探す。しかし、店主らしき人物はなかなか見つからず困った俺は空いてるレジに向かうと会計を担当している店員に尋ねた。



「あの、ちょっといいですか?」


「はい、なんでしょうか?」


「この店の店長さんは今どこにいますか?」


「店長ですか…? 店長なら多分奥の工房にいると思いますが……何のご用でしょうか?」



 訝しそうに聞かれたが俺はポケットから依頼書を取り出すと店員に伝えた。



「ギルドの依頼の件でエネナギ草を運搬してきたと伝えて下さい」


「あぁ、なるほど。分かりました、今すぐ呼んできますので少々ここでお待ち下さい」


「お願いします」



 そういうとパタパタと忙しく店員が走っていった。なるほど、レジの反対側に工房があるのか。見えにくい位置にあるが、扉には「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた紙が貼り付けてあった。


 すぐに扉は開かれ、中から白衣を着た店主らしき男性が出てきた。歳は推定で20~30の間で意外と若い。視力が悪いのか、眼鏡をかけている。


 店主は俺に気付くとこちらへと歩いてきてにこやかに話し掛けてきた。



「やぁ、君が運搬依頼を受けてくれた人かい? 見たところ、運搬してきたようには見えないが…」


「ええ、その事について報告することがあったので来ました」


「うん? その様子からだと何かあったみたいだね」


「少々悪い事が起こりまして…」


「ふむ…詳しく聞かせてくれないかな」


「はい、実は―――」



 俺は店主にギルドで起こった騒動を全て話した。するとそれを聞いた店主は後頭部を掻くと眉間に(しわ)を寄せた。



「参ったな……施設の方も足りなくなっているのに…」


「施設…?」


「ああ、最近出来たばかりの施設でね。エネナギ草を、王都内にある空き地を買い取って人工的に栽培しているんだ」


「へぇ、そんな所があるんですね…」



 なんか意外だ。てっきり自然に生えてるものを採取するだけだと思ってたんだけど。



「でもね、まだ試験段階だから数が少ない上に失敗して商品にならないものも出てくるから結局は需要量に追い付いていないんだ」

 

「道理で今も値上がりしてる訳ですか…」



 俺は納得したように呟くと店主は苦笑した。



「それを言われると耳が痛い…」


「すみません」


「いや、君の謝ることじゃないよ。もっと早くから人工栽培を始めていたら需要量に追い付けていたかもしれないし、依頼の件だってあれは仕方のないことだよ」



 店主はそう言うと「話が脱線したね」と苦笑しながら訊いてきた。



「依頼の件に関してなんだけど達成出来なかった以上、すまないが報酬は諦めてくれ。こちらもあまり余裕がなくてね」


「いえ、その事なんですけど―――」


「何かあるのかい?」


「すみません、ここでは少し話しづらい内容なので…」


「なら応接室に案内しよう。防音機能もあるからそこなら大丈夫だと思うし…」


「ありがとうございます」



 「ついてきてくれ」と言われ店主の後を歩く。関係者以外立ち入り禁止の張り紙がある扉を抜けてその先にある廊下を進む。


 商品の並んであった表とは違い、ここは必要最低限の明かりしかなく薄暗い。仕事をしているであろう物音は聞こえてくるのだが、見た目だけなら夜の校舎にいるみたいだと錯覚してしまいそうだ。


 少し歩き、いくつかある扉の一つを開けると少しお洒落な部屋についた。ここが店主の言っていた応接室なのだろう。



「それで、話というのはなんだい?」


「一つだけ、今から話す事は他言無用でお願い出来ますか?」


「それは何故かな?」


「今からその理由をお見せします」



 そう言うと即座にメニュー画面を表示した。突然空中に出てきた淡く光る板状のものに店主はまさかとでも言うように目を見開いていた。



「これが何か分かりますか?」


「ステータス表とは違う色…? まさか…っ! 勇者とその仲間だけが使えるメニュー画面…ッ!?」



(あ、メニュー画面ってもしかして勇者とその仲間にしか使えない……という認識になってるのか)



