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ミーナの魔導具と想い

気づけば40部…!

これからももりもりと書いていきますε≡ヘ( ゜Д゜)ノシュバウィーン!




「よし! 今からエネナギ草を採りに行こう!」



 そう決意したのは良いものの、なんだかクロナとアルティナの視線が冷たい。


 なんでかな? と、とぼけてはみたが心当たりがあるので多分それなんだろうね。


 そんな事を考えているとクロナが呆れた様子で警告してきた。



「あんた、私の話聞いてた? 草原はまだしも【深緑の森】には強力な魔物がいるのよ? エネナギ草を採りに行くなんて自殺行為よ」


「ん? あー、いや、別に【深緑の森】に行くって訳じゃないぞ?」



(行ってはみたいけど…)



 否定しながらも行きたいと思っているのは黙っておいた。余計なことを言って心配させるのも悪いし………いや、ミーナとアルティナならともかくクロナは「あんた馬鹿なの!?」ってくらいの勢いで罵声(ばせい)を浴びせてきそうだ。



「それで? エネナギ草がありそうな【深緑の森】じゃなかったらいったいどこでエネナギ草を採取するっていうの?」



 クロナの真っ当な質問に俺は王都の外に指を差して答えた。



「王都のすぐそばにある草原。まぁ確かに採りに行くって言ったけど実際は見に行くだけかな。もしかしたらちょっとくらい生えてるかもしれないし」


「希望的観測ね…」


「そう言われれば何も言い返せないな。でもさ、エネナギ草がほとんどなくなってからクロナは実際に草原を見に行ったことあるのか?」



 俺の質問にクロナは首を横に振った。



「いいえ、ないわよ。でも王都を出入りしてる冒険者や商人達がそれを証言してる。ならそれは事実ということでしょ」


「それでも実際に行って自分の目で確かめたいとは思わないか?」


「私の主義は『いのち大事に』よ」



(この世界でもそれあったんだ…)



 いや、感心してる場合じゃない。懐かしさが込み上げてくるけど今はどうやってクロナを説得するかに専念しなくては。


 このままでは何も進まないのでどうしようかと少しの間対策を考えると、俺はアルティナの方へと視線を向けた。



「アルティナ、俺たちが集合する時に何か一つ奢るって言ってたよね?」


「む? まぁ、確かにそう言ったが…」



 今の状況とこの質問になんの関係があるのかと言いたい顔をしている。まぁ、突然こんな事を言われたら誰だってそんな顔をするか。


 だが、察しの良いクロナは俺が何を言いたいのか思い当たったようで「まさか…」と呆れ半分の声を出していた。



「それならさ、少しやり方を変えないか?」


「やり方…?」


「そう、やり方。何かを奢るんじゃなくってお願い事を一つだけ叶えて欲しいんだ」



 そう言った瞬間、クロナは嫌な予感が当たったというように大きなため息を吐いた。


 一方でアルティナはいまいち状況を掴めず目を丸くしている。



「願い事か…………はっ!? い、いくらなんでも限度はあるぞ! え――――えええエッチな事は禁止だからな!?」


「そんなお願いしないからッ!?」



 顔を真っ赤にしたアルティナが恥ずかしそうに叫んだ。


 その発言だけでアルティナが俺をどんな目で見てるのかなんとなく分かった。出来れば分かりたくなかったけど…。いや、まだ男と認識されているだけマシなのか…?



「駄目ですよマナさん。もし女の子にそういうことをしたら――――大変なことになりますよ?」



 そう言うとミーナはニコリと微笑んだ。


 何故だろう?……とても可愛らしい笑顔なのに恐怖しか感じない!?


 俺がミーナに内心で戦慄(せんりつ)していると隣にいたクロナが少しニヤついた表情で言った。



「そうね。見た目は少女でも中身は男。所詮男なんて狼みたいなものなんだからもう既に2,3人食べられてるんじゃない?」


「んな訳あるか!」



 とんでもない嘘をついたクロナの言葉を即座に否定する。事実無根だし、なによりも恩人の経営している学院の生徒達に手を出すなんて死んでも出来ない。恩を(あだ)で返す奴にだけはなりたくないからな。



「マナさん、私はとても悲しいです。大切なパートナーを失うということが…!」


「まって! それ絶対誤解してるから!? てかその手に持ってるモーニングスターはどっから取り出したのっ!?」



 気付けばいつの間にかミーナの手にモーニングスターが握られている。ジャラジャラと鎖同士が音を立て、先端にはバスケットボールくらいの大きさのある刺つき鉄球。投げたり振り回したりする武器なのだが、大きさが大きさなだけに本当にどこに隠してたんだろう…。


