魔導工学研究部について
投稿までの期間が長くなります。
「クロナは一人でも部活を継続させるだけの部費と功績はあるが、それでは人間関係に支障が出る可能性があるとリリア先生は考慮し、そこで、期限内に部員を最低でも一人確保しないと廃部にするという条件で俺を入部させて現在に至る……そんなところか?」
「ええ、まぁその通りよ」
魔導工学研究部の部室の前にある会議室で、マナ、クロナ、リリア先生は綺麗に並べられた椅子に座っていた。この部屋は、もう卒業してしまった部の先輩達が議論を交わすために使っていたそうで、今は誰も使っていない。
「…………俺じゃなくてもよかったんじゃないか?」
「さっきはそうでも、今は誰でもいいって訳じゃないわ」
「と、いうと?」
「この魔導工学研究部は、ずっと前からちょっとした恒例事業があってね。入部希望者やそうでない人もある試験を受けてもらってるのよ」
「ある……試験…?」
クロナの言葉にマナは首を傾げる。
「そ。試験の内容は想像力や発想力を試すテストよ。魔導具を開発する際、開発者本人の安全性も上がるし、何よりもそういう能力が高い人は新たなアイディアを思い付きやすい」
「なるほどな。想像力や発想力が豊かな人は新たなアイディアを思い付きやすく、そしてそれが成功した時は部の功績になる…………ん?もしそうなら何で部員がクロナだけなんだ?優秀な部活は希望者が多いと思うんだけど…?」
「さぁね…?あんたは何でだと思う?」
マナはある疑問点を口にした。しかし、クロナは答える事なくはぐらかした。訊いても無駄だと判断したマナは、顎に手を当てて考える素振りをした。
(部活の功績が高ければそれなりに有名になるはず。それに興味を持った生徒達が集まってくる……だというのに部員がクロナだけ……?クロナにあって他の生徒にないもの……まさか―――――)
「入部希望者がクロナ以外試験に落ちた…?想像力や発想力が足りなかったのか…」
マナは答えながら微かに視線を動かしてクロナの様子を見る。
「ええ、そうよ。昔は結構部員がいたらしいんだけど最近は全然よ。まぁそれも、昔と比べて今の時代は便利な魔導具がたくさんあるから新しい魔導具を開発する必要性を見い出だしにくくなっているのだから仕方ないと思うわ」
クロナが少し残念そうな顔をした。自分以外の周囲の人々は、今ある技術に満足している。この状況にクロナは何か不満があるのかもしれない。
「ところで魔導具ってなんなんだ?」
「………………………は?」
「………………………え?」
マナは、先程クロナが言っていた単語に興味を引かれて目の前にいる二人に聞いた。しかし、マナの質問に、おっとりした感じのリリア先生でさえ、愕然として信じられないといったような表情になる。クロナに至っては肩をプルプルと小刻みに震わせて戦慄している。
マナは二人の様子の変わり様に少し戸惑う。何かおかしな事でも言ったのだろうかと、マナは先程の会話を思い返しながら首を傾げる。
「………あ、あんた…!……魔導具も知らないなんてどんな辺境から来たのよ!?」
「え?えと、極東にあるナラクって島国だけど?」
「あそこでも魔導具は使われているわよ!?」
マナの言葉にクロナが盛大にツッコんだ。
「ん~?おかしいわねぇ。魔導具は全世界共通の常識のはずなんだけど~?ん~??」
(げっ、地雷踏んだのかよ…!魔導具なんてあのゲームに存在しなかったんだし、そもそも俺はこの世界の人間じゃないから仕方ないだろ…!?)
マナは内心愚痴りながら地雷を踏んだことを後悔した。
「イ、イヤー、ソノナカデモトクニヘンキョウニスンデタンデシラナインデス、ハイ…」
「それ本当?」
誤魔化すためにマナは必死に脳を回転させるが、出てきた言葉が全てカタコトになってしまった。そのせいか、クロナは彼に疑うような眼差しを向けた。
マナは内心、焦りは禁物だと自身を戒めて心を落ち着かせる。
「……ああ、故郷でいろいろあってな…」
「……!あ、ごめん…」
クロナは何かを察したようで、急にシュンとなって申し訳なさそうに小声で謝った。本当は誤魔化すために咄嗟についた嘘なので、そんな顔で謝られると、こちらが罪悪感で心が押し潰されそうになる。顔には出していないものの、マナは心の中でクロナに土下座した。
(なんか、マジでごめん……)
それからクロナは魔導具について分かりやすく教えてくれた。
魔導具とは、魔力の宿る物質に魔法を発動させる術式を刻み込んだ道具のことだ。使い方は道具によって様々ではあるが、基本は自身の魔力を魔導具に流し込むか、空気中の魔力を集めて発動させるかの二つだけだ。
魔導工学は魔導具について学習する科目だそうで、新たな魔導具開発なども行われているらしい。
この異世界での魔導具は、昔から武器や防具に使用されているが、最近では一般的に使われてる洗濯機や調理器具など、生活面でおおいに役立っている物のほとんどにも魔導具が使用されていると聞いた時は、さすがのマナも驚かざるを得なかった。
