眠れる彼女の起こし方
今回はだいぶ短いです。
―――――唐突だが夜刀神真奈の朝は早い。元いた世界の習慣が体に染み付いているので朝の5時くらいに目が覚めてしまうのだ。
早起きは三文の得なんてことわざもある。物事が捗ったり、健康維持も出来るのでその大切さが分かるだろう。
「さて、と」
俺はベットから起き上がると布団を畳んでてきぱきと準備を始める。着替えを終わらせてアイテムボックスから食材を取り出し、台所にある調理器具も用意したところで一旦作業を止める。
「そういや昨日の作業途中で終わってたんだ…」
なんか寒いなと思っていたら昨日の大穴が残っていた。半分ほど修理は終えているものの、まだ一人くらい出入り可能だ。
この小屋は王立魔法聖女学院が建設する時に大工が使用していたものなので裏手には工具と予備の木材や鋼鉄が沢山あり、そのため修理には事欠かない。
予備の木材は釘が打ちやすいように薄くしてある物もあったので残りの作業を一時間ほどで終わらせる事が出来た。それでもこういう事と無縁だった俺には結構大変であったが。
洗面所で手を洗い、白薔薇の刺繍が施された制服を着用して小屋から出ていく。
学生寮の管理人から許可を得て誰もいない廊下へと足を運ぶ。部屋の扉が並ぶ廊下を過ぎ去り、隅の方に目立たないよう設置されている扉の前に立ち止まった。
俺はその部屋の扉に迷いなくノックする。ここはミーナの部屋であり、朝が弱いので時間があったら毎朝起こしに来て欲しいと頼まれていたのだ。
「……………………………」
(返事がない。ただの屍のようだ…)
……ってそうじゃなくて。たまに起きている時もあるってミーナは言ってたけど今回は返事がないのでまだ寝ているらしい。
「……………し、失礼しまーす…」
思わず小声になった。返事がない時は起こしてと本人から入室許可を貰っているのだが、いざ入るとなると緊張してしまう。仮にも少女の部屋だ。緊張しないと言うならそいつは男性ではない。女性かオカマのどっちかだ。
震える手でドアノブを回して入室する。そこには以前と変わらない部屋があるが、今はカーテンが閉ざされ部屋が少し暗い。そして部屋中に広がる微かな甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
前にも入ったことあるけどその時はミーナも起きていたのでなんだかとても新鮮だ。
ふと、ベットに視線を向けるとミーナが可愛い寝息を立てて熟睡していた。寝相は悪くないようで布団があまり乱れていない。足と手を少し曲げ、右向きで寝ている。
(こういうの見ると元の世界にいた頃によく読んでた心理テストの本を思い出すな…)
「確か、こういう寝相をする人って協調性が高く、ストレスを上手く回避出来るって書いてあったような……なかったような…。いや、そんなこと言ってないで取り敢えず起こすか」
そう言ってミーナの肩を軽く掴んでユラユラとそっと肩を揺らす。
「おーい、ミーナ。朝だぞー…」
「…んぅ……」
「早く起きなきゃイタズラしちゃうぞー?」
「……………ん、………むにゃ…」
本当にイタズラする気はないが、なかなか起きてくれない。試しに呼び方を変えてみるか。
「お姉ちゃん、起きてー?」
「………………すぅ……ん…」
「起きてくれ、姉さん」
「…………………………」
「お姉様、起きて下さい」
「…………………………えへへ………ふにゃ…」
なんか随分と嬉しそうな表情で眠っている。余程幸せな夢でも見ているのだろうか?少し起こすのを躊躇した。
どの呼び方でもなかなか起きないミーナをどうやって起こそうかとしばらく悩んでいると、俺にとある良案が思い浮かんだ。
くっくっく。悪い顔をしてないと思うが、俺はそっとミーナの寝顔に近付くと少し高めの声で呟いた。
「ご主人様、起きて…?」
「…………ッ!?」
するとミーナが突然ガバッ!と起き上がり、勢い余って俺と頭をぶつけた。
「あうっ!?」
「ぐはぁッ!」
そしてミーナは再びダウンした。
レベル1の俺はぶつけた頭に激痛が走り、床に倒れて悶絶した。多分ミーナと比べて痛みの次元が違うのでこればっかりは仕方ないと思う。
「ミーナ、そろそろ起きてると思うのだが――――って何をやっているのだお前達は…」
そういって入室して来たアルティナがこの現状を見て呆れていたのは言うまでもない。
【オマケ】
マナ「人を起こす時の呼び方ってそんなに大事?」
作者「当ったりめーよ!って言いたいけどこればっかりはその人次第なんじゃないかな?」
マナ「じゃあなんでこれ書いたんだよ…」
作者「そうゆうシチュエーションってあった方がいいと思ったから」
マナ「私情かよ…」
作者「面白いからいいじゃん。ミーナがマナを押し倒すシチュエーションも悪くないと思うけど?」
マナ「俺がミーナを押し倒すんじゃないのか?」
作者「通常とは真逆を走るスタイル!」
マナ「come back!(戻って来い!)」
作者「まぁ、取り敢えず想像してみてくれ」
マナ「想像したくはないが一体何を想像しろと?」
作者「マナがミーナを押し倒すと言ってもマナはミーナより身長が…」
マナ「人のコンプレックスを抉るのはやめろ」
作者「そんなことでミーナがマナを押し倒すという逆シチュになった訳でして」
マナ「おいこらちょっと待て!そのシチュは確定なのか!?」
作者「未定だよん。それにマナの見た目とその逆シチュが合わされば百合に見えなくもーーー」
マナ「おいやめろ」
作者「そういや今気付いたが、押し倒すのが無理なら壁ドンも無理なんじゃーーー」
マナ「する機会なさそうだけどな」
ミーナ「これはマナさんへの精神的ダメージが大きいですね…」
マナ「…ッ!?い、いつからそこに…?」
ミーナ「もぅ、作者さんの邪魔しちゃダメですよ…?」
マナ「いや、でも今後に関わる重要な話がーーー」
ミーナ「作者さん、マナさんをお借りしますね♪」
作者「おう、持ってけ!持ってけ!」
マナ「おいこらせめて助け船出すなりなんとかしろよ!?」
作者「ミーナはお助けキャラだから」
マナ「それはお前に対するものだろ!?」
作者「マナの寝顔写真一枚」っ写真ピラッ
ミーナ「今すぐ持って行きます!」
マナ「まさかの追撃ッ!?」
こうしてマナはミーナに襟首を掴まれ引きずられていったのだった。