 そんな疑問が顔に出ていたのか、ミーナは何かを察したように説明した。



「あぁ、それならこれを使ってるんです」



 そう言いながらミーナは右腕の袖を少しめくり上げると、紫色の細い腕輪を俺に見せてきた。



「なにこれ?」


「私の所有している魔導具です。武器や防具をキーホルダーにするもので、持ち運ぶ時に便利ですよ―――はい、こんな風に」



 ミーナは魔力を込めて魔導具を起動させた。腕輪が(ほの)かな紫の光を放つと、彼女の持っていたモーニングスターが瞬く間に小さくなっていき、最終的にはキーホルダーになった。


 そしてもう一度ミーナが魔力を込めると、今度は先程までのサイズに戻り、キーホルダーだったモーニングスターが立派な武器となった。



「す、すごいな…」



 収納限界のないアイテムボックスを持っていてもそう感じさせるほどだ。しかも武器をキーホルダーに出来るんだから相手の油断を引き出しやすい。



「他の武器とかはあるのか?」


「えぇ、ありますよ。片手斧に(なた)、包丁、大鎌………あとはシャベルですね」



 ほら、とミーナが今言った武器のキーホルダーを見せてくれた。


 武器っぽいものならともかくシャベルってどうなんだ。いや、別にシャベルが悪い訳ではないんだけどそれを武器として扱うのは少し疑問を覚えざるを得ない。


 ……なんだろう、シャベルで敵と戦う女子高生でも目指してるのかな。それならミーナより見た目的にクロナの方があってるのかもね。今はサイドテールだけど普段はツインテールだし。



「「「………………」」」



 ………まぁそれはともかく、それらの武器をミーナが装備しているイメージが全く思い浮かばないんだけど。


 アルティナは知っていたのか苦笑いだ。クロナはなんとも言えない顔をしていた。



「そ、それでミーナはどの武器を扱うのが一番得意なんだ?」



 俺はミーナのメイン武器を半分興味本意で聞いてみることにした。


 武器というものはそれぞれの種類によって戦術やパーティでの陣形を組み換えていかなければならないのが常識だ。でないと最悪の場合、同士討ちになってもおかしくないし、それを防ぐために聞くことにしたのだ。


 まぁ、それは草原に魔物が出なかったら意味のない話なんだけどその可能性はほぼゼロだろう。



「そうですね……一番扱いが上手なのは大鎌だと思います」


「「ごめん、まったくしっくりこない…」」


「え、えぇ!?」



 いや、だってそれが普通の反応だと思うぞ。普段は笑顔の素敵な美少女が大鎌を振り回して魔物を狩っているとか想像できない。


 その気持ちはクロナも同じだったようで、少々困惑した様子だ。



「つ、次へ行きましょっ!」


「お、おう! そうだな! アルティナは主にどんな武器を使うんだっ?」



 ちょっとどもりながらだけど、なんとか話題を変える。



「そうだな……私は主に片手剣を使うぞ。たまに大剣も使うな」



 なんというか、予想通りだ。アルティナのイメージは女騎士みたいな感じだから片手剣や大剣を装備してもしっくりとくる。



「イメージ通りでしっくりくるな」


「それは何よりだが……なんだ、どうしたのだ? こっちをジッと見て」


「んー。これはあくまで俺の予想なんだけどさ、今アルティナの装備してるものよりもう少し重い装備に変えてもいいんじゃないかなーって」



 アルティナの装備は実に軽装で最低限の防御は出来るようにしてあるだけだ。これは弓使いや罠師が装備するようなもので、騎士のようなアルティナには少し軽すぎるんじゃないだろうか?