 もしくは勇者達以外に異世界人がいなかったからそういう認識になったのか、あるいは異世界人にも使える人と使えない人でわかれているのか。


 さて、まずは身の振り方を決めなくては。利益のためとはいえ、勇者達にしか使えないとされるメニュー画面という数少ない強力な手札の一つをきったのだ。覚悟を決めてやるしかない。


 もちろん俺は勇者でもなければその仲間でもないので、この情報が勇者達の耳に入れば確実に目をつけられることだろう。もし俺が逆の立場だったら必ず調べておくし。他言無用と釘を刺しといてよかった。


 それにせっかく手に入れた新情報だ。上手く利用することにしよう。そう決断した俺は真面目な表情で話を進める。いや、虚構を並べ立てると言うべきか。



「そうです。俺はとある理由から勇者様達と別行動を取っているのですが、この街にいる以上、今起きている状況に手を打つことにしました。そして先程も話した通り、原因も突き止め、問題の解決に向けて集めてきたんです」


「集めてきた…? まさか」


「想像している通り、エネナギ草を集めてきました」



 そう告げると同時にアイテムボックスから依頼されていた1キログラム――――いや、それの数倍の量を取り出した。見た目的には取り出したというか、床にぶちまけた感じではあるが。



「なっ…!?」



 店主が驚愕する。



「確かに運搬されるはずのエネナギ草は燃やされてしまいましたが、俺の手に掛かればエネナギ草の一山くらい問題ありません」



 ほんの少しだけ「俺凄いだろ?」感を出しておく。自分の中にある勇者の仲間ってイメージ像がそうさせているのかもしれない。やってて思ったけどめっちゃウザいなって自分でも思う。



「さて、明らかに運搬される量よりありますが、もしよかったら余剰分は買い取ってくれませんか?」



 そう言われてハッと我に返った店主は急いで黙考し始める。やがて結論が出たのか、眼鏡の位置をカチャリと押し上げると小さく笑みをこぼした。それと同時に眼鏡が怪しく光った気がしたのだがそれは気のせいにしておこう。



「なるほど、なるほど…。分かりました…! 余剰分のエネナギ草は全てこちらが買い取りましょう! いやぁ、これで研究とポーション製造が(はかど)りますね!」



 店主が若干興奮気味に言う。彼も店主という立場だからポーションを製造していると思うが、この様子から察するに仕事熱心だというのがひしひしと伝わってくる。



「それは良かった」



 これは高値で買い取ってくれそうな予感。普通なら怪しまれてもおかしくはないのだが、さすがは勇者の知名度。証拠となりうるメニュー画面を見せれば簡単に信じてくれるぜ、クックック…(悪い笑み)



「あ、ちなみにですが他に何か売る物があったりしますか? 良ければ高く買い取りますよ」



 上機嫌な店主のお言葉に甘えるとして、俺は帰路の途中で見つけた上薬草を取り出す。



「今のところこれくらいしかないですね」


「上薬草……珍しいですね。【深緑の森】の奥地で採取したんでしょうか?」


「いえ、すぐそこの草原で偶然見つけただけです」


「そんな馬鹿な……上薬草は空気中にある魔力濃度が高い場所にしか生息しないはずなのですが…」



 へぇ、そうなのか。初めて知った。


 ゲームでは上薬草なんて草原でたまに採取出来るし、森の方に行けば普通に見つかる。たいして珍しくもないアイテムだったけど、ここでは違うのだろう。


 それにさっきの説明が本当なら上薬草が生えてたあの場所は魔力濃度が高いことになる。他の場所では上薬草が見られなかったため、また今度時間があれば調べておこう。



「以上でよろしいですか?」


「はい」


「では、勘定するので表の方でお待ち下さい」



 そう言うと店主はさっそくエネナギ草の量を確認し始めた。あのスピードなら10分程度で勘定が終わるだろう。それまで表にある商品でも眺めておこうと俺はそそくさと応接室から退室した。



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