発案したのは先代の勇者だと言い伝えられているが、もし本当なら先代の勇者はマナと同じ異世界人である可能性が高い。
その後の時代も魔導具の開発は続けられ、人々の生活はかなり豊かになった。
そしてクロナの話を聞いている内に、彼女は魔導具開発に関する天才だということをマナは思い知った。部室の壁に設置されている巨大スクリーンは二年前にクロナが開発し、更にその少し後にモニターまで開発したそうだ。
この国や学院の闘技場に、クロナの開発した巨大なモニターが設置されており、主に観戦や戦力の分析に使用されている。
これらの功績から、国からクロナに表彰が贈られ、魔導具開発の天才だと公の場で国王自身に認められたらしい。
「………………………………なんか…………想像もつかないほど凄いことしてるんだな…」
「ふふんっ♪当然よっ!」
やってる事が凄過ぎてマナは少し呆れながら感心した。そんな様子をお構いなしにクロナは上機嫌で胸を張っている。ポン、と胸に軽く拳を叩いた反動で、ポヨンとたわわな胸が揺れた。
それを見たマナは少し顔を赤らめながら、視線をずらして見なかった事にした。
それにクロナは、マナの過去についてこれ以上踏み込むことはしなかった。クロナは気遣い上手だなと思い、マナはそっと彼女に感謝した。
「あら~……ほんと、マナくんったら初心ね~?」
「…………ッ!!」
不意にそんな言葉が聞こえてきたので、マナはビクッと反応しびっくりした。
すぐに声の主――――リリア先生を見ると、彼女は微笑ましそうにマナとクロナを眺めていた。
「……ん?それってどういう意味よ…?」
リリア先生の発言の意味がわからず、クロナが不思議そうな顔をして問い返した。
「いや、あの、リリア先生…?それはちょっと勘弁して欲しいのですが……」
「さぁて~、どうしようかしら~」
「ちょっと、さっきからあんた達だけで話を進めないでくれる?」
(マズイ……多分、クロナの胸を見てしまったのがバレてる…!ど、どうすれば……!?)
マナは必死に思考を巡らせるが、いい案なんて出てくる訳がない。クロナの揺れる胸を見て顔を赤くしていたなんて本人にバレたら嫌われる可能性が高い。
「ま、待ってくれ!それだけは……!俺に出来ることなら何でもするから言わないでくれ!」
妙案が思い浮かばなかったので、ついにマナは考えなしに叫んだ。そしてハッ…!と今自分自身が何を言ったのか理解し、後悔した。
「あら~?今、何でもって――――――」
「ちょっとさっきからあんた達だけで話を進めないでよッ!!」
バンッッ!!とクロナが思いっきり机を両手で叩き、鬱憤を晴らすように盛大に叫んだ。そのおかげでリリア先生の言葉が途中で途切れ、マナは心の底から安堵した。
――――――◇◇◇◇――――――
結局、騒ぎの収集はついたがクロナの機嫌は直ることはなかった。現に今もムスッとした顔で椅子に座っている。リリア先生がクロナに何かしら謝ってはいたが、口調のせいかあまり申し訳なさそうに見えない。
「もう~、さっきのはちょっとマナくんをからかってただけだって~」
「出来れば二度とやらないで欲しいんだけど?」
「…………ふんっ」
「ん~?………今、クロナちゃんが開発してる物に必要な資材をちょっと増やすのでどう~?」
「分かったわ」
「おいっ!?」
無駄のない一連のやり取りを見てマナは、この学院はどうなってんだと呆れた。しかし、そんな事は今更なのでマナは気にしないことにした。
「それじゃあ、クロナちゃんの機嫌も直ったことだし~、書類作業とかもまだ残ってるから失礼するわ~」
リリア先生は、そういうとマナとクロナの返事を待たずに――――――
「後はお二人でごゆっくり~♪」
「「やかましいっ!!」」
――――――行こうとしたところでリリア先生がこちらの方へと振り向いて茶化した。思わずマナとクロナが声をハモらせてツッコミを入れたのは、必然と言えるのかもしれない。
リリア先生が部室から出ていって約三十分程。取り敢えず部屋の掃除をしていたマナはふと、気になることが出来たので、反対側で書類整理をしているクロナへと問い掛けた。
「そういえば、リリア先生が言ってたクロナの開発してる物ってなんだ?」
「ん?ああ、これのことね。《魔導銃》っていうんだけど今それを開発中なの。空気中、または使用者の体内にある魔力を使って弾丸を作り、引き金と共に物凄い速度で魔力弾を撃ち出す武器ね」
「つまり拳銃みたいなもんか?」
「けんじゅう?」
クロナが不思議そうに小首を傾げた。その様子からすると拳銃を知らないらしい。つまり、クロナが全て自分で考えて作ったということになる。天才は伊達ではないようだ。
「まぁでも、今はそれを作るための素材が足りなくて開発は一時的に停止させているってのが今の現状なんだけれどね…」
「……ちなみにその素材って何を使ってるんだ?」
「―――――――――――オリハルコンよ」
「――――――――――――なんだって?」
それを聞いたマナは、我が耳を疑った。
続きが読みたい方はブックマークお願いします