 毎日、早朝から鍛練してるって話では聞いたことあるけどそれなら筋力も充分あると思うし、もう少し鎧の部分を増やして装備を重くしても戦闘に支障は出ないだろう。


 そのことをアルティナに伝えたら指摘したことが当たってたようで「確かに…」と(うなず)いていた。



「そうだな……マナの提案は検討しておこう。見事な指摘だったぞ」


「い、いや、そんな事は…」



 アルティナはこちらの瞳を真っ直ぐ見て言った。彼女のこういう所は少し困る。家族以外とほとんど接点を持たなかった俺は他人から()められたこがないのだ。


 そういう点に関しては全くと言っていいほど耐性がないのでどういう反応をしたらいいのかわからない。


 多分、ちょっと顔が赤くなってるかも。


 彼女のこういう臆面なく気持ちを言える所が少し羨ましいと思う反面、それをこっちに向けて欲しくない気持ちも少なからずある。


「なに、謙遜(けんそん)することはないぞ? マナの観察眼は大したものだからな」


「いや、あの……だから…」



 そろそろ止めてくださいお願いしますこのままだと羞恥心(しゅうちしん)で死ねそうですから。


 俺の心の悲鳴に気付かないアルティナは機嫌良さげそうに更に続ける。



「私の友人はこれほどの観察眼を持っているんだ、と中等騎士学園で共に過ごした旧友に遠慮なく自慢出来る。なんならクラスメートにだって――――」


「……くっ! 殺せぇッ!!」


「何故だ!?」



 恥ずかしさに耐えられず女騎士の有名なセリフを叫ぶとアルティナは困惑した様子で疑問を投げかけてきた。しかし、今の俺には答える気力もなく、彼女の疑問は虚しく響くだけ。


 これってなんの罰ゲームですか? 俺ってそんな悪いことしましたか? いや、ほんとなんか気に触ること言ってたら謝りますからこれ以上はマジで勘弁して下さい…。


 冗談抜きで死にそうだから。天国にいるおじいちゃん見えてきそうだから。


 そんな俺とアルティナのやり取りを後方で見ていたミーナは幸せそうに微笑んでいた。


「マナさんもアルティナも、なんだかとっても楽しそうですね」


「そういうあんたはどうなのよ?」


「私は見ているだけで満足ですよ」


「……一緒に楽しみたいっていう想いくらいあるでしょ?」


「あるにはありますが……きっと、私にはそんな資格なんてないんだと思います」



 そう言いながらミーナは先程とは一転、悲しそうにマナを見つめていた。それを見たクロナはしばらくの間何も言えずに沈黙した。



「………あんたとあいつの間に何があったのかは知らないけど、資格があるとかないとかそれを決めるのはあんたじゃないって事はよく分かった。……人生の先輩からアドバイスよ。そうやって自分一人で抱え込んでもいい結果は得られないわ。より良い結果を目指すなら選択肢を増やすことね」


「…………………………」



 クロナからの忠告に今度はミーナが沈黙した。確かに彼女の言う通りかもしれない。一人で抱え込んでいればいつか耐えられずに破綻(はたん)してしまう。それは魔族でも人間でも変わらない。


 ミーナはクロナの言葉を重く受け止める。ミーナ自身、彼女のことをあまりよく知らない。国から認められた天才、魔導工学研究部の部長、意外と優しいなどそれくらいだ。


 人生の先輩って自分で言いうくらいだから冗談のつもりで言ったのだと思っていたけどそれは間違いだった。


 忠告してくれた彼女の表情は真剣そのもので、とても冗談を言っているような雰囲気ではなかったから。それに、その表情で冗談を言う彼女でないことくらいミーナでもわかる。


 だからこそ、過去のクロナにいったい何があったのかと気になった。けど、それは詮索してはいけないことなんだと思う。根拠なんてないけどミーナは本能でそれを理解した。


 それに、今考えるべきことはそんなことじゃない。原因不明とはいえ、こちらの都合で彼をこの世界に召喚してしまったことに対してどうやって償えばいいのかを考えていかなければならないと思う。


 ――――いつか必ず、この償いをしてみせます。


 そう覚悟を決めたミーナの表情は、クロナでさえ凛々(りり)しいものだと感じた。



(はぁ…。あんたって難しく考え過ぎな気もするんだけど……まぁ、流石(さすが)に水を差すのは悪いわね…)



 なんてクロナは少し心配する。考え過ぎというのは一人で抱え込んでいるのとそう変わらない。考え過ぎて空回りしなきゃいいんだけど…と、内心はこう思っている。



「あっ、それにしてもマナさんって初心そうで可愛いですよね! アルティナに褒められて顔真っ赤にしちゃってますよ!」


「……………」



 キラキラと輝く笑顔でミーナがそんなことを言った。………なんだか心配していた自分が馬鹿みたいだとクロナは思った。


 今のミーナの表情は本当に幸せそうで、心配するんじゃなかったと若干後悔した。



「まぁ、あーゆーのは人の感性にもよるでしょ」


「ですよね! 可愛いと思いますよね!」


「人の話、聞きなさいよ…」



 クロナは頭が痛くなった。頭痛薬でも買っておこうかと真面目に悩みそうになる。



「今度、私もアルティナみたいにやってみますね♪」


「あんたは鬼か…」



 笑顔でそんなことを言うミーナの傍らで、少々呆れ気味な様子のクロナはこれからどうなるのかと少しだけ未来を想像してため息をついた。




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